2015年にサウジアラビアロイヤルカップ(サウジRC)となる前は、いちょうステークスという名前で施行されていましたが、当時から多くのG1ホースを輩出する出世レースでした。個人的には1995年にエアグルーヴが直線で進路を外に持ち出す大きな不利がありながら、差し切って勝ったシーンが今でも印象的です。
他にもメジロドーベル、イスラボニータなどが勝っており、重賞昇格後もグランアレグリア、サリオス、ドルチェモアなどのG1ホースが生まれています。
今年はどんな馬がここを勝って来年に夢をつなげるのか、観戦しに東京競馬場へ足を運んでみました。
開幕日ではありますが、あいにく朝から小雨が降り続く天気。とはいえ雨量はそれほど多くなく、結局やや重でのレースとなりました。
最近は少頭数となることが多いのですが、今年は登録8頭で結局7頭立てと、ここ10年では2021年と並んで最も少ない頭数となりました。
1番人気は、新馬は2着に敗れたものの、新潟芝1600m未勝利を逃げて7馬身差で圧勝したアルレッキーノ。マイペースで逃げると直線はぐんぐんと後続を引き離し、1番の上りで1.33.3の好タイムでの圧勝と文句のつけようがない勝ちっぷりでした。
調教の動きも良く、パドックはクビを使って伸びやかな歩様でさっそうと歩き、トモの踏み込みも力強く、まさにいい馬の典型のような姿。ルメール騎手騎乗もあって1.5倍の圧倒的な1番人気に推されましたが、それも当然という感じでした。
ただ気になったのは、ブリックスアンドモルタル産駒の実績があまり良くないこと。母チェッキーノからは昨年のオークス馬チェルヴィニアと2年前の新潟記念勝ち馬ノッキングポイントが出て優秀なのですが、ブリックスアンドモルタル産駒のJRA重賞勝ちは、のべ14頭出走して昨年のサウジRC(ゴンバデカーブース)のみ(2024年10月6日現在)。社台グループが「サンデーサイレンスの再来」と、かなりの期待をかけている割には物足りない成績だと思います。
2番人気(3.5倍)は、札幌芝1500m新馬で好位から力強く抜け出して勝ったアルテヴェローチェ。2着ヒシアマン(サウジRCに登録はあったが回避)とはクビ差だったものの、3着馬は5馬身離し、さらにヒシアマンは1か月後の未勝利を5馬身差で圧勝と、結果的にアルテヴェローチェの強さを証明したのです。
こちらも調教の動きは良く、パドックも落ち着いてクビを使ってキビキビ歩き、トモの踏み込みも深く、アルレッキーノに負けず劣らず良く見せました。
前走の武騎手から最近活躍目覚ましい若手の佐々木騎手に乗り替わり、どのような騎乗を見せるか楽しみでした。
3番人気(7.8倍)は中京芝1400m新馬を1/2馬身差で逃げ切ったフードマン。以下、タイセイカレント(12.9倍)、マイネルチケット(13.8倍)と続きます。
この中でパドックで目についたのは、マイネルチケットでした。前走未勝利勝ちはあまりインパクトがなく、成績的には切ろうかと思っていたのですが、適度な気合乗りでクビを使ってスムーズな歩様を見せ、トモの踏み込みも力強く好印象だったのです。またタイセイカレントも雄大な馬体でなかなか良く見せました。
対してフードマンは時々暴れて厩務員さんを手こずらせており、テンションも高めであまりよく見せませんでした。
レースでは、タイセイカレントがスタートで置いていかれる形となり2馬身ほど後方。マイネルチケットとシンフォーエバーがハナ争いをしますが、結局シンフォーエバーが逃げてフードマン、マイネルチケットが続き、アルレッキーノが4番手でアルテヴェローチェはやや離れた4,5番手、タイセイカレントは最後方という展開。600mは34.0と平均ペースで流れます。
そのまま直線に向くと、逃げるシンフォーエバーにマイネルチケットが迫り2頭で抜け出します。フードマンは後退し、代わって外からアルレッキーノが迫るも伸び一息。そこに内からタイセイカレント、外からアルテヴェローチェが伸びてきて、内外離れてアルレッキーノを交わし、ゴール前ではマイネルチケットとシンフォーエバーを交わして、外のアルテヴェローチェが1着、内のタイセイカレントが1馬身差2着。最内のマイネルチケット、シンフォーエバーが1/2馬身差とアタマ差3,4着で、外からようやく伸びてきたアルレッキーノは、さらにクビ差5着まで。
アルテヴェローチェは先行各馬を見ながら後方からじっくり進めると、直線は外から追いこんできて2番の上り34.5で差し切りました。最後は余裕の脚色で、きれいに差し切っており、脚質的にも今後につながるレースぶりだったと思います。距離は母父ディープインパクトということもあり、父モーリス同様に2000mぐらいまでは持つのではないでしょうか。
2着のタイセイカレントは大型馬でスタートの反応も良くなかったのですが、内を突いて1番の上りで1馬身差2着と、見せ場たっぷりの内容でした。やや粗削りな部分もありますが、雄大な馬体の持ち主。同じモーリス産駒のアルテヴェローチェとはタイプが異なる印象ですが、成長次第では期待が持てると思います。
対するアルレッキーノは、じりじりと伸びたものの逃げ馬は捕まえられず、後ろの馬には差されて5着。圧倒的な人気には応えられませんでした。ルメール騎手も原因はよくわからないと言っていましたが、国枝師は最初の1~2ハロンでリズムを欠いて息を入れられなかったと分析していました。
前の2戦は逃げてスムーズな競馬をしていましたが、今回はルメール騎手が今後を考えて抑えたことで、馬がやる気を失った面もあるのではないかと、個人的には思います。
ただしポテンシャルは高いと思いますので、次走で巻き返せるかがカギになるでしょう。
個人的には上位2頭、特にアルテヴェローチェは要注目だと思います。次走は朝日杯FSを予定しているようですが、当然有力な1頭になるでしょう。そしてそこで好成績をおさめれば、来年の選択肢も増えてくると思います。