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ノン・サラブレッド

著者 島田明宏 出版社 集英社文庫
定価 847円(税込み)    
ノン・サラブレッド (集英社文庫)

タイトルのノン・サラブレッドとは、サラブレッドではない馬、いわゆるサラ系(血統が不確かな馬、あるいはサラブレッドとアラブなどの混血でアラブ血量が25%未満の馬)のこと。
この物語のキーとなる実在の牝馬ミラは、日本競馬の黎明期、1899(明治32)年にオーストラリアから輸入された30頭のうちの1頭だったが、血統書がなかったため、サラ系とされる。しかしその競走成績は素晴らしく、さらに繁殖に入ってからは、活躍馬を多く出してその牝系を広げる。孫には初代ダービー馬のワカタカがいるほか、4代後の子孫には1971年のダービー馬ヒカルイマイがいる。
サラ系の牝馬は8世代サラブレッドを交配するとその仔馬はサラブレッドになれるが、種牡馬の場合は生まれる仔馬はすべてサラ系になる。そのためサラブレッドの牝馬をつける生産者はおらず、ダービー馬といえども不遇の生活を送ることになる。

そんなミラとその子孫の物語を背景に、1970年代と2020年代の2つを舞台とした話が、間合いを取りながら交互に繰り広げられ、最後は1つになっていく。

1970年代の主人公は厩務員の大谷晴男。東京競馬場の、叔父である松崎調教師の厩舎で働いている。そこで気性が荒く、人の言うことを聞かないが、能力は高そうなホーリーシャークという馬を担当することになる。その馬はミラの子孫のサラ系だった。
松崎調教師は不治の病で余命が限られていることを察したのか、晴男に自分の厩舎を継ぐように言う。晴男は戸惑いながら調教師になる準備も進めつつ、ホーリーシャークを一流の競走馬にするべく、クラシックを目指して懸命に面倒を見ていくことになる。

2020年代の主人公は、スポーツ新聞の競馬担当記者小林真吾。ある日匿名の男から電話がかかってきて、ミラの血統書を持っているという。事件をにおわせた後、電話は唐突に切れる。その男の言っていた日高の西ノ宮牧場を訪ねると、ちょうどその電話のあった日に、牧場主一家は借金苦から一家心中していた。
その男は誰で、何のために小林に電話してきたのか。ミラの血統書は本当に存在するのか。またそれが本物だったら、どんな影響があるのか。小林は調査と取材を進めていく。

小説だとわかっていても、つい本当にミラの血統書はあるのではと思わせるようなリアリティが感じられて、上質なミステリーとなっている。
著者は競馬関係のノンフィクションで知られる、作家の島田明宏氏。競馬関係の知識はもちろん、入念な取材に基づく事実が、本物と思わせる舞台づくりに大いに役立っていると思うが、さらにその構想力が興味深い物語を形づくっており、ぐいぐいと引き込まれる。
競馬に詳しくない人のために、専門的な事柄はわかりやすく説明がされていて、こういう方面から競馬に興味を持つ人もいるのではないだろうか。


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