| 著者 | 小川隆行 ウマフリ | 出版社 | 星海社新書 |
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オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君 (星海社新書 327)(PR)
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2025年の時点で中央競馬の牡馬クラシック3冠馬は8頭いるが、その中でもっとも型破りな“らしくない”3冠馬はオルフェーヴルだろう。池江師もインタビューで「ディープやルドルフのような優等生でなければ三冠馬になんてなれないという意識はあったかもしれません」と語っている。
実際にオルフェーヴル以外の7頭は、すべて1冠目の皐月賞(セントライトは横浜農林省賞典四歳呼馬)を1番人気で勝っている。それに対してオルフェーヴルは4番人気での勝利。また1冠前に2桁着順に負けた経験があるのもオルフェーヴルのみ。そのため皐月賞の前にオルフェーヴルが3冠馬になることを予想した人は、ほぼいなかっただろう。
しかし強い競馬で3冠馬になっただけでなく、凱旋門賞でもっとも世界の頂点に近づいた日本調教馬になった。そんなオルフェーヴルを多角的に紹介しているのがこの本である。
オルフェーヴルの競走生活を振り返った後、一族やともに戦ったライバル、おもな産駒を1頭ずつ紹介。さらに血統や馬体、厩舎などそれぞれの角度から専門家がオルフェーヴルを分析し、最後にライターや記者が思い思いのテーマでオルフェーヴルを論じるという構成になっている。
基本的にスポーツ紙や雑誌などに掲載された記事をもとに構成されているので、目新しい内容はないかと思いきや、意外な事実が語られたりしていて驚かされたりする。
例えば、2012年の阪神大賞典で、オルフェーヴルは3コーナー手前で外ラチ沿いに大きく逸走して後方に下がってしまい、そこから盛り返して2着になるという破天荒なレースを見せた。
その理由として池江師が語ったのが、秋の凱旋門賞を見据えてそれまでの追い込みから先行脚質への転換を試したところ、自分の走るべきポジションをとれないことにいら立ったオルフェーヴルが怒って、結果として逸走したということだった。
その賢さに感心するとともに、自らの強い意思を持っているというところにオルフェーヴルらしさを感じさせられる。
またその年の凱旋門賞で、オルフェーヴルは直線でいったん大きく抜け出し勝ったと思わせたが、ゴール前でよれて失速し2着に敗れている。鞍上の名手スミヨン騎手は、帰宅後に号泣したという。いわく、生まれて初めて馬に馬鹿にされたと。
これもオルフェーヴルならではのエピソードだと思う。
種牡馬として初年度産駒からG1馬を出したものの、その後はあまりぱっとしない成績となっている。しかし執筆しているライターや記者からも、オルフェーヴルの力はこんなものではなく、世界に羽ばたくような大物産駒を送り出してくれるはずと期待する声が多い。
個人的にもその想いに賛同したいし、伝説的な馬オルフェーヴルについて語り継いでいきたいと思う。