2歳時に朝日杯FSを勝ち、3歳時にはNHKマイルCを優勝。古馬になった今年は春に安田記念を勝って、牡馬が出走できる芝マイルのG1完全制覇に大手をかけていたジャンタルマンタルですが、最終的に1.8倍という圧倒的な支持を得てマイルCSに出走しました。
ここまで国内の芝マイル戦は5戦して、59kgを背負った前走富士Sこそ1/2馬身差2着に敗れたものの、それ以外はすべて1着とほぼ完ぺきな実績を残してきたジャンタルマンタル。G1ホースはイギリスのドックランズを含めて6頭(うちマイルG1馬は5頭)出走していましたが、勢いや現在の充実度を考えれば、その評価は当然のものだったでしょう。
とはいえその競走生活が順風満帆だったわけではありません。3歳春はクラシックを目指して共同通信杯2着から皐月賞を目指しましたが、いったん最後の直線で抜け出したもののゴール前で失速して3着。これで陣営としてはマイルに専念する決心がついたのでしょう。
また3歳秋には香港マイルに挑戦するも、不利もあり先行して14頭立て13着と大敗。それもあってか休み明けの今春の安田記念では、自己最高オッズとなる4.3倍の2番人気という評価になりました。個人的にも不安は感じましたが、それでもジャンタルマンタルの力を信じて本命にしたことを覚えています。
そんなジャンタルマンタルですが、勝負服を見てわかるように社台レースホースで募集された、いわゆる一口馬主のクラブの馬です。その募集価格は1口75万円と、200万円以上で募集される馬が何頭もいる中、決して高い評価を得てはいませんでした。
今から考えると不思議ですが、それは父パレスマリスの評価が大きく影響していたようです。
実は今年の9月に馬産地を訪れた際に、日高にあるダーレージャパン スタリオンコンプレックスを訪問し、父パレスマリスに会っています。
ここは見学時間いっぱいを使って、スタッフの方が繋養馬を1頭ずつ紹介するという珍しいシステムをとっているのですが、パレスマリスについても教えていただきました。
パレスマリスはカーリン産駒で、2013年ベルモントSなどG1 2勝を含むダート重賞を6勝しています。しかし種牡馬入りしたものの、アメリカでは芝向きの産駒が多いことから評価が低かったのです。そのためジャンタルマンタルを受胎した母インディアマントゥアナは、比較的安い価格で社台ファームに落札され、持ち込み馬として日本で走ることになりました。
パレスマリスの母パレスルーマーはその後日本で繁殖生活を送り、オルフェーヴルとの間にアイアンバローズ(2023年ステイヤーズS)、ディープインパクトとの間にジャスティンパレス(2023年天皇賞(春))を生んでおり、半弟たちが日本で活躍していたのです。
さらにジャンタルマンタルが朝日杯FS、NHKマイルCを勝ったこともあり、やはりパレスマリスは日本の馬場に合うということで、2024年にアメリカから日本に移り、ダーレージャパン スタリオンコンプレックスで供用されているのです。
小顔で品があり、仕上がりが早くスピードのある産駒が多いということで、日本に合う種牡馬だと思うという評価でした。
ジャンタルマンタルの特徴は、先行力と勝負根性だと思います。それはあまり切れる脚が使えないという面の裏返しでもあります。そのため先行して押し切るというレース運びで、安定した成績を残してきました。
そして今日のマイルCSでも好スタートを切ると、内から来たトウシンマカオ、エルトンバローズを行かせて外の3番手につけます。飛ばして6,7馬身差をつけて逃げたトウシンマカオのペースは、600m34.2と平均ペース。それを離れた3番手で追うジャンタルマンタルは、明らかにスローペースで有利な展開に持ち込みます。
3コーナーからペースが上り、直線に入った時はエルトンバローズと並んでトウシンマカオのすぐ後ろ。そこからじわじわ脚を伸ばして先頭に立つと、残り200mでは1馬身半ほど抜け出します。そこからは後続を離していき、最後はガイアフォースに1 3/4馬身差をつけて1着のゴールに飛び込みました。
安田記念でも2着ガイアフォースに1 1/2馬身差で勝っていますが、今回は着差以上の完勝という印象で、マイルの絶対王者と呼ぶにふさわしいパフォーマンスだったと思います。
これでジャンタルマンタルは、牡馬が走ることができる芝マイルG1を初めてすべて勝った馬になりました。これは2歳から古馬までコンスタントに走り続ける必要があるので、意外と難しい記録だと思います。
またこれでジャンタルマンタルは芝マイルG1 4勝となりましたが、これはグランアレグリアの5勝に続き、ウオッカと並んで2位タイ。牝馬はヴィクトリアMがあるので有利という事情もあり、牡馬としてはかなりすごい記録といえるでしょう。
しかもジャンタルマンタルはまだ4歳と若いので、グランアレグリアの記録を更新する可能性も十分にあります。今後の活躍に期待したいと思います。