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2016年11月27日

キタサンブラックの強さを分析してみます ~ジャパンカップ

ジャパンカップ(JC)でのキタサンブラックの強さには、まさに脱帽でした。
長距離での強さは、今年の天皇賞(春)で差し返して勝ったことからも、誰もがわかっていたと思います。しかし中距離では、一抹の不安(というか、つけ入る隙)があると思っていた人もいるのではないでしょうか。

例えば春の産経大阪杯では、1000m1.01.1とマイペースで逃げて33.6で上りながら、2番手にいたアンビシャスに差されて2着に敗れました。また宝塚記念では、59.1とやや速めのペースで逃げたこともありますが、マリアライト、ドゥラメンテに差されて3着に敗れています。
JCの2400mが中距離かは微妙ですが、宝塚記念の2200mを考えると、同じような展開になる可能性も考えられます。特に東京は最後の直線が長く逃げ馬には厳しいことは周知の事実なので、そのあたりがキタサンブラックの単勝3.8倍という評価につながったのではないでしょうか。

レースでは、キタサンブラックは好スタートを切ると予想通りハナに立ちます。並びかけてきたのはワンアンドオンリーと、意外なことにリアルスティール。しかしリアルスティールはやや行きたがり、ムーア騎手がうまくなだめて下げます。さらにワンアンドオンリーも控えたことで、向こう正面では2馬身ほど離してマイペース。この時点で、ほぼ勝ちは約束されたと言えるでしょう。

キタサンブラックの強さの要素その1は、折り合いだと思います。よく先行馬でスタートから出そうとして、折り合いを欠くシーンを見ることがありますが、キタサンブラックに関してはそれがまったくありません。騎手の指示に淡々と従い、まったく行きたがる素振りを見せないのです。
今日のレースでも、先行各馬は多かれ少なかれ騎手が抑えていましたが、武豊騎手だけは全く自然な騎乗フォームを維持していました。

そのままレースはキタサンブラックのペースで進み、1000mは1.01.7とスロー。特に競りかける馬もいないまま、直線に向きます。
少し内をあけて、馬場のいいところを行くのですが、馬なりのキタサンブラックに対して、後続の馬たちは騎手の手が激しく動きます。残り400mを過ぎて武豊騎手が追い出すと、一気に後続との差が開き、残り300mを過ぎると2馬身以上離して独走状態に。追っていたゴールドアクター、ワンアンドオンリー、リアルスティールなどの脚色が逆に衰え、代わってサウンズオブアース、イキートスなどの差し馬が伸びてきます。

キタサンブラックの強さの要素その2は、スタミナでしょう。長距離G1を制するのだからスタミナがあるのは当然ですが、一時は母父サクラバクシンオーから距離が持たないと盛んに言われたのがウソのようです。
そしてその3は、やはり勝負根性ではないでしょうか。そもそも並ばせない、並んでも抜かせない、抜かれても差し返す、これは負けたくないという強い気持ちが馬になければ、できないことです。

レースは、そのままキタサンブラックが危なげなく逃げ切り、2着サウンズオブアースに2 1/2馬身差の圧勝。これまで重賞ではセントライト記念の3/4馬身差が勝った時の最大着差だったのですが、それを大幅に更新しました。
上りは逃げたにもかかわらず、メンバー5番の34.7。これは最速のレインボーラインの34.3にわずかに0.4秒劣るだけ。まさにテンよし、ナカよし、シマイよしの、競走馬の理想の姿に近いと言えるでしょう。

これでキタサンブラックは、今年唯一のJRA G1 2勝馬となり、まだ有馬記念を残すものの、年度代表馬の称号はほぼ間違いないでしょう。そして今日の勝ち方は、その称号にふさわしいものでした。
もし有馬記念をマリアライトかサトノダイヤモンドが強い勝ち方で制した場合は、年度代表馬の行方は少し揺れるかもしれませんが、キタサンブラックが無事に有馬記念に出走してくれば、その可能性は限りなく低いように思えます。

