期待半分、不安半分で見ていた今年のブリーダーズカップクラシック(BCクラシック)ですが、さすがに最後の直線で抜け出したときは声が出ました。ただ外から追ってきたのが昨年の覇者シエラレオーネ。一歩ずつ迫ってきた時は、オルフェーヴルの2012年の凱旋門賞を思い出しました。
ただフォーエバーヤングはそこからがんばりました。1/2馬身差しのぎきって、見事に快挙を達成したのです。
昨年の1~3着馬がそろって出走した今年のBCクラシック。残念ながら今年のケンタッキーダービーとベルモントSを制して4連勝中のソヴリンティは熱発で回避したものの、ダートの頂点を決めるのにふさわしいメンバーがそろいました。
フォーエバーヤングは昨年のケンタッキーダービーで差し届かず3着に惜敗した後、BCクラシックはいとこにあたるシオラレオーネ(フォーエバーヤングの母フォーエバーダーリングの妹がシオラレオーネの母ヘヴンリーラブ)に3馬身近く離される3着。
昨年末の東京大賞典を圧勝した後は、今年のサウジCで香港のロマンチックウォリアーとの追い比べを制する快挙でようやく海外G1を制覇。しかしその疲れがあったのかドバイワールドカップでは精彩を欠く走りで3着に敗れていました。
その後は十分疲れをとって日本テレビ盃を勝って渡米していたのです。
最終追い切りは坂井騎手も認めるように満足いくもので、パドックも落ち着いており、さらにいつもは嫌がる装鞍もすんなり行えたとのことで、レース前の気配はとてもよく感じられました。
今回は9頭立て(1頭取り消し)でフォーエバーヤング以外の8頭はすべてアメリカ調教馬だったのですが、馬場入場はほかのすべての馬がリードポニーと呼ばれるサポートする馬がついていたのに対して、フォーエバーヤングは日本と同じようにただ1頭で入場。輪乗りでも堂々としていました。
レースは差し脚鋭いシエラレオーネ(2番人気 以下JRAの人気)陣営が用意したラビットのコントラリーシンキング(9番人気)が逃げる中、フォーエバーヤング(1番人気)は積極的にポジションを取りに行って2,3番手の外を追走。坂井騎手の強気の戦法に少し不安を感じますが、おそらく手応えが良かったのでしょう。
向こう正面でコントラリーシンキングの手ごたえが悪くなると、3コーナーでフォーエバーヤングは早くも先頭。外からマインドフレーム(5番人気)やジャーナリズム(4番人気)が迫りますが、4コーナー手前から追い出すと、直線に入って1馬身ほど抜けて先頭。さらにそこから後続を突き放していきます。
最後は外から昨年の2着馬フィアースネス(3番人気)、さらにその外からシエラレオーネが迫ってくるも、しのぎ切って先頭でゴール。
坂井騎手のガッツポーズの後に、抱き合って喜ぶ矢作調教師の姿も映りました。
矢作師はインタビューで話していましたが、今年ダメなら望みがないぐらいの仕上げで臨んだとのことで、これまでの経験と知識をすべて注ぎ込んだ結果だったのでしょう。
すばらしい状態だったのに加えて、フォーエバーヤング自身の精神力の強さも大きかったと思います。アメリカのダート競馬というと、速いペースでいって、最後の追い比べをしのぎ切るレースが多く、馬の精神力が試されるという印象が強いのですが、早め先頭から押し切る横綱相撲でした。
サッカーワールドカップで日本代表が優勝するほどの快挙と矢作師は表現していましたが、残念ながら国内ではまだそこまで一般的には認知されていないと思います。競馬のスポーツ界における地位向上が、今後の課題なのかもしれません。
フォーエバーヤングは来年も現役を続行することが発表されていますが、矢作師いわくいつかは芝のレースも使ってみたいとのこと。来年の目標がどこになるかはわかりませんが、引退レースが初芝の有馬記念となれば、かなり盛り上がるでしょう。
それまで無事に競走生活を送るとともに、また大いなるサプライズを見せてくれることを期待したいと思います。