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ロードカナロア

性別 毛色 鹿毛
生年月日 2008年3月11日 所属 栗東・安田隆行厩舎
キングカメハメハ レディブラッサム (母父:ストームキャット)
戦績 19戦13勝
(13・5・1・0)
生産者 北海道新ひだか ケイアイファーム
馬主 ロードホースクラブ 騎手 古川吉洋、蛯名正義、福永祐一、北村友一、岩田康誠
おもな
勝ち鞍
スプリンターズS(2012,2013),香港スプリント(2012,2013),高松宮記念(2013),安田記念(2013),京阪杯(2011),シルクロードS(2012),阪急杯(2013)
21世紀の名馬VOL.7「ロードカナロア」 (Gallop21世紀の名馬シリーズ)
 

日本の中央競馬はイギリスに範をとったことから、クラシックディスタンスや長距離を重視する傾向が長年続いてきた。古馬の最高峰レースとして天皇賞が長年3200mで行われてきたことが、それを象徴しているともいえるだろう。
それは1984年に天皇賞(秋)が2000mに短縮されても基本的に変わることはなかった。しかし世界的にスピードが重視されるようになってくると、徐々にマイル以下のレースの地位も上がってきて、1996年に新たに高松宮記念がスプリントG1にリニューアルされるなど、短距離レースの体系も整備されてきた。

しかしスプリント界のスターはなかなか現れなかった。サクラバクシンオーやデュランダルなどスプリント戦に強い馬はいたが、賞金を稼ぐとどうしてもマイル以上に挑戦せざるを得ず、思わぬ凡走をしたり、逆にスプリント戦で勝てなくなることもあった。
スプリントG1を勝ったことがある年度代表馬は1998年のタイキシャトルがいたが、どちらかといえばマイラーのイメージが強い。そんな中、スプリント戦を主戦場にしながら年度代表馬(2013年)に初めて選ばれたのがロードカナロアだった。

ロードカナロアがデビューしたのは2010年12月5日の小倉芝1200m新馬戦。逃げて6馬身差という衝撃的なデビューを飾ると、翌2011年に距離を伸ばして芝1600mジュニアC、芝1400m500万下に挑戦するが、いずれも2着に敗れてしまう。
これで陣営はスプリント戦が合うと判断したのだろう。芝1200mに専念すると、500万下に続いてOPを連勝し、さらに京阪杯、2012年のシルクロードSとG3も連勝。重賞連勝を含む5連勝を飾って一躍注目の的となる。最初のころは逃げていたが、OP2勝目からは中団から速い上りで差し切る脚質となった。

個人的にはシルクロードSあたりから注目するようになったが、続く高松宮記念が真価を問われる場になると思った。
勝つのは同厩舎で1つ上の牝馬カレンチャンかロードカナロアのどちらかではないかと考えたが、ロードカナロアの不安は平坦右回りでしか勝っていないことと、5連勝という成績だった。さすがに500万下からG1まで一気に勝ちきるのは難しいのではないかと思ったのだ。
パドックで見たロードカナロアは、落ち着いていてトモの踏み込みも良かったが、馬体の迫力ではカレンチャンにかなわず、どちらかというと優等生的な印象を受けた。
レースでは好スタートから先団を進むも、先に抜け出したカレンチャンを捕まえられず、後方からサンカルロに交わされ、なんとか同厩舎のダッシャーゴーゴーを抑えるも3着と初めて連対を外してしまう。
それまでは平坦の馬場を速い上りで差し切る競馬を見せていたが、坂があり時計が掛かる馬場では、もう一段の成長が必要と思わせるレースぶりだった。

その後、夏に復帰するも函館スプリントSは3/4馬身差、セントウルSはアタマ差でともに2着と勝ちきれない。優等生が壁に当たったという印象を感じさせられた。

そして迎えたスプリンターズS。デビューから続けてきた1番人気を、2連覇とスプリントG1連勝を狙うカレンチャンに譲り、初めての2番人気(4.4倍)。勝ちきれない印象が単勝馬券を買うことをためらわせたのだろう。
ここで真価が問われたのは、前走のセントウルSでそれまでの主戦だった福永騎手から乗り替わった岩田騎手も同じだった。G2以上では勝てないという評価を覆すことが求められていたのだ。
個人的にはロードカナロアの調教もパドックの様子もよく見えた。特にやや頼りない感じもあった馬体が、堂々として風格も出てきて充実を感じさせ、4歳秋にして本格化してきた印象だった。

