馬産地を訪ねて’25 Yogiboヴェルサイユリゾートファーム

引退馬の繋養施設として、観光牧場をメインに宿泊施設やグッズ販売、企業とのネーミングライツ契約やサポート会員制度など、ユニークな取り組みで知られるYogiboヴェルサイユリゾートファームですが、6年前に訪れた時は功労馬4頭(タイキシャトル、メイショウドトウ、ローズキングダム、アドマイヤジャパン)とブロードアピール他数頭の牝馬を繋養するだけで、宿泊施設などは建設中でした。
しかし今回行ってみると、宿泊施設やカフェ、グッズの販売所があり、繋養する馬の数も飛躍的に増えていました。さらに1.8kmほど離れた場所に分場もできていて、その中には新たな施設も建設中と、大いに発展していたのです。

その大きな一因は、ビーズクッションメーカーのYogiboとネーミングライツ契約を行ったことがあるでしょう。数年前にアドマイヤジャパンが気持ちよさそうにYogiboのクッションに寝転がるCMが放映され、大いに話題になりました。
またサポート会員になると宿泊施設に無料や割引価格で宿泊できるなどの特典があり、応援する人も確実に増えています。
さらに破壊神としてSNSで有名になったタニノギムレットや、障害で大活躍して有馬記念にも挑戦したオジュウチョウサンの存在も大きく、ひっきりなしに見学者が訪れる人気施設となったのです。6年前には電話で見学予約を行い、行ったときには我々しか見学者がいなかったのとは、大いに状況が変わっていました。
引退馬自らが収益をあげることで、繋養施設を維持していくという新たなビジネスモデルの先駆者という意味で、大いに注目すべきところだと思いますし、少しでも応援できればと思っています。

木曜日が休場日となっており、9:00~15:00が見学時間となっています。事前の予約は不要ですが、場内のグッズショップで受付をして、注意事項を聞いてから見学する必要があります。

多くの馬の中で人気なのは、やはりオジュウチョウサンでした。見学受付も兼ねたグッズショップの隣というベストポジションで放牧されています。現役の種牡馬として数は少ないながらも種付けは行っており、昨年も数頭の産駒が誕生しているのです。
カフェの建物を挟んだ放牧地には多くの牝馬がいるのですが、その鳴き声に反応して走り回ったり鳴いたりしており、元気いっぱいな様子でした。
障害では無類の強さを誇りましたが、平地では3勝Cまで。兄弟が重賞で好走するなど血統は悪くないものの、種牡馬としてはちょっと厳しいかもしれません。幸い知名度は高く人気もあるので、グッズ等の売り上げで牧場に貢献することで、自らの食い扶持を稼いでいけたらと思いますし、それは十分可能でしょう。

オジュウチョウサン

2002年のダービー馬で、ウオッカの父としても知られるタニノギムレット。6年前にはレックススタッドで会っていますが、2020年に種牡馬を引退してこちらに移ってきました。
SNSでは破壊神として知られ、壊した牧柵を利用したグッズ販売も好調だといいます。しかし行ったときはおとなしく草を食んでいて、あまりどう猛な感じはありませんでした。ただ左目が白目がちなこともあり、ちょっと勝気な印象を受けます。ダービーを勝つには、それぐらいの気性の激しさが必要なのでしょう。

タニノギムレット

大きな放牧地には騙馬と牝馬がまとめて放牧されていました。性別が異なる馬たちが同じ放牧地にいるのは珍しいですが、騙馬であれば特に問題ないのでしょう。
10頭ほどいて残念ながら遠目からではどの馬かはわからないのですが、ここにいるのは気性が穏やかな馬らしいです。気性の激しい馬は1頭でいるようで、集団行動を行うには協調性が必要というのは、馬も人間も変わりませんね。
中にはビービーガルダンやジェネラーレウーノなどの重賞勝ち馬もいるようで、思い思いに気の合う仲間とのびのび暮らしているのは、ほほえましく感じました。

またヒルノダムール(2011年 天皇賞(春))、エポカドーロ(2018年 皐月賞)、ナランフレグ(2022年 高松宮記念)などのG1馬がいて、ゆったりとした時間の中で幸せそうに暮らしているのが印象的でした。

ヒルノダムール
エポカドーロ
ナランフレグ

ほかにも未勝利勝ちの後、3歳時にダービー以外は青葉賞、神戸新聞杯、菊花賞を含んですべて2着を続けた個性派のエタリオウ、リステッドは強いのに重賞は勝てなかったドーブネ、種牡馬を引退したノヴェリストやダンカークなど多彩なメンバーもいました。

分場(ビラ・ウトゥル)は厩舎の前にインドア施設が建設中ということで、やや雑然とした雰囲気でした。
こちらも大きな放牧地では騙馬と牝馬が一緒に放牧されており、その中に6年前にも会ったアドマイヤジャパンもいました。YogiboのCMで一躍有名になり、今でも人気は高いらしいです。よく似た毛色のゴールドファイブ(大井で7戦して未勝利)と牝馬のスカーレットレディ(サンデーサイレンス産駒の良血だが中央で1勝)と仲が良いらしく、3頭で時にじゃれあいながら過ごしていました。

アドマイヤジャパン(左) ゴールドファイブ(右)

厩舎を挟んだ放牧地では1頭ずつ放牧されていましたが、グランプリボス(2011年 NHKマイルC)やケイティブレイブ(2018年 JBCクラシック他)といったG1馬もいて、なかなか多彩なメンバーでした。
グランプリボスといえば、2014年の安田記念でいったん抜け出して勝ったと思ったところを、ゴール前でジャスタウェイに差されてハナ差2着。鞍上の三浦騎手が最もG1勝ちに近づいたレースでもありました。それから11年、今年のスプリンターズSでようやくG1初勝利をあげた三浦騎手を、グランプリボスも祝福しているのではないでしょうか。

グランプリボス

9/30にはトランセンドとラニが新たにアロースタッドから仲間入りしたとのことで、今後もそんな馬たちが増えていくでしょうし、設備も充実して、引退馬の繋養施設としてもますます発展していくことを期待したいと思います。
それによって1頭でも多くの引退馬が、幸せな生活を送れることを祈っています。

Yogiboヴェルサイユリゾートファームで会えた馬たち
オジュウチョウサン、ニッポンテイオー、タニノギムレット、ヒルノダムール、エタリオウ、エンパイアペガサス、ドーブネ、ノヴェリスト、ナランフレグ、エポカドーロ、ダンカーク、グローリアス、ダンスディレクター、ミスキララ、ゴールドファイブ、アドマイヤジャパン、スカーレットレディ、ケイティブレイブ、グランプリボス、トウケイヘイロー、キタサンミカヅキ、オセアグレイト、サウンドスカイ、サイモンラムセス、フサイチセブン

上記の情報は、2025年9月27日時点のものです。
見学日程や時間、条件や馬の顔ぶれは変更になることがあるので、訪問する際は事前に必ず「競走馬のふるさと案内所」のホームページ( https://uma-furusato.com/ )を確認してください。またそこにある「牧場見学ガイド」を参考に、ルールを守って見学していただけるようお願いします。

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