春の牝馬クラシックは、桜花賞が1着ステレンボッシュ、2着アスコリピチェーノ、オークスが1着チェルヴィニア、2着ステレンボッシュと、いずれも関東馬が連対を独占。関西馬はともに3着にライトバックが頑張っていたのですが、そのライトバックは新潟記念の出走前にハミが抜けて暴走し、坂井騎手が危険を感じて飛び降りるというアクシデントがあって、残念ながら戦線離脱してしまいます。
そしてふたを開けてみると、秋華賞出走馬15頭のうち過半数の8頭を関東馬が占め、しかも上位人気5頭のうち関西馬は3番人気のクイーンズウォーク1頭のみという、ちょっと驚くような状況になっていました。
過去10年の秋華賞の成績を見てみると、関東馬の優勝はアーモンドアイ(2018年)とアカイトリノムスメ(2021年)の2頭のみ。2着も4頭で関東馬の1,2着は2021年の1回のみ。圧倒的に関西馬が強いレースなのです。そういう意味では、とても珍しい年といえるでしょう。
ただし秋華賞は春のクラシック上位馬が強いレースではあるので、ある程度はこの状況は予想できたのですが。
2.3倍の1番人気に推されたのは、ルメール騎手と木村厩舎の黄金コンビのオークス馬チェルヴィニア。ただしオークスは1/2馬身差の辛勝で、また休み明けで唯一の右回りだった桜花賞で13着と大敗していることが懸念材料でした。しかし有力な対抗馬と目された2番人気(3.9倍)のステレンボッシュが、調教での走りが今一つだったこともあり、人気がかぶった面もあったでしょう。
そのステレンボッシュ(戸崎騎手)ですが、6戦してG1 3戦を含み連対を外しておらず、オークスも落鉄がありながら1/2馬身差なので、力があることは間違いありません。国枝師も自信のコメントを出しており、結果的にこういう馬が勝ってしまうことも珍しくないので、当然無視することはできないでしょう。
3番人気(6.8倍)のクイーンズウォーク(川田騎手)は、桜花賞8着、オークス4着と結果は出せなかったものの、クイーンC、ローズSと重賞2勝の成績からは、当然上位を狙える存在です。
さらにオークスは14着もフラワーCを勝ち紫苑Sで2着に差してきた津村騎手のミアネーロ(4番人気 13.5倍)、重賞で2着3回3着1回と勝ちきれないものの、直近でクイーンS2着、紫苑S追いこんで3着の武豊騎手のボンドガール(5番人気 14.6倍)も要注意でした。
ところがスタートでクイーンズウォークはつまずいて、ステレンボッシュはダッシュがきかず、ともに後方からになります。ステレンボッシュは最初の直線で追い上げてチェルヴィニアをマークする中団につけますが、クイーンズウォークは後方のまま。
セキトバイーストが勢いよく逃げて、藤岡騎手が懸命に抑えるも向こう正面では大逃げとなり1000m57.1のハイペース。そんな中、クイーンズウォークは向こう正面で一気に外からポジションをあげて、チェルヴィニアを見る中団につけます。
3コーナーからペースが上がると、直線残り200mでセキトバイーストは馬群に飲み込まれ、そこから勢いよく抜け出してきたのがチェルヴィニア。大外からボンドガール、内からステレンボッシュが懸命に迫るも、チェルヴィニアが1 3/4馬身差1着でゴール。
見事に2冠を制するとともに、今年前走までG1勝ちの騎手がすべて異なるという状況をようやく終わらせて、ルメール騎手が今年2勝目のG1タイトルを奪取しました。
2着は後方から外を追いこんできたボンドガール、3着は内を抜けてきたステレンボッシュと、いずれも関東馬。関東馬の1~3着独占は、2010年(1着アパパネ、2着アニメイトバイオ、3着アプリコットフィズ)以来、秋華賞史上2回目の快挙でした。
これでチェルヴィニアはG1 2勝となり、最優秀3歳牝馬の称号はほぼ確定でしょう。上り1位は34.1のボンドガールに譲ったものの、34.2で馬群から抜け出す脚は見事で、オークスからのさらなる成長を感じさせられました。このレースぶりなら、今後の古馬との対戦でも十分勝負になるでしょう。
ただ木村厩舎には、馬主も主戦騎手も同じもう1頭の3歳牝馬レガレイラがいます。春は牡馬クラシックに挑戦し、前走ローズSは思わぬ敗戦を喫しましたが、次走はエリザベス女王杯に向かうことが陣営から発表されています。ということはチェルヴィニアはエリザベス女王杯には向かわず、次走は順調ならジャパンCあたりになるのでしょうか。
しかしいつまでも使い分けとはいかず、いずれ直接対決となるかもしれませんし、どちらが強いのか見てみたい気持ちもあります。
ルメール騎手はとても悩むかもしれませんが、雌雄を決するというのが最も盛り上がる場であるのは間違いなく、興行としても大いに興味を引くと思います。ぜひ実現してもらいたいものです。