強い4歳馬の戦いと騎手の駆け引きが堪能できました ~天皇賞(春)

今年の重賞成績を見ていると、4歳馬の強さが目立ちます。4/27までの古馬の芝重賞成績を見てみると、4歳馬が10勝でトップ。3着内率を見ても、年代別では4歳が唯一3割を超えていて、この世代の強さが目立つのです。
そして古馬G1の最高峰のひとつ天皇賞(春)でも、その傾向は維持されました。5頭出走した4歳馬のうち4頭が上位4着までを独占。5頭の人気は1,2,4,6,7番人気でしたが、1,6,4,2番人気の順番で入りました。

その5頭のうち4頭は昨年の菊花賞に出走していました。
優勝したアーバンシックは前走日経賞でやや重馬場を走って3着に敗れ、その疲れと掛かり気味に走ったことを考慮して間隔をあけたいということで天皇賞(春)は回避して宝塚記念に向かい、その代わりに主役を担って1番人気に推されたのは、2着馬のヘデントールでした。菊花賞は後方から長く脚を使ったものの2 1/2馬身及ばず。その後ダイヤモンドSを4馬身差で楽勝して臨んできました。
しかしダイヤモンドSからのローテーションで勝った馬は過去10年でおらず、2,3着が各1頭のみ。それもあって3.1倍という評価でした。とはいえ5・2・0・1の安定感はすばらしく、またG1に数多くの有力馬を送り込む木村厩舎所属でレーン騎手騎乗というのは、人気に貢献したと思います。

2番人気は菊花賞には出走しなかったものの、阪神大賞典を6馬身差で圧勝したサンライズアース(4.5倍)。
2年前の覇者で6歳のジャスティンパレス(4.9倍)をはさんで、4番人気は菊花賞4着のショウナンラプンタ(9.7倍)。阪神大賞典は4着でしたが、平成の盾男と呼ばれた武豊騎手鞍上では無視できないということでしょう。
昨年2着の6歳馬ブローザホーンをはさんで、6番人気は菊花賞5着のビザンチンドリーム(11.6倍)。前走はサウジの芝3000mG2で60kgを背負って勝っての参戦でした。
そして7番人気は菊花賞8着ながら前走3勝Cの阪神芝3000mを、3週間後の阪神大賞典より0.4速いタイムで勝ったハヤテノフクノスケ。青森産馬ということでも話題になりました。

レースは5頭ほどの先行争いが激しくなるなか、4歳勢で最も前につけたのは阪神大賞典を2番手から押し切ったサンライズアースで3,4番手を追走。その後ろ中団にヘデントールとハヤテノフクノスケがつけ、後方の前目にショウナンラプンタ、最後方にビザンチンドリームという位置取りになりました。1000mは1.00.7と平均ペースで、最初の直線は馬順の入れ替わりもなく淡々と進みます。
レースが動いたのは向こう正面でした。マイネルエンペラーが早めにハナに立つとサンライズアースもそれを追ってペースが上がります。すると後方にいたジャスティンパレスが外を通って上がって行き、最後方のビザンチンドリームも進出開始。中団のヘデントール、ショウナンラプンタもジャスティンパレスを追います。
直線に入ると先頭のマイネルエンペラーに離れた外からサンライズアースが並びかけ、さらに外からショウナンラプンタも迫ってきますが、その内のジャスティンパレスは手応えが怪しくなって後退。そこに外からヘデントール、さらにビザンチンドリームが迫ってきます。
残り200mで前の3頭を交わしてヘデントールが先頭。そこに外からビザンチンドリームが並びかけてきて、2頭のマッチレースに。ビザンチンドリームがじりじり迫るも、ヘデントールは最後まで抜かせずアタマ差で1着。2着がビザンチンドリームで、粘ったショウナンラプンタが3馬身差3着。さらに2馬身差4着がサンライズアースとなりました。ハヤテノフクノスケは11着に終わっています。

5頭の4歳馬の内、個人的に注目していたのはヘデントールとビザンチンドリームの2頭でした。
ヘデントールはその安定した成績と菊花賞のレースぶり、またダイヤモンドSの大人びた走りから、かなりの力の持ち主ではと感じていたのです。さらに調教も伸びやかな走りで、調子の良さを感じさせました。
そして調教で1番良く見せたのがビザンチンドリームだったのです。特に1週前追い切りの走りはすばらしく、それまでは無印だったのですが、重い印に変えざるを得ないと思わせました。それは最終追い切りでも変わらず、さらに菊花賞のVTRを改めて見ると5着ながら最後の伸びも鋭く、距離伸びてさらに良さが出ると思われたのです。
結果としてこの2頭の争いとなり、自分の調教を見る目もまんざらではないと思わされました。

