コスタノヴァ勝利の要因とは ~フェブラリーS

高額賞金のサウジカップデーと時期が重なることもあり、レベルの低下が心配されているフェブラリーSですが、今年は興味深いメンバーが集まる一戦になったと思います。

人気は上位3頭が何度か入れ替わって推移しましたが、最終的には4歳馬のミッキーファイトが3.3倍の1番人気になりました。個人的にもミッキーファイトを推したのですが、その大きな理由は昨年のジャパンダートクラシックでの印象的な走りでした。
フォーエバーヤングがブリーダーズCクラシックの前哨戦を兼ねて出走し、圧勝するだろうと見ていたのですが、そのフォーエバーヤングにただ1頭迫ったのがミッキーファイトだったのです。上りタイムの37.8はフォーエバーヤングを0.3秒上回り、着差も1 1/4馬身差。3着のサンライズジパングは5馬身突き放したので、昨年の3歳ダート界では2強といっても過言ではない存在に思えたのです。
ただし主戦場は1800~2000mということで、マイルへの適応が大きな課題でした。そしてそれが結果に影響したと思います。

ミッキーファイト 落ち着いて集中して歩いていました

2番人気は根岸Sを4馬身差で圧勝したコスタノヴァ(4.3倍)でした。その根岸Sは直線で中団から外をぐいぐい伸びると一気に差を広げるワンサイドの勝ち方。こちらもかなり強い印象を残しました。それに東京ダート5戦5勝という成績はかなりのインパクトです。
最終的にミッキーファイトとコスタノヴァのどちらを中心にするか悩み、5歳世代より4歳世代の方が強いだろうということと、木村調教師の慎重な物言いからミッキーファイトにしたのですが、甲乙つけがたいのではと思っていました。

コスタノヴァ 落ち着いて適度な気合乗り。お尻の筋肉が印象的でした

3番人気はエンペラーワケア(5.9倍)。前日発売では1番人気になっていましたが、最終的にはやや人気を落とした形になりました。こちらもダート7・2・0・0と底を見せておらず、東京も3戦2勝。前走武蔵野Sは先行馬の間を抜けて1馬身差の完勝とインパクトのある勝ち方でした。
ただし過去10年で馬券圏内のない1番枠に入ったことと、同じく好走例のない武蔵野Sからの直行というローテーションが、どうしても気になりました。また調教も上位人気2頭ほどはよく見えなかったのです。

エンペラーワケア 落ち着いておりクビを使ってキビキビした歩様でした

以下、連覇を狙うペプチドナイル(6.2倍)、前走プロキオンSでアタマ差2着に好走したサンライズジパング(7.0倍)と5頭が10倍以下というオッズになりました。

そしてパドックで各馬を見たのですが、その中で強く印象に残ったのがコスタノヴァでした。ダートを走る馬は大型馬が多く、ミッキーファイト、エンペラーワケアと550kgの2頭をはじめ、軒並み500kg以上の馬が居並ぶ中、コスタノヴァは494kg。決して小さな馬ではありませんが、今回のメンバーに入ると小柄に見えてしまいます。
コスタノヴァ自身は落ち着いて淡々と周回しており、それほど目立つ存在ではないのですが、その中で目についたのは大きなお尻でした。言葉で説明するのは難しいのですが、パンと張って大きく盛り上がった感じで、他馬に比べるとお尻だけが一回り大きい印象だったのです。

お尻の筋肉が走るうえで大切なことは間違いないと思いますが、その大きさは蹴りの強さに直結すると思われ、それは推進力に大きく影響するのではないでしょうか。特に力を必要とするダートでは、それは大きなアドバンテージになると思われたのです。
そこで事前の予想よりもコスタノヴァをより重視することにしました。

ミトノオーやサンデーファンデー、さらにウィリアムバローズなど逃げ脚質の馬が多いためペースが上がると思われたのですが、逃げるミトノオーに競りかける馬はなく、600m35.0と過去10年では3番目に遅いペースで進みます。そんな中でコスタノヴァは好位の真ん中を折り合って追走。
直線は外目に出すと末脚を発揮し、残り300m手前で先頭に立つと突き放して先頭をキープ。最後は内からサンライズジパングに詰め寄られるも、3/4馬身差で先頭ゴールを果たしました。
さらに1 1/4馬身差3着がミッキーファイトで、連覇を狙ったペプチドナイルが4着、エンペラーワケアが5着と、5番人気以内の馬が5着内を占めるという固い決着となりました。

大きく抜け出したコスタノヴァ

パトロールフィルムを見ると、コスタノヴァは最後の直線でかなり内外によれる場面があり、また根岸Sとは違って最後は詰め寄られているので、適距離はやはり1400mではとも思いますが、抜け出す脚は力強く、パドックで印象に残ったお尻の筋肉が、少なからず貢献しているのは間違いないと思います。
また鞍上のR.キング騎手の騎乗も素晴らしかったと思います。個人的にキング騎手で印象的だったのは、昨年の東京新聞杯と今年の京都金杯でのサクラトゥジュールの騎乗で、力強く押して馬群を抜けてくる姿に感心したのですが、フェブラリーSでも同じような姿を見ることができました。マイルをもたせたのも、前半リラックスして走らせたことが効いたと思います。
またこの日は10回騎乗して2・4・0・4と連対率6割を確保し、勝負強さも見せてくれました。

JRAの平地G1では、今回が女性騎手による初勝利(障害では2002年中山大障害をR.ロケット騎手がギルデッドエージで制覇)ということで、歴史的な快挙となりました。
近年JRAでも女性騎手が増えていますが、まだ重賞に騎乗することもまれで、G1制覇となると少し先のことになりそうです。しかし今回のキング騎手の勝利は、彼女たちにとっても大きなモチベーションになるでしょうし、あの小さな体で男性騎手と互角に戦う姿は良い手本にもなると思います。

コスタノヴァとキング騎手

そしてもう一つ、未明に行われたサウジカップデーでも快挙が達成されました。メインのサウジCで、フォーエバーヤングが優勝したのです。
直線に入ったところで香港のNo.1ホース ロマンチックウォリアーに前に出られて、直線ではいったん完全に突き放され、残り200mでは2馬身以上離されたのですが、そこから外に出してじりじりと差を詰めていくと、残り100mでは1馬身差になり、残り50mを過ぎて並ぶと、ゴールではクビ差前に出ていたのです。

ロマンチックウォリアーといえば、ここまでG1 7勝を含む8連勝中。昨年の安田記念でもその強さを目の当たりにして、ダートは初めてとはいえ、さすがのフォーエバーヤングでも勝つのは難しいかと思っていました。
しかしすばらしい勝負根性を発揮して、差し返してみせたのです。昨年のケンタッキーダービーでは追い詰めながらも交わせなかったのですが、これが成長した姿だったのでしょう。

次走はおそらくドバイWCへの挑戦となるでしょうし、順調なら秋はBCクラシックでリベンジに挑むことになるでしょう。世界的名馬への道を歩むフォーエバーヤングとその関係者に、声援を送りたいと思います。

またサウジカップデーのその他のレースでも日本馬が大活躍。ネオムターフカップ(G2)でシンエンペラーが優勝すると、1351ターフスプリント(G2)でアスコリピチェーノ、レッドシーターフハンデキャップ(G2)でビザンチンドリームと勝って、サウジCで日本馬が4連勝。日本時間では真夜中でしたが、大いに盛り上がりました。
この勢いがドバイでも続くことを祈りたいと思います。

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