強力なジンクスを覆した勝利 ~桜花賞

2年前にも桜花賞のジンクスについて書いたのですが、今年の勝ち馬デアリングタクトには、さらに強力なジンクスが立ちはだかっていました。それはキャリア2戦の馬が近年連対していないこと。

キャリア2戦で桜花賞に出るためには、連勝するか重賞2着に入るかトライアルで権利を取ることが必要になります。しかも連勝と言っても1勝クラスを勝っただけでは抽選になるので、確実に出るためにはOPを勝たなければなりません。
そのハードルの高さもあってか、過去10年で4頭がキャリア2戦で桜花賞に出走しましたが、いずれも着外に敗れています。

3歳春のクラシックでは、当然キャリアの浅い馬たちでの争いとなるわけですが、その中でもレースの経験、特に力のある馬たちとの対戦というのは大事だと思います。
たとえば逃げ・先行馬であれば、自分より速い馬と競ることはかなりのプレッシャーとなり最後の脚に響いてくるでしょうし、差し・追い込み馬であれば、最後の直線で前の馬たちをさばく経験が大事になるでしょう。馬の間の狭い隙間を抜けることは、経験が浅いと恐怖感にもつながると思うのです。
また最後の競り合いで勝つという精神力も、本気のレースを通して身に着けるという面もあるでしょう。

これは過去の勝ち馬の前走が、ほぼ重賞だったということにも表れていると思います。
そんな中、この10年で唯一前走がOPのエルフィンSだったのが2011年の勝ち馬マルセリーナでしたが、そのマルセリーナも2走前はシンザン記念で3着に入っていたのです。

デアリングタクトのエルフィンSでの勝ちっぷりは、後方から34.0の上りで4馬身差をつけるという派手なもので、勝ちタイムもその京都開催のマイル戦では最速と力のあるところを十分にうかがわせるものでした。しかし上記のようなキャリアの浅さがどうしても気になり、個人的にはあまり重い印は打てませんでした。

今日の阪神競馬場は朝から雨になり馬場は重に。
実は桜花賞はあまり馬場が悪くなったことがなく、前回重以上に悪くなったのが1997年(不良)。この年はキョウエイマーチが先行抜け出しで勝って、4馬身差の2着がメジロドーベルでした。

レースはスマイルカナ(9番人気)が逃げて、レシステンシア(1番人気)がそれを追うという予想通りの展開。先行馬が多いこともあり、600mは34.9と重にしては速めのペースで流れます。
そして直線に入ると逃げていたスマイルカナとレシステンシアが馬場の良い中央で叩き合いに。マルターズディオサ、クラヴァシュドール、サンクテュエールなどの人気馬も2頭を追いますが、馬場の悪さもあってなかなか伸びません。
そこに外から伸びてきたのがデアリングタクト。最後はゴール前で抜け出したレシステンシアを交わして1 1/2馬身差で1着。上りは唯一の36秒台となる36.6。2番が37.1のクラヴァシュドール(4着)でその差は0.5秒と完勝と言えるでしょう。

キャリア2戦での優勝は、1980年ハギノトップレディ以来の40年ぶり。かなり強力なジンクスを打ち破ったと言えます。
しかしそのデアリングタクトを2番人気に押し上げたファンの見る目も、個人的にはかなり驚かされました。

ウイニングランで1本指を突き上げた松山騎手に、インタビューアが今後の活躍を期待してのことかと聞いたのに対して言葉を濁していましたが、おそらくオークスそして秋華賞を意識していたのは確かでしょう。
キャリア3戦でのあの強い勝ち方には、今後の夢が広がります。ただ3歳牝馬にとって、重馬場での激走はこたえる可能性もあります。血統的には距離延長は問題なさそうなので、まずは休んで疲れを取って、オークスを目指してもらいたいと思います。

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