2016年11月20日

審議になって考えたこと ~マイルCS

マイルCSは、3番人気ミッキーアイルが1.33.1で逃げ切って優勝し、NHKマイルCに続くG1 2勝目を手にしました。600mが34.4と平均ペースで進んだものの、上り最速が34.6と良発表にもかかわらずかかっており、時計のかかる馬場だったことも幸いしたように思います。
2着は好位を進んだイスラボニータ、3着は2番手から粘ったネオリアリズムで、後方からの馬は出番なしでした。展開の予想はだいたいあっていたのですが・・・

そのミッキーアイルですが、ゴール前で大きく外によれて、2着ネオリアリズム、5着サトノアラジン、10着ディサイファ、4着ダノンシャークが大きな不利を受けました。そのために審議になり、久々にドキドキ感を味わいました。

JRAの降着制度が2013年に変更になり、「その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」と判断した場合」しか降着にならないことになり、大幅に降着になるケースは減ったと思うのですが、それでもいったん当たったと思った馬券が、最終的に外れになるショックは、なかなか大きいものです。もちろん逆に外れが当たりになることもあり、それはラッキーですが、個人的な記憶としては、悔しさの方が強いです。

調べてみるとJRAで降着制度が始まったのは、1991年と意外と新しいのです。それまでは進路妨害は一律失格としていたのですが、馬券購入者への影響が大きいと積極的に適用しない傾向にあり、ラフプレイを助長するということで、降着制度が導入されました。
その初年度に起こったのが、天皇賞(秋)でのメジロマックイーンの1位入線18着降着でした。このレースは、私は馬券を買っていなかったのですが、JRAや武豊騎手へのブーイングがすさまじかったのを覚えています。

その後も何度か大きなレースでの降着は起きていますが、個人的に強く印象に残っているのが、2010年のジャパンカップでのブエナビスタの降着です。とても好きな馬で、その年のJCでも馬券の中心にして応援していたのですが、2馬身近い差をつけて1位入線したにも関わらず、2着に降着となりました。ブエナビスタ自身2度目(1回目は2009年秋華賞で2位入線も3着降着)ということもあり、最後の勝負所で一所懸命になるあまり、よれてしまうのかなと好意的に解釈していました。
進路妨害をすると騎手に制裁がいくように、その責任のかなりの部分は騎手が負っていると思われるのですが、安藤勝騎手やスミヨン騎手という名手をしても避けられなかったということは、やはり馬の癖によるものだったのでしょう。
ただ個人的に馬連を買うので、馬券的には被害がなかったということで、冷静に見られるという面はあるかもしれません。

他に馬券的には救われたのが、1996年のエリザベス女王杯でのヒシアマゾンの2位入線7着降着です。ヒシアマゾンとは個人的にとても馬券の相性が悪かったのですが、この時は長期休養明けで、しかも休養前も大敗していたので、思い切って馬券の対象からは外していたのです。
ヒシアマゾンといえば、後方から追い込むイメージが強いのですが、このレースでは先行して粘り、ダンスパートナーには差されたものの2位で入線します。しかし久々が響いたのか斜行して進路妨害を取られてしまいました。馬券的にはそれで当たりになったのですが、久々のレースで、よれるほど頑張ったヒシアマゾンに対して、申し訳ないような複雑な気持ちになったことを覚えています。

公正を確保し、ラフプレーなどを防ぐ意味で、降着・失格のルールがあることはわかります。しかしその一方で馬券を買う側には落ち度はないわけですが、当たり馬券が外れ馬券になることで、その責任の一端を負わされるように思えて、なんとなく納得いかない思いを個人的には持っていました。
その意味では、新しい降着・失格のルールは、以前よりはよいと思います。

勝負所で苦しくなってよれてしまうのは仕方ないことなのでしょうが、できれば騎手の皆さんにはそれを防ぐような努力をしてもらって、誰もが納得いくようなレースを見せてもらいたいと思います。

