ドゥラメンテ

性別 毛色 鹿毛
生年月日 2012年3月22日 所属 美浦・堀宣行厩舎
キングカメハメハ アドマイヤグルーヴ (母父:サンデーサイレンス)
戦績 9戦5勝
(5・4・0・0)
生産者 北海道安平 ノーザンファーム
馬主 サンデーレーシング 騎手 F.ベリー、石橋脩、M.デムーロ
おもな
勝ち鞍
皐月賞(2015),ダービー(2015),中山記念(2016),共同通信杯(2015)

 週刊Gallop 臨時増刊号 JRA重賞年鑑 2015

    競馬は血統が大事だというのは、競馬ファンなら誰でも否定はできないだろう。強い馬は強かった親から生まれる可能性が圧倒的に高い。
    ただし両親がともにG1を何勝もしているからと言って、必ずしもその仔がG1を勝つまで出世するとは限らないのが、競馬の難しいところでもある。
    そんな中、ドゥラメンテこそは絵にかいたような良血でありながら、素晴らしい成績を残した、ある意味稀有な例の典型かもしれない。

    キングカメハメハはNHKマイルCとダービーを勝つというすばらしい競走成績に加えて、ロードカナロア、ラブリーデイ、レイデオロを送り出すなど、種牡馬としても超一流といえる。
    そして母アドマイヤグルーヴは、大種牡馬サンデーサイレンスと天皇賞(秋)などを勝ったエアグルーヴを両親に持つ超良血であり、自身もエリザベス女王杯を連覇。その仔は当然のように大きな期待を集める。
    しかしドゥラメンテの全兄弟がそこまでの実績を残せていない事実もあり、やはり良血だからと言ってもG1馬まで出世する確率は、意外と高くないのである。

    2歳(2014年)

    ドゥラメンテがデビューしたのは、2014年10月12日の東京芝1800m新馬戦。1.4倍の圧倒的な人気となるが、先行馬をとらえられずに3/4馬身差2着に敗れてしまう。
    しかし1か月後の同じ舞台の未勝利戦で1.0秒差の圧勝を飾ると、明けた2015年2月1日に再度同じ舞台の500万下セントポーリア賞で、1.7倍の圧倒的な人気に応えて、0.9秒差で楽勝する。
    これで一気にクラシック候補として注目を集めることになった。

    次走は2週間後のまた同じ競馬場、距離のG3共同通信杯に、初重賞制覇をかけて出走する。評判馬がどんな走りを見せるのか期待を込めて現地観戦に行った。12頭立てのレースで、ドゥラメンテは1.8倍の圧倒的な1番人気。
    前走からコンビを組む石橋騎手を背に好スタートを切ると、行きたがって頭をあげるのを懸命に抑えて好位につける。しかし折り合いがつかず、抑えているうちにどんどんポジションを下げていく。3コーナー手前でようやく落ち着くが、気づくと中団後方で、まだ手綱を引いて抑えており、ちょっとまずいのではと思う。
    それでも直線に入って追い出すと外から伸びてきて、残り200mを切って先頭に立つ勢い。ところが内で脚をためていた3番人気リアルスティールが伸びてきて並んで追い比べに。ゴール前で半馬身ほど抜け出したリアルスティールにドゥラメンテも懸命に追いすがるが、結局そのままの態勢でゴールイン。人気を裏切って思わぬ敗戦を喫してしまう。

    掛かったとはいえ、抑えて下げすぎたように見えたので、期待していた分、そのレースぶりには不満が残った。
    陣営も同じような見方だったのか、次戦の皐月賞はM.デムーロ騎手に乗り替わり、その後は最後まで主戦騎手を務めることになる。

    その皐月賞、1番人気は東スポ杯、弥生賞を勝ち3戦3勝のサトノクラウン。2番人気は共同通信杯を勝ってスプリングSクビ差2着のリアルスティール。ドゥラメンテは当時あまり良績の無かった共同通信杯からの直行ということもあり4.6倍の3番人気だった。
    ちなみにのちにG1 7勝を挙げるキタサンブラックはデビュー3連勝でスプリングSを勝っていたが4番人気まで。
    個人的にもドゥラメンテは気になったものの、サトノクラウンとリアルスティールの方が上ではないかと思っていた。

    レースではドゥラメンテは内枠から下げて後方を追走。前走と違って掛かることなくスムーズな走りを見せる。しかし内で包まれたまま3コーナーから4コーナーに向かい、どうさばくのかと見ていると、4コーナーでちょうど斜めに空きができた馬群を突っ切って、横っ飛びするように一気に外に飛び出す。一瞬何が起こったのかわからなかったが、気づくと最内から大外に出ていた。
    そこで態勢を立て直すと、外から一気に伸びてきて、先行して抜け出していたリアルスティールを並ぶ間もなく交わす。
    そのまま脚を伸ばすと、M.デムーロ騎手はムチを入れることなく、ゴール前ですでにガッツポーズを見せる。終わってみれば1 1/2馬身差の完勝だった。
    しかし4コーナーで十分な間隔がないのに進路を変えたということで、開催4日間の騎乗停止処分となった。

