今年の天皇賞(秋)は3歳馬の参戦はなかったものの(残念ながらジャスティンミラノが屈腱炎で回避)、G1馬が6頭出走するという豪華メンバーとなりました。
その中で単勝1桁の人気になったのが3頭。3強という形になりました。
1番人気(2.3倍)になったのは、昨年の3冠牝馬リバティアイランド。3冠を圧倒的な強さで制した後、ジャパンCでイクイノックスの2着と好走。今年の初戦はドバイシーマCで追い込んで3着と惜敗したのですが、その後軽い脚部不安で休みに入り、7か月ぶりのレースでした。
2番人気(3.8倍)は2年前のダービー馬ドウデュース。3歳秋は凱旋門賞に挑戦するも惨敗。4歳も順調さを欠き、復帰戦の天皇賞(秋)では直前に武豊騎手が負傷したことで乗り替わったこともあり、続くジャパンCと着外に敗れます。それでも有馬記念を勝って復活をアピール。ところが5歳の今年はドバイターフ、宝塚記念と続けて着外となっていました。
3番人気(4.7倍)はこれがG1初挑戦となる4歳馬レーベンスティール。3歳春のクラシックは間に合わず、秋はセントライト記念を勝ったものの暮れの香港は8着。今年初戦の新潟記念は大敗するも、エプソムC、オールカマーと連勝して、ルメール騎手騎乗もあり人気になっていました。
個人的にも昨年のジャパンC2着のシーンと、1週前追いの5ハロン64.8、最後の1ハロン10.8の猛時計を見て、リバティアイランドを中心にせざるを得ないかと思っていました。しかし過去10年で10番から外は勝利がないにもかかわらず12番を引いてしまったことや、7か月の休み明けで昨年のジャパンCより22kgも馬体が増えていることなど、不安も多々あったのです。
ただし最終追いきりも良く、パドックも素軽い歩様でノビノビと歩き、ある程度格好はつけるだろうと思われました。
対するドウデュースは、今年結果が出ていないことが不安でしたが、宝塚記念は重馬場で得意の末脚が不発に終わったことが大きく、そこまで悲観する内容でもないと思われました。また追い切りもなかなか良く、何といってもパドックの様子が落ち着いていながら覇気が感じられ、クビを使ってきびきびと歩き、とても良く見せたのです。友道師や武騎手からも好調を伝えるコメントがあり、こちらも期待できる出来にあると思われました。
そして3番人気のレーベンスティールですが、残念ながら14番という外を引いてしまう不運。調教はなかなか良かったものの、パドックではテンション高めでツルクビで歩き、トモの送りも浅めで個人的にはあまり高く評価できませんでした。また上り馬ではありますが、G1実績がないということは、どうしてもネックになるのではないかと思いました。
3頭の中で最も好スタートを切ったのはリバティアイランド。そのまま外から上がっていって、向こう正面では3番手につけます。ドウデュースは武豊騎手が意図的に下げて後方から2番手。レーベンスティールもドウデュースのすぐ前となる後方の外。
ホウオウビスケッツのつくるペースは1000m59.9と速くなく、この時点ではリバティアイランドがはまったかと思われました。
そのまま直線を向くと、外からじわじわとリバティアイランドが伸びを見せるものの、残り200m手前で手応えを無くして失速。そのままずるずると下がっていきます。先頭のホウオウビスケッツが抜け出してまんまと逃げきったかと思わせたのですが、残り200mを切って大外から猛然と追いこんできたのがドウデュース。残り50mでホウオウビスケッツを捉えると一気に抜き去り、そのまま先頭でゴール。
ダービー、昨年の有馬記念に続いてG1 3勝目を鮮やかに勝ちとりました。上りはただ1頭33秒を切る32.5。逃げたホウオウビスケッツが3着に粘る決して速くない流れの中、ほぼ最後方から追いこんで差し切るという派手な勝ち方は、力がないとできない芸当であり、あらためてその力を示しました。
昨年は好位から失速するというレースだったのですが、やはり乗り慣れた騎手でないと、その力をうまく引き出すことが難しかったということなのでしょう。騎手との関係性の重要さを強く感じさせる勝利でもありました。
そして2着に入ったのが、昨年のダービー馬でありながら、菊花賞2着の後は昨年の有馬記念、今年の大阪杯、天皇賞(春)と惨敗を続けて9番人気(53.8倍)の低評価に甘んじていたタスティエーラ。
思えば今年の4歳馬は弱いと言われ続け、昨年の皐月賞馬のソールオリエンスとともに、半ば終わったという評価をされてきていました。しかし宝塚記念で2着に入ったソールオリエンスに続いて鮮やかに復活。もちろん2着という成績に陣営は満足していないでしょうが、ようやく力があるところを証明できたのではと思います。
そしてこの上位2頭の共通点はともにダービー馬ということ。
振り返ってみると、実は天皇賞(秋)の勝ち馬はダービーとの関係が意外と強いことがわかります。天皇賞(秋)が2000mになった1984年の勝ち馬は、前年のダービー馬であり3冠馬のミスターシービー。3冠達成後久々かつ生涯最後の勝利を、天皇賞(秋)であげたのです。
その後もスペシャルウィーク(1999年)、メイショウサムソン(2007年)、ウオッカ(2008年)、エイシンフラッシュ(2012年)、レイデオロ(2018年)、さらに今年とあわせて7頭のダービー馬が天皇賞(秋)を制しているのです。
さらにシンボリクリスエス、ゼンノロブロイ、エフフォーリア、イクイノックスといったダービー2着馬、またエアグルーヴ、ブエナビスタ、アーモンドアイといったオークス馬も勝っており、意外と東京芝2400mG1との相関が強いと言えるのではないでしょうか。
今日の10Rはメモリアルヒーローに選ばれたエイシンフラッシュの名前を冠したエイシンフラッシュカップで、レース前にエイシンフラッシュが差し切ってM.デムーロ騎手が雄叫びをあげる2012年のシーンが流れたのですが、勘が良い人ならそれを見てダービー馬から買って、好配当を手にしたかもしれません。
ところで1番人気のリバティアイランドですが、大きく期待を裏切る13着と大敗してしまいました。国内では7戦して連対を外していなかったので、ここまで負けるとは想像できませんでした。
敗因はやはり休み明けで大幅な馬体増があったことがまずは考えられるでしょうが、調教ではかなり良い動きを披露していたこともあり、太目残りとは見えず、個人的には敗因がつかめない感じです。
牝馬の中には、スティルインラブやデアリングタクトのように3歳時には強かったのに、古馬になると勝てなくなってしまう馬もいます。リバティアイランドもそんな道をたどってしまうのでしょうか。
陣営にとってはかなりショッキングな敗戦だったと思いますが、3歳時の功績が色あせるものではありません。なんとか立て直して、また強いリバティアイランドを見せてほしいと思います。