テイエムオーシャン

性別 毛色 鹿毛
生年月日 1998年4月9日 所属 栗東・西浦勝一厩舎
ダンシングブレーヴ リヴァーガール (母父:リヴリア)
戦績 18戦7勝
(7・1・4・6)
生産者 北海道浦河 川越敏樹
馬主 竹園正繼 騎手 本田優
おもな
勝ち鞍
阪神3歳牝馬S(2000),桜花賞(2001),秋華賞(2001),
札幌記念(2002),チューリップ賞(2001)
    ジャングルポケットでも書いたが、まだあまり知られていないときに目を付けた馬が出世するのは自慢したくなるし、それがたまたま行ったローカル競馬場で出会った馬だと、その幸運を喜びたくもなる。その後馬券も取れれば言うことはない。
    そういう意味でも、テイエムオーシャンもジャングルポケットと並んで、個人的に思い出深い1頭だ。

    3歳[旧年齢](2000年)

    テイエムオーシャンを初めて競馬場で見たのは、ジャングルポケットと同じ2000年9月23日の札幌3歳Sだった。このレースで、テイエムオーシャンは牝馬ながら1番人気に支持される。それは新馬戦で、次走でOPを勝つウインラディウスに勝ったことや、前走の芝1200mの500万下で、2着馬を6馬身ちぎって勝っていたことなどが理由だろう。
    いきなり600m距離が伸びたにもかかわらず、果敢に逃げたテイエムオーシャンは、ジャングルポケット、タガノテイオーに次ぐ3着に敗れてしまう。

    テイエムオーシャン
    札幌3歳S 2000年9月23日 札幌競馬場
    1着ジャングルポケット(千田) 2着タガノテイオー(藤田) 3着テイエムオーシャン(本田)

    しかしのちにこの上位3頭の残す成績により、この札幌3歳Sのレベルがいかに高かったかが証明されることになる。
    1着のジャングルポケットは皐月賞こそ出遅れて3着に敗れるが、ダービーを後方から差して優勝すると、3歳でジャパンCも制覇。
    2着のタガノテイオーは東スポ杯3歳Sを勝ち、朝日杯3歳Sはレース中に骨折するも2着。残念ながら怪我がひどく安楽死となってしまったが、無事なら大きいところを勝っていただろう。

    そしてテイエムオーシャン。札幌3歳Sの次走は、G1の阪神3歳牝馬S(現 阪神ジュベナイルフィリーズ)に出走する。
    すでに札幌3歳Sのレベルの高さは認識されており、1200mでの強さから距離不安はあったが1番人気に支持される。
    やや掛かりながら先行するが、4コーナーで馬なりで先頭に立つと、余裕の脚色で後続を突き放す。そのまま2馬身差で快勝した。
    個人的には新潟3歳S組を重視して、テイエムオーシャンと組み合わせて買った。すると新潟3歳Sで1,2着のダイワルージュ、リワードアンセルが2,3着に入り、この2頭とも意外に人気がなかったことから好配当となった。その年の負けを一気に取り返し、とてもありがたかったことを覚えている。

    3歳[新年齢](2001年)

    2001年、この年から馬の年齢の数え方が変わり、2度目の3歳馬としてテイエムオーシャンは初戦のチューリップ賞に出走。ここも先行して突き放し4馬身差の圧勝。
    次走は1.3倍の圧倒的な1番人気で桜花賞に出てきた。未対戦の馬もいたが、牝馬相手に抜けた強さを見せているテイエムオーシャン相手では、どうしようもないというのが大方の見方だった。

    レースは先行すると思われた馬が控えたこともあり、600m35.4とスローな流れ。テイエムオーシャンは3コーナーまではやや掛かるしぐさを見せるも、その後は折り合って2番手と絶好位を追走。馬なりで4コーナーを回り、追い出すと後続を一気に突き放す。最後は2着争いの3頭に3馬身差をつけ、あっけなくクラシック1冠を勝ち取った。
    2着のムーンライトタンゴを買っておらず馬券的には外したが、その勝ちっぷりは今後に期待を持たせるものだった。

