今年のエリザベス女王杯の1番人気はレガレイラでした。昨年のホープフルSで強烈な末脚を見せて牡馬を差し切って勝ったシーンは、とても強い印象を与えられました。
陣営の意向で春は牡馬のクラシックに参戦したのですが、ホープフルSの記憶もあって、皐月賞は1番人気、日本ダービーは2番人気と上位の支持を得たのです。残念ながら差し届かず、前者は6着、後者は5着に敗れましたが、いずれも上りは最速を記録し、負けて強しと思わせました。
秋初戦は初めて牝馬限定戦ローズSに挑み、確勝と思われ1.7倍の1番人気に推されましたが、出遅れて後方から進めると、4コーナー最後方から1番の上りで追いこむも、2 1/4馬身差5着に敗れてしまったのです。
秋華賞は同厩舎で同馬主のチェルヴィニアに譲り、レガレイラはエリザベス女王杯に駒を進めてきました。
今年は3歳馬の出走が他にはなく、レガレイラ対古馬の対決になったのですが、その古馬の中でG1馬は1頭のみ。しかもそのスタニングローズ(9.5倍 3番人気)は、2年前の秋華賞を勝った後はスランプ状態で、6戦してすべて5着以下。
有力な前哨戦である府中牝Sを勝った昨年のエリザベス女王杯馬ブレイディヴェーグは、マイルCSを目指すために登録はなし。今年G2を勝った馬はほかになく、前走で重賞を勝ったのはG3新潟記念をハナ差で制したシンリョクカのみという、かなりレベル的に疑問のメンバーだったのです。
それもあってレガレイラは1.9倍という圧倒的な1番人気におされたのですが、とはいえ今年未勝利であるのは事実。そこで過去に1番人気でそのような馬がいたのか調べてみました。
まず過去10年の10頭についてみてみると、単勝2倍を切る圧倒的な人気に推された馬はいませんでした。その中で期待に応えて1着になったのは2頭。
まずは2020年ラッキーライラック(3.3倍)。その年にエリザベス女王杯の前に4戦して大阪杯で1着。全1・1・1・1という成績でした。
次に昨年のブレイディヴェーグ(2.4倍)。未勝利、1勝Cを勝ってローズS2着。全2・1・0・0でした。
逆にその年に未勝利だった馬も2頭。
2018年モズカッチャン(3.6倍)は札幌記念3着があるだけで全0・0・1・2。前年の勝者ということで1番人気になりましたが伸び一息で3着。
2022年デアリングタクト(4.3倍)は宝塚記念3着があったものの全0・0・1・2。前年の無敗の3冠牝馬として復活が期待されての1番人気でしたが中団から伸びずに6着。
こうして見てみると、その年に未勝利の馬は期待込みでの人気ということで、実はかなり危険だということがわかります。いずれも前年の活躍から人気になったわけですが、残念ながらそれにこたえられていないということが傾向からはわかるのです。
ではレガレイラのように2倍を切る圧倒的な人気になった場合はどうでしょうか。過去20年まで広げてみると、4頭が該当しました。
その中でその年に未勝利だったのは2008年カワカミプリンセス(1.8倍)だけでした。カワカミプリンセスはその年エリザベス女王杯の前に2戦しかしていないのですが、金鯱賞3着、府中牝S2着といずれも馬券内は確保。しかし差し届かずリトルアマポーラの1 1/2差2着と敗れています。
とはいえその4頭の内で勝ったのは2007年ダイワスカーレット(1.9倍)のみ。馬券圏外に敗れた馬はいないものの、1・2・1・0と意外と勝っていないのです。
こうして過去のエリザベス女王杯1番人気の馬の成績を振り返ると、今年のレガレイラが危険な人気馬だということは見えてきます。
しかしではほかにどの馬が勝つ可能性があるかというと、どの馬も決め手に欠けることは否めず、結局レガレイラの末脚と、それをうまく引き出してくれるだろうルメール騎手に頼るしかないというのが、多くのファンの心情だったのではないでしょうか。
レガレイラは心配されたスタートを無難に切ると中団の内につけます。逃げたコンクシェルのつくるペースは、1000m59.6と平均ペース。その中で4コーナーで早めに仕掛けたのが、C.デムーロ騎手騎乗のスタニングローズでした。直線に入るとすぐに先頭に立ちます。
対するレガレイラは馬場中央から内目を選択するも、外のハーパーと内のシンティレーションに挟まれる不利。そこをやや強引に突破(過怠金5万円)するも、いったんスピードを緩めたこともあり、残り200mで先頭のスタニングローズとは3馬身以上離されてしまいます。
結局早め先頭から脚を伸ばしたスタニングローズが、上り3位タイの末脚で2馬身突き放して1着。レガレイラは上りタイムこそスタニングローズに0.1秒劣るだけでしたが、3馬身差5着に終わりました。
スタニングローズは3歳春はフラワーC1着からオークスは10番人気で2着。秋は紫苑Sと秋華賞を連勝してG1ホースとなります。しかし続くエリザベス女王杯は2番人気で10着と敗退。その後は着外が続き、もう終わったのかと思われていました。
前走のクイーンSも9番人気で6着。57kgを背負いながらも1馬身差に粘ったとはいえ、ここまで鮮やかな復活を見せるとは思いませんでした。やはり世界を股にかけて活躍するC.デムーロ騎手の手腕も大きかったのでしょうか。
主題の1番人気の取捨ですが、残念ながら明確な傾向は見られません。しかしこんなことは言えるのではないでしょうか。
・その年に連対がない馬は疑ってかかるべき
・単勝オッズが上がるほど信頼感が落ちる傾向はある。特に3倍を超える場合は勝つ可能性はかなり低い
・エリザベス女王杯では1番人気は勝率2割、連対率4割なので、回収率を考えると本命は避けた方がよい