今年の上半期のG1は、安田記念まで勝った騎手がすべて異なるということが話題になっていました。そして最後の宝塚記念。出走13頭のうち今年G1未勝利の騎手は8名で、内JRA G1未勝利が2名。これらの騎手が勝利をおさめて快挙(?)が成し遂げられるかが注目されていましたが、見事にブローザホーンの菅原明騎手が優勝して、JRA G1初勝利を飾るとともに、上半期はすべて異なる騎手がG1を勝ったことになりました。
菅原明騎手といえばG1でも人気薄の馬を上位に持ってくることが多く、今年の大阪杯(ルージュエヴァイユ:11番人気3着)、昨年のホープフルS(サンライズジパング:13番人気3着)、2年前のNHKマイルC(カワキタレブリー:18番人気3着)などが印象的です。
今年の天皇賞(春)でのブローザホーン2着もあわせて、いつG1を勝ってもおかしくない若手騎手の1人だったといえるでしょう。
そのブローザホーンは今年になって日経新春杯で重賞初制覇を飾ると、阪神大賞典3着、天皇賞(春)2着と堅実な成績。不良の3勝C(京都芝2200m)を5馬身差で快勝していることで、重馬場得意との見込みもあり7.5倍の3番人気に支持されます。
レースでは、12番枠から無理せず後方のドウデュースのすぐ外を追走。1000m1.01.0と重としてもやや遅めの流れを感じ取ったのか、3コーナー手前から外を通ってポジションをあげていきます。4コーナーは中団外を回ると、直線は思い切って馬場の良い外ラチ沿いを選択。一気に伸びて残り150mぐらいで先頭に立つと、ゴール前では抜け出して2着ソールオリエンスに2馬身差をつける快勝でした。
大雨の中での一戦でしたが、戻ってくる菅原明騎手は白い歯を大きく見せて満面の笑顔。とてもうれしそうなのが印象的でした。
これで今年は菱田騎手(天皇賞(春):テーオーロイヤル)、津村騎手(ヴィクトリアM:テンハッピーローズ)、マクドナルド騎手(安田記念:ロマンチックウォリアー)に続く4人目のJRA G1初制覇騎手となりました。
そしてもう1つ印象的だったのが、エピファネイア産駒の強さでした。
今年上半期の平地G1 12戦のうち、エピファネイア産駒が制したのが桜花賞(ステレンボッシュ)、ヴィクトリアM(テンハッピーローズ)、日本ダービー(ダノンデサイル)に続いて宝塚記念で4勝目。実はそれ以外の8戦はすべて異なる種牡馬の産駒が勝っており、G1サイヤーという観点から見ると、エピファネイアの圧勝なのです。その距離も1600mから2400mと中心となる中長距離をしっかり押さえており、来年以降も人気になることが期待できるでしょう。
ただし入着賞金順のリーディングサイヤー(2024年6月10日時点)を見てみると、エピファネイアはキズナ、ロードカナロアに次ぐ第3位。出走頭数は上位2頭より若干少ないぐらいなのですが、勝利回数が上位2頭の半分しかないのです。つまり勝ち上がり率は低いが、その中から大物を出す種牡馬といえるのかもしれません。それはエフフォーリアやデアリングタクトの活躍を見てもうなずけるところです。
しかし以前は、エフフォーリアのように3歳時は活躍するものの、その後はしりすぼみになる馬も多かったため、産駒は早熟なのではと言われていました。テンハッピーローズやブローザホーンの活躍は、それらの声を払しょくすることにもつながるのではないでしょうか。
ところで、ブローザホーンの快挙とは対照的に、1番人気のドウデュース(2.3倍)と2番人気のジャスティンパレス(3.7倍)は6着と10着と、ともに着外に敗れてしまいました。
ジャスティンパレスはここ2戦着外に敗れており、また調教も今一つパッとしなかったので、負ける可能性もあるかとは思っていたのですが、ドウデュースは特に1週前の調教がすばらしく、武豊騎手の強気のコメントもあって、もう少しがんばるかと思っていたのですが。
ドウデュースはスタートからずっと後方を走っており、4コーナーでは内を選択。各馬が外に行ったので前は開いたのですが伸びきれませんでした。結果的に外を差してきた馬が上位を占めたので、コース取りの差が出たということなのでしょう。ただ位置取り的に外に出すことは難しかったので、枠が外だったらということは言えるかもしれません。また重馬場はあまり得意ではない印象も受けました。
ジャスティンパレスは中団内を追走し、3コーナー過ぎからポジションを上げていったものの、4コーナーではルメール騎手の手が激しく動きます。直線は内から来たドウデュースに合わせに行くものの手応えの差は大きく、最後は大きく失速してしまいました。
見たところ、体調が整わなかったのと、重馬場への適性の差もあったのではと思いました。
ドウデュースは凱旋門賞への再挑戦という話もありますが、馬場適性と叩いた方がよさそうということもあり、個人的には秋も国内専念の方が良いのではと思いますがどうでしょうか。
4年連続G1制覇という快挙にも、ぜひ秋は挑戦してほしいと思います。