今年の高松宮記念は、昨年のJRAスプリントG1勝ち馬のマッドクール、ルガルや2年前のスプリンターズS勝ち馬ママコチャ、高松宮記念2年連続2着でスプリンターズS2年連続3着のナムラクレアと、現在のスプリント界を代表する馬たちが集まりました。
とはいえ、前哨戦の勝ち馬がすべて異なるように、確たる中心馬がいないのも特徴であり、まさに群雄割拠という状況です。
さらに驚くべきことは、上位5番人気以内のうち4頭が6歳馬だということ。今年の重賞戦線は4歳馬の強さが目立っているのですが、こと短距離路線においては、比較的高齢馬が活躍しているのです。
そんな中で1番人気になったのは6歳牝馬ナムラクレア(3.5倍)でした。ここ2年のスプリントG1では常連でかつ最後の末脚はすばらしく、なぜ勝てないのかが不思議なのですが、運がないとしか言いようがない2,3着続き。
ただし今回は前走の阪神Cを快勝したルメール騎手とのコンビ継続となり、ここ2年と違って昨年末から3ヶ月間隔をあけたローテーションで、今年こそという陣営の執念がうかがえました。
2番人気は遅れてきた短距離界のエリート、6歳牡馬のサトノレーヴ(3.8倍)。父ロードカナロア、母父サクラバクシンオーという血統は、まさにスプリント王者を生むための配合ともいえるもので、期待は大きかったと思われます。
デビューは3歳4月と遅れたものの、芝1200mの未勝利を快勝すると、2戦目こそ2着に敗れたものの、そこから芝1200mを3連勝して4歳春にオープン入り。そこで故障して長期休養に入りますが、5歳春に復帰すると3連勝で函館スプリントS、キーンランドCと重賞も連勝。
スプリンターズSでは1番人気になりますが、552kgという過去最高の馬体重も影響したのか、中団から伸びずに7着と大敗。しかし遠征した香港スプリントではモレイラ騎手鞍上で-15kgの537kgで出走し、香港の実力馬カーインライジングの3/4馬身差3着と好走していました。
今回はそれ以来の約4か月の休み明けでしたが、-7kgの530kgとさらに体を絞ってきて、調教もパドックも抜群の気配を見せていました。
さらに3番人気は昨年のスプリンターズSを勝った5歳牡馬ルガル(5.7倍)。そして4番人気は連覇を狙う昨年の勝ち馬6歳牡馬マッドクール(7.1倍)、5番人気は昨年のスプリンターズSクビ差2着の6歳牡馬トウシンマカオ(7.3倍)と続きます。
ちなみに6番人気も6歳牝馬のママコチャ(14.6倍)。2年前のスプリンターズSを勝って以来勝ち星に恵まれていなかったのですが、前走のオーシャンSで久々の勝利をあげていました。
レースではサトノレーヴは中団の馬群の中に、ナムラクレアは後方の外目につけます。600mは33.7と良馬場にしては落ち着いた流れ。
そのまま直線を向くもサトノレーヴはなかなか前が空かず、モレイラ騎手はどうするのかと見ていたのですが、外のママコチャをやり過ごすと、残り300mぐらいでようやく外に出します。そのすぐ後ろにいたのがナムラクレア。
そこからサトノレーヴは外目で加速すると、内の馬たちを一気に交わしていき、残り100mでママコチャを交わして先頭。すぐ外からナムラクレアも伸びてきますが、最後まで抜かせず3/4馬身差をつけて1着でゴールを駆け抜けました。
そして2着ナムラクレア、3着ママコチャと6歳牝馬が続き、4着トウシンマカオも6歳牡馬。ついでに6着マッドクール(牡6)、8着ドロップオブライト(牝6)と上位8頭中6頭が6歳馬で、うち牝馬が3頭というのも、なかなか見られない結果だと思います。
サトノレーヴは長期休養もあり、6歳にしてまだ12戦目のキャリアでしたが、G1挑戦3度目にしてついに悲願のG1ウイナーとなっただけでなく、親子制覇ともなりました。
ロードカナロア産駒としては、2021年ダノンスマッシュ、2023年ファストフォースに続く3頭目の快挙。特にファストフォースは母父サクラバクシンオーとまったく同じ血統で、この舞台との相性の良さを感じます。
しかしロードカナロアは決して芝短距離専用の種牡馬ではないのです。代表産駒のアーモンドアイはジャパンC2勝などG1 9勝はすべて芝1600m以上であげていますし、サートゥルナーリア(2019年皐月賞)やブレイディヴェーグ(2023年エリザベス女王杯)、ベラジオオペラ(2024年大阪杯)と中距離以上で結果を残す馬もいるほか、パンサラッサ(2022年ドバイターフ、2023年サウジC)のような個性派も生み出しています。
さらに今年のフェブラリーSを勝ったコスタノヴァもロードカナロア産駒。ダートG1も制しただけでなく、ここまでJRA G1を連勝中。もし来週の大阪杯を連覇がかかるベラジオオペラか、日経新春杯3馬身差圧勝から臨むロードデルレイが制すれば、同一種牡馬によるG1 3連勝の快挙となります。
ますますロードカナロアの株が上がるのは間違いないでしょう。
一方3年連続の2着とまたもや涙をのんだのがナムラクレア。今回も33.3とメンバー1の上りを使っているのですが、3/4馬身及びませんでした。常にG1で結果を残すという丈夫さや精神力は称賛に価すると思うのですが、何とも運に見放されている感じです。
今回も後ろからの末脚に賭けたのですが、直線で前のサトノレーヴが外に出すのを待った分、差し届かなかった感じでした。力があるのは間違いないので、陣営としてはただただ悔しさが残る結果でしょう。
おそらく今年いっぱいで引退となるでしょうから、残るチャンスはスプリンターズSか香港あたりの海外遠征でしょうか。香港のスプリンターは強いので、できればスプリンターズSで3度目の正直をかなえてもらいたいものですが、はたしてどうなるでしょう。