今年の桜花賞は個人的には3強対決と思っていました。ただ4番人気のリンクスティップの評価が意外と高く、オッズ上は4強という感じになりましたが。
その3強とは阪神JFを勝ったアルマヴェローチェ、フェアリーSを勝ったエリカエクスプレス、クイーンCを勝ったエンブロイダリーの3頭。それぞれ勝ったレースは見所十分でしたが、当然心配な点もありました。
1番人気(3.4倍)になったのはエリカエクスプレスでした。個人的にはアルマヴェローチェが1番人気と思っていたので、ちょっと意外だったのですが。
そのエリカエクスプレスの人気の要因は、やはりフェアリーSの勝ち方でしょう。例年フェアリーSはあまりクラシックに直結しないのですが、今年はその勝ち方がかなり印象的でした。やや掛かり気味に先行すると、4コーナーは馬なりで上がっていって、直線は後続を楽に突き放し3馬身差で快勝したのです。冬の中山は時計が速かったのですが、勝ちタイムの1.32.8は高レベルと言えます。
しかもデアリングタクトで無敗の牝馬3冠を制した杉山晴厩舎所属の関西馬。関東馬であればフェアリーS勝ちは桜花賞であまり評価できないのですが、輸送を克服しての快勝は目を引きました。
ただし懸念もありました。まずはキャリア2戦というところです。ただしデアリングタクトもキャリア2戦で臨んだ桜花賞を勝っており、厩舎にそのノウハウがあるというのは強みだったと思います。
あとは戸崎騎手の関西G1での不振です。戸崎騎手はこれまでJRAのG1を13勝しているのですが、そのうち京都・阪神では2勝(2013年阪神JF、2021年秋華賞)のみ。過去には2015年桜花賞で1番人気のルージュバックで9着、2016年秋華賞で1番人気のビッシュで10着ということもありましたし、あまり相性が良くない印象があるのです。
2番人気(3.8倍)はアルマヴェローチェでした。阪神JFではマイルも良馬場も未経験ということで、札幌2歳S2着の実績がありながら5番人気という評価でした。しかし中団から大外を一気に伸びて、1番の上りで1 1/4馬身差で勝つという見どころ十分な内容だったのです。
懸念としては、昨年の阪神JFが京都で行われたため、直線の最後の坂を経験していない(前2戦は札幌)ということがあったでしょう。京都の芝1600mと阪神では、その性格が異なるため、阪神JFの成績をそのまま当てはめることはできないという論調は、結構あったと思います。
また最近のトレンドとはいえ、4か月の休み明けがどうかという懸念もあったと思います。
3番人気(5.0倍)はエンブロイダリーでした。クイーンCの勝ち時計1.32.2は圧倒的に速く、また抜け出す脚も力強く、2着に2 1/2馬身をつける快勝。主戦のルメール騎手がオーストラリアで騎乗するために不在だったのですが、代わりに初戦にも乗っているモレイラ騎手を確保できたのは大きかったでしょう。
懸念としては、やはり関東馬ということがあったと思います。過去にクイーンCを快勝して桜花賞に臨んだ関東馬はサンエイサンキュー、エイダイクイン、シャイニンルビー、アプリコットフィズ、ホエールキャプチャ、メジャーエンブレムなど、人気に応えられなかった馬たちは枚挙にいとまがありません。
しかしアーモンドアイ(2018年)、グランアレグリア(2019年)と関東馬が桜花賞を連勝したあたりから、傾向が変わってきたように思います。このころからトライアルを経由しない馬たちの台頭が増えてきたのです。そして2022年にはスターズオンアースがクイーンC2着から桜花賞を制し、昨年は阪神JFで1,2着だった関東馬が着順を変えて1,2着(ステレンボッシュ、アスコリピチェーノ)。
それでもエンブロイダリーは早めに栗東に入って、直前の長距離輸送を避けるという万全の準備で備えたのです。
4番人気(6.8倍)は、きさらぎ賞2着から臨むリンクスティップでした。皐月賞でも人気が予想されるサトノシャイニング相手に3馬身差2着は立派だと思いましたが、マイルの経験がなく血統的にも距離伸びて良さそうということで、個人的には軽視してしました。
レースは好スタートを切ったエリカエクスプレスが逃げるという意外な展開となります。中団の内にエンブロイダリー、外にアルマヴェローチェと2頭は同じ位置をキープ。リンクスティップは離れた最後方を進みます。600mは34.5とやや重馬場としては平均からやや速めのペース。
直線で先頭のエリカエクスプレスは馬場中央で逃げ込みを図りますが、外に出したアルマヴェローチェと馬群を突いたエンブロイダリーがじりじりと迫ります。残り250mでエリカエクスプレスの外に出したエンブロイダリーに、外からアルマヴェローチェが並んで併せ馬の形となり、残り200mで2頭でエリカエクスプレスを交わして先頭。いったんエンブロイダリーが抜け出し、アルマヴェローチが必死に差を詰めるものの、エンブロイダリーがクビ差振り切って先頭でゴールを駆け抜けました。
鞍上のモレイラ騎手は、2週間前の高松宮記念サトノレーヴに続き、今年のJRA G1 2勝目で、昨年のステレンボッシュに続き連覇を達成。また森一誠調教師はG1初出走で初制覇の快挙となりました。堀宣行厩舎で調教厩務員、調教助手を務め、開業2年目の47歳と若い調教師ですが、ルメール騎手やモレイラ騎手を確保するなど、実力を認められているのでしょう。
上位混戦という形だった桜花賞ですが、終わってみれば3番人気ー2番人気ー4番人気と、1番人気エリカエクスプレスこそ5着に敗れたものの、固い決着となりました。4強対決のように上位拮抗だと、比較的固く収まる傾向が強い印象なのですが、その通りの結果だったと思います。
これで次の興味はオークスに移るわけですが、基本的に桜花賞上位組が中心になるでしょうし、上位馬の中から勝ち馬が出るのではないかと思います。
エンブロイダリーは血統的にも距離伸びてどうかという懸念はありますが、クイーンCを見ると東京は得意だと思いますし、この時期の牝馬同士なら距離適性もあまり気にする必要はないので、当然有力になると思います。
アルマヴェローチェは新馬、札幌2歳Sと芝1800mから始めており、距離延長は臨むところでしょう。左回りの経験はないものの、今回直線の坂も克服して最速の上りを記録しており、当然逆転の目もあると思います。
リンクスティップは2000mの新馬戦を使っているように、オークスの方が適性があるでしょうし、きさらぎ賞2着で桜花賞でも2番の上りで3着という成績から、新たなキタサンブラック産駒のスター誕生というシーンも十分考えられるでしょう。
マピュースは個人的に穴として期待していたので4着は残念でした。赤松賞1着からクイーンC2着と東京は合うと思うのですが、血統的にもマイルが合いそうなので、NHKマイルCという選択肢もあるかもしれません。
エリカエクスプレスは結果的に好スタートがあだになって逃げる形となったのが、人気を裏切る要因だったとも思います。エピファネイア×ガリレオという血統からは2400mは十分対応できそうなので、ぜひ雪辱を期待したいと思います。