イクイノックスを思い起こさせる敗戦 ~皐月賞

今年の皐月賞は、昨年のホープフルSを3戦3勝で制して、それ以来のレースとなったクロワデュノールが、1.5倍の圧倒的な1番人気に支持されました。その要因はやはり年明けの主な重賞やトライアルを制した馬たちが、ほぼクロワデュノールが負かした馬で占められたということがあるでしょう。

そんな圧倒的な人気となったクロワデュノールですが、力があることは間違いないため、付け入るスキがあるとすれば状態面でした。
2週前追い切りでは遅れて心配されたのですが、1週前追い切りではしっかりと走って懸念は吹き飛ばされたように思えました。しかし休み明けにしては馬体がさみしく映ることが懸念されていたのです。実際に最終追い切りはかなり抑え気味に見えましたし、その後発表された馬体重は494kgとホープフルSより2kg減。陣営も馬体の維持にかなり気を使った調整をしてきたようでした。
当日の馬体重は+4kgの500kgで、パドックでもゆったりと余裕を感じさせる歩様で良く見せていて、これなら大丈夫だろうというつくりには見えました。

好スタートを切ったクロワデュノールを、北村友騎手は好位4番手の外につけます。折り合いにも問題なく、ゆったりとした走りで向こう正面へ。1000mは59.3と平均ペースですが、前2走と同様に最後方からファウストラーゼンが一気にまくっていって先頭へ。つれて2頭ほど上がっていきますが、クロワデュノールは落ち着いてポジションをキープ。
3コーナー手前から促すと無理なく上がって行き、4コーナーは先頭のファウストラーゼンから1馬身差の2番手で回って直線へ。残り200mで内のファウストラーゼン、ジュタを交わして先頭に立ちます。そこからいつものように伸びるかと思ったのですが、もたついている間に外から伸びてきたミュージアムマイルに一気に交わされます。最後まで懸命に脚を伸ばすものの、1 1/2馬身差の2着。外からは3着マスカレードボールにクビ差まで詰め寄られる結果に終わりました。

この結果を見て思い出したのが、2022年の皐月賞で同じように2着に敗れたイクイノックスでした。
クロワデュノールと同じキタサンブラック産駒のイクイノックスは、デビューから連勝で東スポ杯を勝ちますが、その後はいっさいレースを使わず、5か月の休み明けで皐月賞に出走してきました。2歳時は世代1番の評価をされていたイクイノックスですが、その後ドウデュースやダノンベルーガが強いレースを見せたこともあり、当日は3番人気となります。
それでも中団から少しずつポジションを上げて行き、4コーナーで馬なりで先団に取り付くと、残り200mで先頭。いったんは1馬身ほど抜け出すものの、ゴール直前で外から一気に伸びたジオグリフにかわされて1馬身差の2着。最後に外から追いこんできた3着ドウデュースに1 1/4馬身差まで迫られたのです。

2戦2勝で臨んだイクイノックスに対して、ホープフルSも勝って3戦3勝だったクロワデュノールですが、どちらも東スポ杯を勝って無敗というところは共通しており、またキタサンブラック産駒で、長期休み明けというところも同じです。そしてレースぶりも結果も、皐月賞で初の敗戦を喫するというところまで、似たような形となりました。
戦前はクロワデュノールに対して、イクイノックス級という評価をする声も聞きましたが、結果を見ると案外間違っていないかもしれません。ただそうなると、日本ダービーも2着に敗れることになってしまいますが。そしてその逆転候補はマスカレードボールということになります。アイビーSと共同通信杯を勝って東京は得意なので、十分にあり得るとは思いますが。

しかし皐月賞の結果を分析してみると、決してペースが速かったわけではないのに、先行して上位に残ったのはクロワデュノールだけ。上位7頭のうち、4コーナー10番手以内は2着クロワデュノール(2番手)、5着サトノシャイニング(7番手)の2頭で、あとの5頭はすべて10番手以降からの追い込みだったのです。こうしてみると、一番強い競馬をしたのはクロワデュノールだと言えるかもしれません。

例年であれば日本ダービーでは、皐月賞で1番速い上りで上位に来た馬から狙うのが定石ですが、今年はもしかしたら傾向が少し違うかもしれません。
過去10年の皐月賞で4コーナー10番手以降から1~3着内に来たのは2016年と2023年の2回しかありません。2016年は1着ディーマジェスティと2着マカヒキが4コーナー10番手以降からきて、1番の上りだったマカヒキが定石通り日本ダービーを勝ちました。しかし2023年は後方17番手から1番の上りで追い込んだソールオリエンスが1着で、唯一好位から粘ったタスティエーラが2着だったのですが、日本ダービーではタスティエーラが粘って1着で、ソールオリエンスは差し届かず2着に敗れました。
こうしてみると、クロワデュノールの日本ダービーでの逆転の目はないとは言えないと思うのですがどうでしょうか。

そして勝ったミュージアムマイルですが、かなり異例なキャリアからの戴冠となりました。
芝1800m未勝利に続いて、芝2000m黄菊賞と連勝したのですが、なぜか距離を短縮して朝日杯FSに挑戦します。父リオンディーズが朝日杯FSを勝っていることから適性があると踏んだのかもしれませんが、出遅れながら前に取り付き長く脚を使うものの2 1/2馬身差2着まで。もっと距離があった方が良さそうな印象を残します。
続く弥生賞ディープインパクト記念は1番人気に推されるものの、やや重馬場もあって伸びきれず4着。しかし今回モレイラ騎手騎乗もあって10.6倍の3番人気という評価でした。
調教はかなり良く、パドックも適度な気合乗りでトモの踏み込みも力強く、個人的にも高評価でした。

レースではクロワデュノールを前に見る中団外につけると、4コーナーでは大きく外に出して差し脚に掛けます。直線はじわじわと差を詰めてくると、残り100mぐらいから一気に加速。クロワデュノールを並ぶ間もなく差し切ると、最後は1 1/2馬身差の完勝でした。
1回たたいて調子が上がっていたということもあるでしょうが、良馬場の中距離では速い上りを使っている実績もあり、ペース的にはまった印象です。

またモレイラ騎手は乗れていて、先週の桜花賞に続いてクラシック連勝。この春は高松宮記念もサトノレーヴで勝っているので、G1は3勝目。さらに昨日4勝、今日2勝と、まさに手が付けられない状況です。
ただし今回の短期免許は4/28までということで、残念ながら日本ダービーは乗れないようです。誰が乗るのかが焦点になりますが、このあたりも日本ダービーに向けて大きく影響するでしょう。
とりあえず皐月賞の上位5頭がダービー馬候補として有力だと思いますが、皐月賞のレースや今後の状態も含めて検討を深めていきたいと思います。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です