レースでは激しい先行争いを避けてカレンチャンが好位を進み、さらにそれをマークするように中団にロードカナロアがつける。直線に入ると先行勢が失速する中、外からカレンチャン、つれてロードカナロアが伸びてきて、坂を上って2頭で抜け出し一騎打ちに。残り50mでロードカナロアがカレンチャンを交わして先頭に立つと、3/4馬身差で1着。初のG1制覇を果たす。
ペースが速く馬場も良かったため、1.06.7のレコードタイムを記録。勝ちきれないイメージを覆し、次戦の香港スプリントで引退するカレンチャンに代わって、新たなスプリント王者の誕生を予感させる走りだった。

そしてその予感通り、ここからロードカナロアの快進撃が始まる。
年末の香港スプリントでは、好スタートから先行すると、直線はじりじりと伸びて残り100m手前で先頭。そこから一気に後続を突き放し、2 1/2馬身差で日本馬として初めての優勝を飾る。

帰国初戦の阪急杯ではただ1頭58kgを背負って、実績のない1400mながら3/4馬身差で快勝すると、前年3着に敗れた高松宮記念に出走。左回りは負けた前年の1回しか経験がなかったが、1.3倍の圧倒的1番人気に支持される。パドックでもややテンションは高いが、絶好のコンディションを感じさせた。
ロードカナロアは中団を進むと、直線は外に出して脚を伸ばす。マイペースで逃げたハクサンムーンにややてこずるも、残り50mでようやくかわすと、後方から差してきたドリームバレンチノに1 1/4馬身差をつけて快勝。G1 3勝目を飾る。スプリント戦では国内に敵なしを強く印象付ける勝ち方だった。

そこで次走が注目されたが、陣営は実績の無いマイルの安田記念への参戦を表明する。そこにはロードカナロアの種牡馬としての価値をあげたいという思惑もあっただろう。
マイルはデビュー2戦目のジュニアCで1/2馬身差2着に敗れてから1度も走っておらず、はたして距離延長に対応できるのかが最大の焦点となった。
実際に高松宮記念の勝ち馬が安田記念を制した例はなく、その前の10年でも5頭が高松宮記念を勝って安田記念に参戦するも、その最高着順は7着とすべて着外。東京のマイルといえば1800m以上に実績のある馬が強く、スプリンターにはつらい舞台だった。

1400mの阪急杯勝ちや岩田騎手の強気の発言などもあり、ロードカナロアは1番人気に支持されるも、そのオッズは4.0倍とかなり微妙な評価だった。パドックでは、相変わらず気合乗りの良さやリズミカルで踏み込みの深いトモの歩様など、状態の良さをうかがわせ、距離に確信は持てないものの、上位に来る可能性が高いと思った。

ロードカナロア
ロードカナロア 安田記念出走時 2013年6月2日 東京競馬場

レースではシルポートが早めのペースで逃げ、ヴィルシーナやカレンブラックヒルというG1馬が先行する厳しい流れを、ロードカナロアは中団外で追走。直線は外に出すと、じりじりと伸びて、残り100mで先頭に立つ。最後は追い込んできたショウナンマイティをクビ差抑えて、4つ目でかつ初のマイルでのG1勝利をつかんだ。
着差は僅差だったが、マイルで勝った意味は大きかった。それまでのスプリンターとはレベルの違う能力の持ち主だということを証明したのだ。スピードが一級品であることはすでに十分示していたが、マイルをこなせるスタミナも兼ね備えていることを見せることで、さらに可能性が広がったと思う。