そして今回のレースで興味深かったのは、それぞれの有力馬の騎手の位置取りおよび仕掛けどころでした。よく長距離戦は騎手の腕の違いが出るといわれますが、それが楽しめたと思います。

まず勝ったヘデンドール。レーン騎手は好スタートを切りながら中団前目の内につけます。そのままじっと動きません。向こう正面で外からジャスティンパレスが上がっていっても動じず位置をキープ。しかし3コーナーで追い始めると坂の下りを利用して一気に外から進出。あえて早めに動いたショウナンラプンタから1テンポ遅らせて追い出すと、一気に外から前の各馬を交わして先頭に立ちました。
最後は外から来たビザンチンドリームに迫られますが、抜かさせなかったのは仕掛けを遅らせて貯めを作ったレーン騎手の作戦勝ちともいえるでしょう。ただし他馬が動けば誰でも焦りを感じるでしょうし、人気を背負っていればなおさらなわけで、そのあたりの肝の据わった騎乗に魅了されました。

そして2着のビザンチンドリーム。シュタルケ騎手は菊花賞で後方から進めて脚を余す形になったのですが、その際に3200mでも問題ないスタミナと長距離でも切れる末脚は体感したでしょう。さらにサウジの前走でのマーフィー騎手の乗り方も参考に、後方でためる形に出ました。
しかし天皇賞(春)は4コーナーでは半分より前にいる必要があり、3コーナーからポジションを取りに行きます。ただし無理なく上がっていって、最後の直線での爆発的な脚につなげました。交わせなかったのは相手が悪かったというしかなく、さすがドイツのトップジョッキーという腕を見せてくれました。

3着のショウナンラプンタは切れる脚が使えず、常にいいところまでは来るものの勝ちきれないというのが課題の馬です。そこで武豊騎手は当面の敵と目されるヘデントールをマークする位置につけます。しかも外から蓋をするような位置取りで、自由にさせないような意図を感じました。そして作戦としては、直線で早めに抜け出して後続を抑えるというものだったのでしょう。
いったんは先頭に立つものの、意図したほど後続を突き放せず2頭には交わされてしまいます。しかし離されたもののなんとか3着は守って、人気よりは上の着順に持ってきました。

4着のサンライズアースは、2番手から後続を突き放した阪神大賞典のレースが理想だったと思います。そのため池添騎手も押して先団につけますが、予想以上に出入りの激しい競馬となり、同じく日経賞で先行して粘り切ったマイネルエンペラーと同じ戦法となってしまいます。
そのため直線ではなんとかマイネルエンペラーは交わすものの、そこで脚色がいっぱいになってしまいました。個人的には最終追い切りがあまり良く見えず狙いを下げてしまったのですが、前走が権利を取るために目いっぱいの競馬になってしまったのかもしれません。

また鮫島駿騎手の初G1制覇がなるかということも話題になった2年前の勝ち馬ジャスティンパレスにも注目していました。追い切りの動きがよく、またパドックでも調子が良さそうに見えたので、一発あるかもとは思っていたのです。
スタートが今一つで後方から進めたのですが、向こう正面で意表を突いてまくりに出て、2周目3コーナーでは3番手まで上がります。しかし4コーナー手前で早くも手が動くと、4コーナーではムチまで入ります。ところが伸びがなく6着に終わりました。
近走は好走するものの掲示板がやっとという成績から、スタミナには自信があったので早めに動くという選択をしたのでしょう。その戦法は良いと思うのですが、残念ながら年齢的なものか、かつての力は落ちてきているように感じました。

こうやって見ると、騎手がそれぞれの馬の特徴にあわせて、どうやったら勝てるかを考えて作戦を取っていることがわかります。特に長距離戦ではその意図が見えやすく、その分いろいろな楽しみ方ができるのが魅力ではないでしょうか。
近年長距離戦の人気が落ちてきて、フルゲートになることも少なくなってきましたが、これからも伝統の一戦として末永く続けていってほしいと思います。

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