今年の菊花賞は、皐月賞馬もダービー馬も不在ということで、単勝1桁人気が5頭と混戦となりました。個人的にはそれでも3強という印象だったのですが、オッズ的には2強となりました。
1番人気はエネルジコ。春は青葉賞を快勝したものの体調が整わず、せっかく優先出走権をとったのに日本ダービーは回避。夏に復帰すると、今年ハンデ戦から別定戦になって力のある馬が集まった新潟記念で、古馬相手に1番人気2着(1/2馬身差)と好走。満を持して菊花賞に挑戦してきました。
父ドゥラメンテは今年の3歳が5世代目にして最終世代となるのですが、過去4世代からはタイトルホルダー(2021年)とドゥレッツァ(2023年)と2頭の菊花賞馬を輩出。長距離には定評がある種牡馬ですが、人気のおもな要因はやはり騎手でしょう。
鞍上のルメール騎手は過去に9回菊花賞に騎乗していますが、その成績は4・2・1・2。勝率44%で連対率67%と驚異的な成績を残しているのです。その中には、ラジオNIKKEI賞2着から7番人気で勝ったフィエールマン(2018年)や、3冠馬となったコントレイルを最後まで苦しめたアリストテレス(2020年 2着)など、印象的なレースも数多くありました。
そして今年は前人未到の3連覇(2023年 ドゥレッツァ、2024年 アーバンシックに続く)もかかっていたのです。
2番人気はエリキング。個人的にはこちらが1番人気だろうと思っていたので、ちょっと意外でした。
デビュー3連勝で京都2歳Sをすばらしい末脚で快勝して、一躍クラシックの最有力候補に浮上したものの、年末に骨折が判明。なんとかクラシックに間に合ったものの、皐月賞11着、ダービー5着と敗退。
秋の復帰戦神戸新聞杯では、それまでのうっ憤を晴らすように中団から32.3と極限の脚を使って快勝してきたのです。
ところがこちらの川田騎手は、対照的に菊花賞の成績があまり良くなかったのです。過去15回騎乗して、その成績は1・0・1・13。2010年に7番人気のビッグウィークで勝っているものの、2回の1番人気では3着,13着、2回の2番人気では9着,16着、1回の3番人気では10着と、人気馬でもほぼ結果を残せていません。
またキズナ産駒も過去の菊花賞では4着までにとどまっており、このあたりも2番人気になった大きな理由でしょう。
3番人気は日本ダービー3着と今回のメンバーでは実績No.1のショウヘイ。神戸新聞杯ではいったん抜け出したものの、エリキングに差されてクビ差2着。しかし6戦して着外はきさらぎ賞4着の1回のみと、安定感は抜群です。
ただしサートゥルナーリア産駒は、まだ1世代目ということもありますが、芝2200m以上の重賞で3着以内に入ったことがあるのはショウヘイただ1頭と、距離に不安があります。
鞍上は躍進著しい若手の岩田望騎手ですが、菊花賞は過去3回騎乗して、いずれも人気薄とは言えすべて8着以下。そのあたりも離れた3番人気というところに現れたのかもしれません。
レースは、逃げると思われた武豊騎手鞍上の4番人気マイユニバースが最後方から進め、ジーティーアダマンが作るペースは1.00.8と、やや重馬場を考えると近年では平均ペース。しかしこれまで中距離のペースに慣れている馬にとっては遅く、掛かる馬が目立ちます。特に前目につけたショウヘイは折り合わず、鞍上が懸命に抑えます。それは向こう正面まで続きました。
対するエネルジコは後方外でうまく折り合い、その後ろでマークするエリキングも行きたがるそぶりを見せません。
向こう正面でマイユニバースが早めに押し上げていくと、エネルジコも少しずつ前に行き、つれてエリキングも動いていきます。
3コーナーから外を通って押し上げたエネルジコは、4コーナーでは5,6番手の外。エリキングはやや反応鈍く置かれてしまいます。直線で末脚を繰り出したエネルジコは、残り250mぐらいで先頭に立つとじりじりと後続を突き放していきます。最後は外からエリキングが追いこんできたものの、2馬身差をつける快勝。
これでルメール騎手は菊花賞3連覇を達成。菊花賞5勝は武豊騎手と並ぶ歴代1位ですが、勝率50%ははるかに凌駕する記録です。これはおそらく今後も破られないでしょう。
レースを見ていて、やや重馬場を考えた時に、エネルジコの位置取りは後ろすぎるのではと感じたのですが、3コーナーから一気に上がっていくと、直線では横綱相撲の様相で、まさに力でねじ伏せる感じの勝利でした。
これはルメール騎手が菊花賞の勝ち方を知っているといっても過言ではないでしょう。そしてそれにこたえられる騎乗馬の特徴と力量を、しっかり把握しているからこそできる芸当ともいえるのです。
来年以降もこの記録が継続されるのか、1年後の菊花賞が楽しみです。