説得力のないジンクスは破られる ~ヴィクトリアM

昨年の大荒れの記憶、さらに先週のNHKマイルCの意外な結果を受けて、今年もヴィクトリアMは荒れることを前提に予想した人も多かったでしょう。
そもそもまぎれの多い牝馬戦で、ローテーションもばらばら。ここに向かう前哨戦としては、芝1400mの愛知杯から芝1600mの阪神牝S、さらに芝1800mの中山牝S、福島牝Sとバリエーションに富んでいるうえに、サウジや牡馬混合の大阪杯、金鯱賞から来る馬もいて、力関係を計るのが至難の業なのです。

こういう時はどうしても過去の傾向を見たくなるのですが、それもあって毎年のようにヴィクトリアMではジンクスというか法則のようなものが気になるのです。
2年前にまとめたのが下記の3つでした。
(1)前走1着馬は勝てない
(2)2番人気は連対できず3番人気は2着まで
(3)前走2桁着順からも連対あり

特に上の2つはかなり強力でした。
まず(1)ですが、過去10年の連対馬20頭のうち、前走1着だったのは2着に入った3頭のみ。1着馬10頭はもちろん、2着馬も7頭は前走で2着以下に負けていたのです。ちなみに3着馬も前走1着は昨年3着に入ったマスクトディーヴァ1頭のみと、かなり徹底していました。
次に(2)ですが、2番人気10頭の成績は0・0・1・9と連対はなく、わずかに3着1回。3番人気も近年2着には2頭来ましたが、どちらもまったく人気には応えられていない状況。
こうなるとこれに乗りたくなるのが人情でしょう。

しかしこれらには残念ながら納得できるような説明はできません。(1)については、前走がんばりすぎた反動と言うこともできますが、説得力はありませんし、(2)にいたっては人気を決める要素は年によっても馬によっても違うので、共通点はなく、単なる偶然としか思えません。

このような説得力のないジンクスはいずれ終わるだろうと思いながらも、過去10年続いてきたのだから、終わってみれば今年も継続されたねということになるのではとも考えてしまいます。
そして結果として(1)はあっけなく終わり、(2)はなぜか継続するということになりました。ちなみに(3)は個人的にちょっと期待したのですが、今年は該当する前走大阪杯2桁着順の2頭はともに着外に沈み、こちらも継続とはなりませんでした。

(1)についてですが、今までの反動のように、今年は1~3着馬がすべて前走1着と、完膚なきまでに叩き潰されたという感じです。
ところが(2)については2番人気ボンドガールが、後方追走から直線は伸びず、16着と大敗してしまい、3番人気ステレンボッシュも中団のまま見せ場なく8着。どちらも調教もパドックの様子も良く見えたので、今年はこちらが終わるのではと思っていたのですが・・・。

しかし1番人気でクビ差とはいえ勝ちきったアスコリピチェーノ、そして鞍上のルメール騎手は見事でした。
スタートは出たものの二の脚がつかず後方に下がってしまいます。いつもは真ん中よりは前につけるので、大敗した2走前同様の位置取りは不安を感じさせました。
逃げたのは大外の人気薄アリスヴェリテで、池添騎手は向こう正面で後続を離していきます。600mは33.9とやや速めのペース。それをアスコリピチェーノは後方2番手で追走します。
後続を5,6馬身離したまま直線に入ったアリスヴェリテは、馬場中央に持ち出し脚色は衰えません。後方2番手から大外に出したアスコリピチェーノは、前をクイーンズウォークにふさがれてなかなか外に出せず、その間にもアリスヴェリテは1人旅で、逆に先行していた馬たちの脚色が衰え、後続馬群との差は変わらない状況。
残り200mでもアリスヴェリテは4馬身ほど離して先頭で、これは今年も大荒れかと思ったのですが、残り100m手前でアリスヴェリテの脚色が一気に悪くなり、そこにアルジーヌ、さらに外からクイーンズウォーク、アスコリピチェーノがようやく伸びてきます。
ゴール直前でアルジーヌが先頭に立つもすぐにクイーンズウォークが先頭。さらに内からシランケドがすごい脚で伸びてくるも、大外からまとめてアスコリピチェーノが差し切っての戴冠となりました。

外から前を追うアスコリピチェーノ 2025年5月18日 東京競馬場

アスコリピチェーノは調教が素晴らしく、パドックでも伸びやかな歩様できびきび歩き、とても良く見せていたので上位には来るだろうと思ったのですが、まさか追い込みで勝つとは思いませんでした。
ただし先行馬は、逃げたアリスヴェリテが5着に粘ったものの、すべて6着以下に敗退。上位3頭はすべて4コーナーでは10番手以下という結果を見ると、後方から進めたルメール騎手の作戦がはまったとも言えるでしょう。
意図したものかはわかりませんが、一流騎手は展開も味方につけるのだなと、あらためて感心させられます。

パドックのアスコリピチェーノ 2025年5月18日 東京競馬場
アスコリピチェーノとルメール騎手 2025年5月18日 東京競馬場

ここ数年でいろいろなジンクスを発見して、ほとんどは破られてきたのですが、果たして2,3番人気は来ないというものは、いつまで続くでしょうか。来年も覚えておいて、できれば予想に生かせればと思います。

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