    そしてテイエムオーシャンは2冠を目指してオークスに挑戦する。
    ここでの最大の懸念は距離だった。父の凱旋門賞馬ダンシングブレーヴは、距離不安を感じさせないレース成績だったが、それまで日本で走った代表産駒のキョウエイマーチ、キングヘイローは、いずれも人気でオークス、ダービーに出走して惨敗している。
    テイエムオーシャン自身も掛かって先行するシーンがたびたびあり、はたして東京の2400mがもつかが焦点だった。

    そしてその懸念は、残念ながら的中する。好スタートを切ったテイエムオーシャンは、本田騎手が懸命になだめるも、クビを振って前を目指す。なんとか好位で折り合わせようとしているのがわかるが、向こう正面でも5番手の外から、徐々にポジションを上げて行く。結局3コーナー過ぎまで押さえっぱなしで、ペースが上がってようやく一息つく。
    4,5番手で直線に向くと、懸命に脚を伸ばそうと追うが、後方からローズバトに交わされ、さらにレディパステルにも抜かれて、脚色的にも苦しい。それでもなんとかがんばり、レディパステル、ローズバドの上位2頭には離されたものの、そこから2 1/2馬身差の3着に粘ったのは、桜花賞馬の意地だっただろう。

    秋は直行で秋華賞に向かう。オークスで敗れたローズバド、レディパステルが当面の相手だったが、距離短縮もありテイエムオーシャンが三度1番人気となる。
    レースは1000m58.4と早めの流れとなるが、テイエムオーシャンはやや離れた3番手でぴったりと折り合う。これが夏を越しての成長なのだろう。そのまま馬なりで進出して直線に入り先頭。追い出すと一気に後続を突き放す。
    スタートでつまずいて最後方から進み、最後は内ラチ沿いに進路を取ったローズバドが驚異的な脚で追い込んできたが、3/4馬身差抑えてテイエムオーションはG1 3勝目を挙げた。
    3着はレディパステルで、オークスの着順がひっくり返った形になった。

    次走はエリザベス女王杯に出走し、テイエムオーシャンはここでも1番人気となる。
    飛ばす2頭を見る離れた3番手を進み、理想的な展開となったが、直線先頭に立ったところを、外からトゥザヴィクトリー、内からティコティコタックの古馬2頭に挟まれると後退。ローズバド、レディパステルにも交わされ5着に終わる。
    さらに有馬記念に駒を進めるが、さすがに荷が重く、初めて後方から差す競馬を見せるが、僚馬の5着テイエムオペラオーから3/4馬身差6着に終わった。

    4歳(2002年)

    翌2002年、4歳になったテイエムオーシャンは、有馬記念以来8か月ぶりの札幌記念で復帰。38kgと大幅な馬体増にも関わらず、先行して1 1/2馬身差で快勝し、力のあるところを見せる。
    しかし秋は天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念と牡馬の王道を歩むも、13,9,10着と惨敗。

    5歳(2003年)

    2003年は久々のマイルとなるマイラーズCで復帰するも3着。
    さらに夏はマーメイドS、クイーンSとG3の牝馬戦に出るが、ともに59kgと酷量を背負わされたこともあり、2,3着と勝てず。
    秋はエリザベス女王杯を目指すも、調教中に骨折が判明して引退となった。

    競走生活の総括とその後

    桜花賞までは、どれだけ強くなるのかわくわくさせられたが、気性とスタミナという持って生まれた資質には勝てなかったということだろうか。それでもキョウエイマーチやキングヘイローのようにマイル以下には専念せず、中長距離の王道に挑み続けた気概は評価したいし、G1 3勝は日本におけるダンシングブレーヴの代表産駒と言える成績だと思う。

    繁殖入り後は、同一馬主のテイエムオペラオーと5年連続交配。テイエムオペラドンが障害OPを2勝し、2017年の京都ハイジャンプ(J・G3)で2着に入るも重賞は勝てず。
    その後もいろいろな種牡馬との間に合計11頭の産駒をもうけたが、中央で勝ち上がったのは4頭。2023年時点ではテイエムオペラドンが最高成績となっている。
    2020年で繁殖を引退したとのことで、残った仔は多くないが、少しでも母に近づけるよう期待したい。