ロードカナロア
ロードカナロア 安田記念出走時 2013年6月2日 東京競馬場

ロードカナロア
ロードカナロア 安田記念出走時 2013年6月2日 東京競馬場

夏休みを挟んで復帰戦のセントウルSは、ハクサンムーンの逃げをとらえられずクビ差2着に敗れ、前年のスプリンターズSから続いた連勝は5で止まってしまう。
しかし3ヶ月の休み明けのロードカナロアが58kgを背負っているのに対して、アイビスSD1着から1か月半ぶりのハクサンムーンは56kg。連覇を狙うスプリンターズSでロードカナロアは再度ハクサンムーンと対戦することになるが、ここでは負けないだろうと1.3倍の圧倒的な1番人気に支持される。
ほかにG1馬は2,3歳時にマイルで勝っているグランプリボス(5歳)のみで、ほぼ勝負付けが済んでいるメンバー。この評価は妥当だと個人的にも思った。

レースは、ダッシュを効かせて先頭に立ったハクサンムーンに、3頭が絡む激しい先行争いとなり、600mが32.9のハイペースというハクサンムーンにとってはつらい展開。それをロードカナロアは中団外で悠々と追走し、直線に入ると外に出して前を追う。
坂ののぼりでハクサンムーンを射程圏にとらえると、一気に追い込んでゴール前で交わし、最後は3/4馬身離して1着でゴール。危なげない横綱相撲で、あっさりとスプリンターズSの連覇と、G1 5連勝を達成した。

スプリンターズS連覇はサクラバクシンオーが1993,94年に達成しているが、有力と思われたタイキシャトル、ビリーヴ、デュランダル、カレンチャンなどの名馬たちが挑んで成し遂げられず、意外と高い壁だった。それをあっさりと達成したことで、「世界のロードカナロア」という名声は、より一層高まった。
しかしいつもは鮮やかに差し切るロードカナロアが、ハクサンムーンをとらえるのに意外と手間取ったように見え、実際に上りもメンバー5位タイの33.8とらしくないもの。次走のラストランで連覇を狙う香港スプリントに向けて、若干の不安を感じさせられた。

そして引退レースとなった香港スプリント。好スタートから中団前の外につけるが、前に馬を置けず、行きたがるのを岩田騎手が懸命に抑える。そのまま4コーナーでは馬なりで先団外につけると、残り300mで先頭に並びかける。そこから追い出すと一気に馬群を突き放し、最後はレース史上最大となる5馬身差の圧勝。レベルの高い香港のスプリントG1で、5馬身差で連覇を飾るという走りは、世界に衝撃を与えた。
最後のレースで生涯1番の強さを見せたが、特筆すべきはその安定感だろう。生涯19戦して連対を外したのは、2012年高松宮記念3着の1回のみ。出遅れや不利などが致命的な影響を与えるスプリント戦中心に使われてのこの成績は、ある意味驚異的だと思う。

そして2013年のJRA賞では、G1を複数勝ったのが3歳牝馬のメイショウマンボと2頭だけだったこともあり、圧倒的な票数で年度代表馬に選ばれる。期せずして短距離部門の評価向上にも貢献したと言えるだろう。
そんな強烈な記憶と印象を残して、ロードカナロアはターフを去っていった。

翌2014年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りする。初年度の種付け料は500万円とあまり期待が高いとはいえなかったが、初年度産駒がデビューした2017年にファーストシーズンリーディングサイヤーを獲得。
そして翌2018年にアーモンドアイが牝馬3冠とジャパンC、ステルヴィオがマイルCSを制して大ブレイク。さらにサートゥルナーリア(2018年 ホープフルS、2019年 皐月賞)、ダノンスマッシュ(2020年 香港スプリント、2021年 高松宮記念)、レッドルゼル(2021年 根岸S、JBCスプリント)など芝・ダート、距離問わず多くの活躍馬を生み出す。

その種付け料は2020年度には2,000万円まで引き上げられ、超一流種牡馬の仲間入りを果たした。距離適性としては2000mまでという印象もあるが、現在主流のサンデーサイレンスの血が入っていないということもあり、キングカメハメハの後継種牡馬として、しばらくは人気が続くだろう。

競走馬としても種牡馬としても、超一流の実績を残していくロードカナロア。産駒の今後の活躍にも期待したい。


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