    次のダービーでは、東京実績(4戦2勝2着2回)と皐月賞での圧倒的強さもあって、1.9倍の1番人気に支持される。
    やや行きたがるのを抑えて中団前めにつけると、4コーナーでは外にはじかれるも、直線は外から伸びると、残り300mで早くも先頭。内で粘るサトノラーゼン、外から伸びるサトノクラウンに1 3/4馬身差をつけて、危なげなく2冠を達成した。
    関東馬としては2009年のロジユニヴァース以来6年ぶり、関東馬の2冠馬は1997年のサニーブライアン以来の18年ぶりという快挙だった。

    ドゥラメンテ

    ドゥラメンテ

    ドゥラメンテ
    ドゥラメンテ 2015年5月31日 ダービー出走時 東京競馬場

    秋は凱旋門賞や、菊花賞での3冠への挑戦が期待されたが、6月に骨折が判明。すべてのスケジュールは白紙となった。
    しかし近年は中距離レースを重視して、実績馬でも菊花賞を避ける傾向があり、堀調教師の使い方を見ても、おそらく無事であったとしても菊花賞には向かわなかったのではないかと思う。
    結局ダービーを最後に3歳シーズンは出走しなかったが、2冠を取ったこともあり最優秀3歳牡馬に選ばれた。

    4歳(2016年)

    怪我が癒えて次にドゥラメンテが出走したのは、4歳になった2016年2月の中山記念。4度目の対戦となったリアルスティールや、1歳上の皐月賞馬イスラボニータを相手に、休み明けでありながら2.1倍の1番人気となる。そして人気に応えて好位から抜け出し、クビ差で勝利を飾った。
    次走は海外に遠征してドバイシーマクラシックに参戦。残念ながら落鉄したまま走ったこともあり2馬身差の2着に敗れたが、違う環境でもきっちりと走る安定感と精神的な強さには感心させられた。

    帰国して3ヶ月の休養明けで出走したのが宝塚記念。同期の菊花賞馬にして天皇賞(春)でG1 2勝目を飾ったキタサンブラックや、宝塚記念連覇を目指すラブリーデイなどを抑えて1.9倍の圧倒的な1番人気に支持される。ただし、初の関西圏でのレースや58kgの斤量、海外帰りの影響など不安がないわけではなかった。

    キタサンブラックが逃げて作ったペースは、やや重では速めの1000m59.1。それをドゥラメンテは後方から追走する。3コーナーから徐々にポジションをあげ、4コーナー中団から直線に賭ける。逃げるキタサンブラックと先に末脚を伸ばすマリアライトをめがけて猛然と追いこむが、マリアライトにクビ差及ばずゴール。なんとか最内のキタサンブラックは交わしたものの2着までだった。
    連対を確保して、最低限のノルマは果たしたかと思ったところ、鞍上のM.デムーロ騎手が下馬して不穏な空気が流れる。その後、左前脚跛行との発表があり、大事に至らなかったかと胸をなでおろした。

    ところが数日後に衝撃のニュースが走る。靭帯や腱の損傷で競走能力喪失との診断がくだったのだった。海外帰りの疲労に加えて、やや重馬場を1番の上りで激走した影響だったのだろうか。
    4歳でG1 2勝を含む5勝で、9戦すべて連対という素晴らしい成績。まだ活躍が期待できただけに、とても残念な結末だった。

    種牡馬として

    翌2017年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたドゥラメンテだったが、キングカメハメハ×サンデーサイレンスという人気種牡馬の組み合わせという血統であり、交配できる良血牝馬が必ずしも多くない中で、初年度から多くの繁殖牝馬を集める。
    そして初年度産駒からタイトルホルダーが弥生賞ディープインパクト記念を制覇。ところが種牡馬としての名声が上がり始めた中、2021年8月31日に病気であっけなく急逝してしまう。9歳の若さだった。

    その後にタイトルホルダーは菊花賞を勝って産駒初のG1馬となり、さらに2022年には2世代目のスターズオンアースが桜花賞、オークスを勝ち2冠馬に。またタイトルホルダーも天皇賞(春)、宝塚記念を制してG1 3勝馬となり、ドゥラメンテの名をあげるとともに、早すぎる死が惜しまれることとなった。

    残された産駒は、わずか5世代だけとなったが、2023年も牝馬3冠を達成したリバティアイランド、菊花賞馬ドゥレッツァをはじめ3頭のG1馬を送り出し、その勢いは止まらない。
    ぜひ父ドゥラメンテを超えるような強い馬の出現を期待したい。