過去10年で7頭のクラシックホース(皐月賞馬4頭、ダービー馬2頭、2冠馬1頭)を輩出している、いまや重要な前哨戦となった共同通信杯が、今年は9頭立てで行われました。
JRAは各重賞のレースレーティング(過去3年で上位4着までに入った馬のレーティング平均値)を発表しているのですが、2022~2024年の共同通信杯の113.33は、3歳G3では1位(2位は京成杯の111.67)で、G2と比べても上回るのは弥生賞ディープインパクト記念の113.58だけ。主要なクラシックトライアルであるスプリングS(110.21)、青葉賞(110.50)、セントライト記念(112.67)、神戸新聞杯(112.33)よりも高いのです。
それだけ実力馬が集まっているということなのですが、やはり日本ダービーやNHKマイルCを見据えて、東京コースを使っておきたいという馬たちが集まるのでしょう。
さらに昨年から別定重量戦(獲得賞金によって加重される)から馬齢重量戦(年齢、性別のみで決まる)に変わったことで、重賞連対馬など実力馬がますます出走しやすくなりました。
近いうちにG2昇格があるのではと思いますがどうでしょう。
ただし今年は重賞勝ち馬は函館2歳Sを勝ったサトノカルナバルだけで、ほかにOP勝ちがマスカレードボール1頭。残りは1,2勝馬というメンバーになりました。
そんな中で1番人気になったのは、昨年OPアイビーSを好タイムで勝ったマスカレードボールでした。ただし人気順がころころと変わる混戦で、マスカレードボールも3.8倍と2,3番人気と差のないオッズでした。それは前走のホープフルSで11着と大敗したことが大きかったでしょう。
ただし東京の同じ舞台での実績があり、また調教も良く、パドックでも適度な気合と素軽い歩様で良く見せていたので、好走の可能性は高いと見ていました。

2番人気は前走東スポ杯2歳Sで、クロワデュノールの2 1/4馬身差3着に好走したレッドキングリー(3.9倍)。東スポ杯はルメール騎手騎乗もあり2番人気に支持されており、馬体もすばらしくゆったりとした歩様も好感を持てたのですが、今回は調教でも掛かった様子でパドックも前進気勢が強く、折り合いに不安があるのではと見ていました。また東スポ杯の負け方も、先行して競り負けており上位2頭とは力差を感じさせるものでした。

3番人気は函館2歳Sを勝ち、前走はアメリカのBCジュベナイルターフ(芝1600m)に遠征して9着だったサトノカルナバル(4.1倍)。調教の様子は素晴らしく、パドックでも落ち着いて堂々とした歩様で、個人的には9頭の中で1番良いと感じました。
ただし問題は連対距離経験が1400mというところでした。共同通信杯は前走から同距離あるいは短縮した馬の成績がよく、距離延長組は良績が少ないのです。新馬で芝1400mを使った後に芝1200mの函館2歳Sというローテーションは、クラシックを狙う馬なら普通は選択しないので、そこがどうしても引っかかりました。

あとは中山芝1800m1勝C若竹賞を最後方から差し切ったリトルジャイアント(4番人気 5.4倍)、京都芝2000mの新馬戦で中団から3馬身差をつけて勝った、福永厩舎で武豊騎手騎乗が話題のネブラディスク(5番人気 5.7倍)と続きました。
6番人気カラマティアノスは14.1倍と離れ、上位人気5頭の争いと見られていました。
レースでは好スタートを切ったレッドキングリーが逃げ、マスカレードボール、サトノカルナバルが続く展開。いったんレッドキングリーは後続に並ばれますが、北村宏騎手が抑えるにもかかわらず、掛かり気味にどんどん飛ばしていきます。ネブラディスクは中団で、リトルジャイアントは最後方。
さらに向こう正面でワンモアスマイルがレッドキングリーに並びかけて行き、淀みないペースに。過去10年で前半1000m通過の平均は61.17で、一度も60秒を切ったことがないスローが定番だったのですが、59.9と速めで流れます。
そのまま直線を向くと、残り300mまでレッドキングリーは先頭で粘りますが、そこで脚色が悪くなり、代わって内からカラマティアノス、外からマスカレードボールが先頭へ。残り200mではカラマティアノスが1馬身ほど抜けてマスカレードボールが2番手。外目でサトノカルナバル、ネブラディスクが懸命に押すも伸び一息で、大外からリトルジャイアントがじりじりと伸びてきます。
残り100mでカラマティアノスにマスカレードボールが並んで交わすと、あとはぐんぐん伸びてマスカレードボールが1着。1馬身差2着がカラマティアノスでさらに2馬身差3着が大外を伸びたリトルジャイアント。4着ネブラディスク、5着サトノカルナバルという結果になりました。

マスカレードボールは2番手から、前2頭が飛ばすと少し離れた3番手を追走。直線は外目に出しますが、やや反応が鈍く、最内のカラマティアノスに前に出られます。しかし残り200mから脚を伸ばすと、メンバー3位となる33.7の上りでカラマティアノスを差し返しました。
アイビーSでの自らのタイムには0.2及ばなかったものの、ペースが流れたこともあり、勝ちタイムの1.46.0は過去10年では最速。レースぶりもクラシックで十分戦えることを感じさせるものでした。
しかし気になるのは皐月賞と同じ舞台のホープフルSでの凡走です。ドゥラメンテの最終世代で、秋華賞2着のマスクトディーヴァの半弟という血統背景からは、日本ダービーの方が期待できるかもしれません。

カラマティアノスは中団から内を突き、メンバー2位の33.4の上りでいったんは先頭に立つものの、残り100mからの追い比べに敗れました。勝ち上がりまで3戦かかり、前走も1勝Cをクビ差勝ちと地味だったこともありあまり人気は無かったのですが、戸崎騎手の好騎乗もあり好走しました。
ちなみにマスカレードボールは前走まで戸崎騎手が主戦を務めており、乗り替わった馬と1,2着というパターンは意外とある印象です。
ただし最後の追い比べで負けたのは勝負弱さを感じさせ、個人的にはあまり評価できないのではと思います。
リトルジャイアントは横山典騎手らしく、最初から決め打ちで離れた最後方を追走。最後は1番の上り33.3で追いこんできたものの、3着争いを制するのが精いっぱいという形でした。速いペースで流れたことが奏功した面があるものの、離れた3着という結果は、今後を考えると不満が残るものだったと思います。
トータルで見ると、マスカレードボールは生き残ったものの、後の馬たちはクラシックに向けてはかなり疑問というのが、個人的な見解です。また今年の共同通信杯のレベルも、例年ほどは高くない印象も持ちました。
ただし昨年もあまり期待できないと書いたジャスティンミラノが、皐月賞を勝ち日本ダービー2着と好走したので、今後の成長と相手関係次第では、今回出走した馬たちが活躍する可能性もあるかもしれません。
近づいてくるクラシック本番に向けて、予想の精度を上げて行きたいと思います。