欧州年度代表馬カランダガンがアーモンドアイのレコードを破ってV ~ジャパンC

今年のジャパンCは、当初3頭ほどの外国馬の参戦が予定されていましたが、結局1頭となってしまいました。ところがその1頭が、近年まれにみるビッグネームだったのです。

唯一参戦したのがフランス調教馬のカランダガン。父グレンイーグルス、母父シンダーという血統で、父はスピードタイプのマイラー。気性難で2歳時に去勢された騙馬でしたが、3歳の昨年にヨーロッパの一流馬が集まる英インターナショナルS、英チャンピオンSでともに2着と好走。
今年は、ドバイシーマCでダノンデサイルの1 1/4馬身差2着に好走すると、仏サンクルー大賞、英キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、英チャンピオンSと夏から秋にG1を3連勝。同一年にキングジョージとチャンピオンSを勝ったのは、53年ぶり史上2頭目の快挙だったのです。
ところが騙馬で凱旋門賞には出られないこともあり、早くからジャパンC参戦を宣言していました。

調教師は、昨年ゴリアットでジャパンCに参戦経験があるグラファール師。末脚鋭く軽い芝に合うタイプということで、日本に照準を合わせてきたのでしょう。
そして正式に参戦が決まったあとに、カランダガンがカルティエ賞で欧州年度代表馬に選ばれたというニュースが入ってきました。欧州年度代表馬の参戦は2006年3着のウィジャボード以来ということで、どんなレースを見せてくれるのか期待が高まりました。

しかし今年で45回目を迎えるジャパンCで、最後に外国馬が勝ったのは2005年のアルカセット。馬券内に入ったのも前述のウィジャボードが最後と、実に20年近くも外国馬は結果を残せていませんでした。
その理由として、日本馬が強くなったということもありますが、日本の軽く時計の速い芝が、ヨーロッパや北米の馬にはあわないということが大きかったと思います。
特にヨーロッパは芝が深く、多雨で重馬場になりやすいこともあり、時計のかかる力のいる馬場が得意な馬が、G1などではどうしても上位に来やすくなります。日本調教馬が凱旋門賞で苦戦するのは、その裏返しと言えるでしょう。
そのため特に欧米の競馬関係者からは、日本の芝生の馬場は硬すぎるという意見が多く、徐々に参戦する外国馬が減っていったのです。そして2019年にはついに外国馬の参戦が0という事態にまでなりました。

その後はJRAの努力もあったのか少しずつ参戦する実力馬も増え、昨年はディープインパクト産駒の愛・英ダービー馬オーギュストロダンが来日するというトピックスもありました。
しかしどんな実績馬が来ても、日本の芝で好走することは難しく、最近ではヨーロッパの馬は無条件に消しというファンも多かったのではないでしょうか。

個人的にもどうかとは思いましたが、気になったのはドバイシーマCでカランダガンがダノンデサイルの2着に入ったということでした。ドバイの芝は日本ほど時計が速くはないですが、日本馬が好走することが多いように、比較的スピードが出やすい状況だと思われます。そこでダノンデサイルに1 1/4馬身差まで迫り、ドゥレッツァやチェルヴィニア、シンエンペラーに先着したという事実は重いのではと考えたのです。

カランダガンの最終追い切りは東京競馬場の芝コースで行われました。速い時計は出さなかったものの、素軽くリズミカルな走りは調子の良さをうかがわせ、また馬場への適性も感じさせて良い印象でした。
パドックでは特に目立つ動きではなかったものの、適度な気合乗りながら落ち着いて集中して歩いており、トモの踏み込みも力強く見えました。
最終的には6.2倍の4番人気となりましたが、昨年のオーギュストロダン(4番人気 9.8倍)よりも人気になったのは、後から考えるとファンの見る目の確かさかなと思いました。

カランダガン 2025年11月30日 東京競馬場

スタートでアドマイヤテラが落馬しましたが、カランダガンのバルザローナ騎手は落ち着いて中団後方につけます。逃げたセイウンハーデスが1000m57.6とかなり速いペースを刻みますが、2番手は10馬身ほど離れて、それでもやや速めのペース。
カランダガンは外目を折り合って進むと、4コーナーでは後ろから5,6頭目で大外に出します。そこからはすぐ内にいた1番人気のルメール騎手騎乗マスカレードボールと、併せ馬の形で伸びてきます。残り150mを過ぎて、先頭に立っていたクロワデュノールを2頭で捉えて先頭に立つと、そこからは2頭の追い比べに。残り100mでいったんはマスカレードボールが前に出ますが、そこからカランダガンがじわじわと差し返し、アタマ差前に出たところがゴール。
見事に20年ぶりの外国馬によるジャパンC制覇となりました。さらにフランス馬の勝利となると、1987年のルグロリュー以来38年ぶり。さすがにこのレースは見ていませんが。

ジャパンCゴール 2025年11月30日 東京競馬場

そして計時されたタイムに観衆が気づいたとき、競馬場に歓声が上がりました。
それは2018年のジャパンCでアーモンドアイが記録した驚異的なレコード2.20.6を、0.3秒上回る2.20.3。あの時は時計が壊れたのではと思ったのですが、今回も驚かされました。前半速いペースで流れたことが要因とはいえ、それを33.2の脚で上がったカランダガンの末脚がすごかったということでしょう。
おそらく今までこんな速い上りをつかった経験はないと思いますが、それを初めての競馬場で出せるのですから、やはり能力が相当高いということなのだと思います。

カランダガンとバルザローナ騎手 2025年11月30日 東京競馬場
カランダガンと関係者 2025年11月30日 東京競馬場

そしてこの勝利は、ヨーロッパの競馬関係者の日本の馬場への見方を少し変えてくれるかもしれません。ヨーロッパの一流馬でも適性次第で日本の馬場で通用するという証拠になったのですから。
これで来年以降海外からジャパンCへの参戦が増えてくれるといいと思います。

今回残念ながらアタマ差2着に敗れたマスカレードボールですが、こちらも同じレコードタイムで走っており、上りも2位タイとなる33.4。天皇賞(秋)からの連勝はなりませんでしたが、能力の高さを示しました。
おそらく有馬記念は出ないでしょうが、来年は古馬中距離路線を席巻する可能性もあると思います。ドゥラメンテ産駒の最終世代として、タイトルホルダーを超える代表産駒となれるよう、さらなる成長を期待しています。

マスカレードボール 2025年11月30日 東京競馬場

ほかに個人的に印象に残ったのは、4着となったクロワデュノールでした。
凱旋門賞で大敗して帰国してからなかなか調子が上がらず、最終追い切りまで出走を迷っていたという情報もあり心配していました。しかし調教はなかなか良く見えましたし、パドックでもクビを使ってキビキビ歩き、さすがダービー馬というオーラは健在でした。
直線でいったん先頭に立った時は、そのまま押し切るかと思ったのですが、上位2頭にあっさりかわされ、さらにダノンデサイルにも抜かれましたが、4着にとどまったことは評価できると思います。
願わくば次は万全な状態で、さすがクロワデュノールというレースを見せてほしいと思います。

クロワデュノール 2025年11月30日 東京競馬場

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です