2016年11月13日

荒れた時の理由探し:外国人騎手・マンハッタンカフェ産駒 ~エリザベス女王杯

今年のエリザベス女王杯は、宝塚記念を制したマリアライトと、昨年の牝馬2冠馬ミッキークイーンの2強に、府中牝Sを勝ったクイーンズリングや昨年3着のタッチングスピーチ以下が挑むという図式でした。
とはいえ、マリアライトはG1 2勝がともにやや重で良の時計勝負に、またミッキークイーンはねん挫で予定していた京都大賞典を使えずヴィクトリアMからの半年の休み明けにと、それぞれ不安を抱えての出走となりました。それが、ともに単勝3倍台という微妙な評価になったのでしょう。

その結果、ミッキークイーンは外から鋭く迫ったものの3着、マリアライトは不利もあって伸びきれず6着と、ともに連対を外すことになりました。
勝ったのは3番人気のクイーンズリング。中団から内を突いて、1番の上り33.2で差し切りました。そして2着が12番人気のシングウィズジョイ。スローを先行して直線で抜け出し、ゴール直前まで粘りましたが、最後はクイーンズリングの切れに屈しました。

個人的にクイーンズリングはかなりの力の持ち主という印象があったので注目していたのですが、シングウィズジョイはまったくのノーマークでした。3歳時にフローラSを先行抜け出しで制したものの、その後はオークス17着、秋華賞10着など重賞で2桁着順を繰り返し、昨年末にマイルのターコイズSを勝ったものの、良績はそれだけという存在でした。ルメール騎手に乗り替わったことが、唯一気になったものの、それだけでは買えませんでした。

騎手が決まる過程というのは、一般人からはなかなか伺えないものですが、少なくともリーディング上位の騎手に頼む際は、まったく勝負にならない馬は頼みにくいと聞いたことがあります。ルメール騎手といえば、先週1日8勝して、リーディングトップの戸崎騎手に一気に追いつき、今年もリーディングを伺うトップジョッキー。いかに有力馬を多く抱える友道厩舎とはいえ、望みのない馬は頼まないでしょう。そういう意味では、厩舎サイドでは変わり身を感じて、スローが予想されるメンバー構成から、十分勝負になると踏んでいたのかもしれません。
終わってみれば、全国リーディング3位のM.デムーロ騎手と、2位のルメール騎手の組み合わせで馬連万馬券。騎手だけ(!)で選べば、実に簡単な馬券だったわけです。

そして上位2頭の共通点は、ともにマンハッタンカフェ産駒ということ。サンデーサイレンスを父に持つ種牡馬として、そこそこの活躍馬を出している印象はありますが、ディープインパクトやステイゴールド、ネオユニヴァース、ハーツクライなどに比べると、少し地味な感じがします。

特によく聞かれるのが、G1勝ちの産駒が少ないということ。JRAのG1では、ジョーカプチーノ(2009年 NHKマイルC)、レッドディザイア(2009年 秋華賞)、ヒルノダムール(2011年 天皇賞(春))、グレープブランデー(2013年 フェブラリーS)、そして今日のクイーンズリングのわずか5頭しかいません。しかもクラシック勝ちはなく、旧8大競争では 天皇賞(春)の1勝のみ。

またマンハッタンカフェ自身は菊花賞を勝っているにもかかわらず、産駒は意外と距離が伸びてよくないイメージもあります。
天皇賞(春)を勝ったヒルノダムールはいますが、短距離からマイルで活躍したジョーカプチーノ、ガルボや、1800mで強いけど距離伸びて今一つのルージュバックなどの印象が強いせいかもしれません。
実際に産駒の芝での平均勝ち距離は1700m台と、万能のディープインパクトとは同じぐらいですが、ステイゴールドやハーツクライに比べると、少し短いのは事実です。

3コーナーの坂超えがある外回りの京都芝2200mは、ある程度のスタミナも要求されるので、芝1800mまでしか勝ちのないクイーンズリングは距離不安もささやかれました。しかし終わってみれば、まったく距離の不安を感じさせない鮮やかな勝ち方。しかもシングウィズジョイも2着に粘ったことで、マンハッタンカフェ産駒の個人的な評価を、少し変える必要があるでしょう。

しかしこればかりは、レースが終わって初めてわかること。今後の予想に生かすようにしたいものです。