桜花賞馬とオークス馬の対決 ~秋華賞

秋華賞の前に、秋華賞(前身の1995年までのエリザベス女王杯等含む)における桜花賞馬とオークス馬の対決は、14勝7敗で桜花賞馬が大きく勝ち越している(先着している)という記事を目にして、ちょっと不思議な気がしていました。2000m(1995年までは2400m)という秋華賞の距離を考えると、距離の長いオークス馬の方が有利だと単純に思ったからです。

しかし牡馬3冠の場合も、ダービー・菊花賞の2冠馬よりも、皐月賞・菊花賞の2冠馬の方がはるかに多いという事実があり、あり得る話だとは思っていました。

ところが今年について考えてみると、桜花賞馬エンブロイダリーよりも、オークス馬カムニャックの方が、かなり有利だろうという結論にならざるを得なかったのです。
その大きな根拠の1つは、やはりオークスのレースぶりでしょう。フローラSを勝って臨んだカムニャックは後方から進めると、直線は外を2番の上りで伸びてアタマ差1着。
父ブラックタイド、母父サクラバクシンオーというキタサンブラックと全く同じ血統背景も、距離適性を後押ししました。
さらにカムニャックは前哨戦の芝1800mのローズSでも、4コーナーで不利を受けながらも快勝。近年ローズSから秋華賞で好走する馬は少なくなっているものの、今年から中3週となったことで、傾向が変わる期待もありました。

対するエンブロイダリーは、オークスでは終始掛かり気味に好位を進むと、直線は伸び一息で6馬身差9着。2000mという距離に対しても、不安を感じさせるレース内容でした。
そして秋華賞へはオークスから直行するという近年のトレンドのローテーションをとったのですが、オークスからの休み明けで秋華賞で3着以内に入った馬は、すべてオークスで3着以内と好走していたという事実もあったのです。
加えてエンブロイダリーの父アドマイヤマーズ産駒の牝馬は、2000m以上のレースで3着以内に来たことがないというデータもありました。

さらに最初の話と矛盾するのですが、1996年以降の秋華賞を勝った牝馬2冠馬を見てみると、桜花賞と秋華賞の2冠馬がファレノプシス(1998年)、テイエムオーシャン(2001年)、ダイワスカーレット(2007年)の3頭に対して、オークスと秋華賞の2冠馬がメジロドーベル(1997年)、カワカミプリンセス(2006年)、メイショウマンボ(2013年)、ミッキークイーン(2015年)、チェルヴィニア(2024年)の5頭と圧倒。
これもカムニャック有利説を補強するデータとなりました。

オッズも2強とはいえ、カムニャック2.1倍に対してエンブロイダリー5.5倍と、カムニャック有利と考えたファンが多かったことを示しています。
また2頭とも調教の様子やパドックの具合はとても良く見えたものの、カムニャックのパドックでの迫力ある歩きは、個人的にはとても魅力的に映りました。

レースでは、カムニャックがスタート直前に立ちあがってヒヤッとしたものの、無事に五分のスタートを切ります。カムニャックがやや掛かり気味に4,5番手の外につけたのに対して、エンブロイダリーはしっかり折り合ってカムニャックの直後。さらに武豊騎手騎乗の逃げるエリカエクスプレスのペースが遅い(1000m 59.4秒)と見るや、エンブロイダリーのルメール騎手は向こう正面で積極的に動いて、2番手まで押し上げます。
カムニャックの川田騎手も3コーナーから押していって、4コーナー手前で3番手まで上がるものの、そこから手ごたえが悪くなり、直線に入るとずるずると下がっていき優勝争いからは早々に脱落。結局16着と大敗に終わりました。
対するエンブロイダリーは、直線でエリカエクスプレスにいったん突き放されるものの、じりじりと差を詰めていくと、ゴール直前で先頭。1/2馬身差で1着となり、前身のビクトリアカップ、エリザベス女王杯時代も含めると、史上8頭目となる桜花賞・秋華賞2冠馬に輝きました(ちなみにオークス・秋華賞の2冠馬は6頭)。
当初のデータ通り、桜花賞馬がオークス馬に先着する結果となったのです。

エンブロイダリーの勝因は、やはり春とは比べものにならないほどの精神的な成長でしょう。スローな流れでもしっかり折り合い、鞍上の指示があれば素直に従ってポジションを上げ、さらに最後はしっかりとした末脚を繰り出して逃げ馬を差し切りました。
新進気鋭の森一誠調教師の馬づくりもすばらしいですし、ルメール騎手のペース判断もさすがと思わせました。それがかみ合った結果が2冠獲得となったのでしょう。

対するカムニャックの敗因はわかりませんが、スタートで立ち上がったり、レースでも行きたがるなど、精神的にかなりテンションが高くなっていたのが一因かもしれません。それにしても4コーナーで早々に手ごたえが悪くなっており、前走までのレース内容からは考えられないような失速ぶりでした。馬体に異常がなければいいのですが。
これまでの戦績から、前哨戦を使った方が良いという陣営の判断だったと思いますが、1回使ったことでよりテンションが上がったという面もあったかもしれません。
つくづく馬は繊細な動物だと思いますし、それを見越した予想が必要なのだとは思いますが、やはり競馬は難しいと思わされた一戦でした。

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