2年連続で3戦無敗の皐月賞馬が誕生

今年の皐月賞は勝ってもおかしくない馬が4~5頭はいる感じで、まさに混戦模様でした。最近はトライアルからではなく、間隔をあけて臨むのがトレンドではありますが、どこからくる馬が強いのかを見極めるのが、とても難しかった印象です。

まずは昨年末のホープフルSですが、ここを勝ったのが牝馬のレガレイラで、3/4馬身差2着がシンエンペラーでした。シンエンペラーは弥生賞ディープインパクト記念でも1 1/4差2着だったので、ホープフルSと弥生賞のレベルは同等だったという判断もできます。
そして問題はレガレイラの扱いでした。ホープフルSは後方から1番の上りで差し切る強い競馬で、あのレースを見る限りは、76年ぶりの牝馬による皐月賞制覇も現実のものになるのではと思わせました。

しかし引っかかったのは、76年も牝馬が勝っていないという事実でもあったのです。そして個人的にも記憶に新しいのが、2017年のファンディーナの存在でした。
ファンディーナは牝馬ながら新馬戦を9馬身差で圧勝すると、3連勝でG3フラワーCを制覇。その着差が5馬身差ということで大いに話題となり、しかも勢いに乗って皐月賞に挑戦してきたのです。この時は2.4倍の1番人気というかなりの支持を受けました。
しかし個人的にはあまり評価していなかったのです。その根拠として、年明け3戦の厳しいローテーションや、先行しての楽勝ばかりでもまれた経験がないこと、3戦全勝馬の成績が振るわないことなどもありましたが、やはり牡馬の迫力というか圧力のようなものが、かなり影響するのではと思ったのです。それはダンスパートナーの菊花賞(1995年に4.9倍の1番人気で5着)の時にも感じたのですが、3歳牝馬にとって牡馬の圧力は想像以上に大きいと思われたのです。

もちろんウオッカのようにそれをはねのけてダービーを勝ったり、3歳でJCを勝ったジェンティルドンナのような牝馬もいましたが、むしろそれは例外でしょう。
そしてレガレイラに感じた不安は現実のものとなり、後方から1位タイの上りで追いこんできたものの、0.5秒差6着に終わりました。
パドックでは最後を歩くなど陣営も気を使っていましたが、スタートで挟まれると下がってしまい、道中も後方を追走すると、直線も前走ほどは気迫を感じさせない走りで追い込み切れませんでした。
ドバイで負傷したルメール騎手から北村宏騎手に乗り替わった影響もあったでしょうが、北村宏騎手は普段調教をつけてよく知っていたはずなので、着順に大きく響くということはなかったと思います。

そして勝ったのは、共同通信杯の勝ち馬ジャスティンミラノでした。デビューから3連勝での皐月賞制覇は、昨年のソールオリエンスに続く最少キャリアでの勝利タイ記録。2年前2着のイクイノックスとあわせて、3年連続キャリア3戦目での連対馬が生まれたことになります。

その共同通信杯は実際に見に行ったのですが、実は当初ジャスティンミラノの勝利はあまり評価していませんでした。それは1000m通過1.02.6の超スローペースを先行しての勝利で、展開に恵まれた感じが強く、皐月賞とは直結しないと感じられたからです。
しかも調教は良かったものの、パドックでの気配は今一つで、トモの送りもスムーズさに欠ける感じに見えたのです。

しかしそのレース内容を見直してみると、スタートが今一つだったこともあり2番手につけるまでに脚を使っており、しかもスローペースにも掛かることなく折り合い、最後は32.6と究極の上りを使って2歳王者ジャンタルマンタルに1 1/2馬身という差をつけて勝っているのです。
これは展開に恵まれたというよりも、しっかりと力を見せて勝ちきったといえる内容だったと思えました。
また今回のパドックでの様子も、共同通信杯よりはトモの踏み込みもしっかりしている印象で、良くなっていると思いました。
とはいえデビューから2戦はいずれも東京のレースを使っており、初めての右回りかつ小回りコースにキャリア2戦で対応できるかという不安はあり、本命視まではできませんでした。

【ジャスティンミラノ】のびやかな歩様でトモの踏み込みも力強く調子良さそうに見えました

しかしジャスティンミラノは好スタートからスムーズに好位の外につけると、1000m57.5のハイペースということもあり、しっかりと折り合って流れに乗り、4コーナーで早めに先団につけると、直線は先に抜け出したジャンタルマンタルめがけて一気に末脚を発揮します。
いったんはジャンタルマンタルが差をつけて決まったかと思われたのですが、坂を上って外から来たコスモキュランダに迫られると、馬体を合わせてもうひと伸び。ゴール直前でジャンタルマンタルをかわすと、コスモキュランダの猛追をクビ差抑えて、1.57.1のレコードでの戴冠となりました。

【ジャスティンミラノ】ジャンタルマンタルをかわすとコスモキュランダの猛追を抑えて1冠を獲得しました
【ジャスティンミラノ】関係者のいろいろな想いがつまった勝利でした

ジャスティンミラノについては、話題になっていたことがありました。それは4/10に落馬事故で亡くなった藤岡康太騎手が、1週前追い切りまで調教をつけていたことでした。好調を伝える藤岡康騎手のコメントも目にしましたし、騎乗した戸崎騎手は落馬事故の直前に阪神競馬場で藤岡康騎手にジャスティンミラノについて話を聞いていたということで、ショックも大きかったでしょう。
管理する友道師は藤岡康騎手に調教を手伝ってもらうことが多かったそうで、直線は「康太、康太」と叫んでいたとのこと。下馬した戸崎騎手を抱きかかえるようにして何か話していましたが、いろいろこみ上げる思いがあったのでしょう。
そういう関係者の想いが、ジャスティンミラノを後押ししたように思えた勝利でした。

これでダービーに向けて最も重要な前哨戦が終わったわけですが、なかなか悩ましい状況だと思います。
当然上位の2頭はダービー馬候補としてあげられるべきでしょう。しかしキャリア3戦目で皐月賞で連対した近2年の2頭はダービーで2着まで。また新馬戦で4.6秒差12着に敗れ、すでにキャリア8戦となるコスモキュランダも、ダービー馬となるには異例の経歴です。さらに2頭とも驚異的なレコードタイムで走った影響も懸念されます。
3着のジャンタルマンタルは距離的に厳しいと思われ、NHKマイルCの方があっている印象。4着アーバンシックは東京でこそのタイプで、たたいて良化も見込まれるものの、そこまでの強さは感じられません。また5着シンエンペラーも伸び一息で、まだまだこれからという感じ。
6着レガレイラは1番の上りで力の片りんは見せたと思いますが、順当ならオークスに向かうのではないでしょうか。

一応上位2頭がダービーでは最有力ではありますが、負けた馬たちの今後の成長や、別路線からの馬たちにも注目が必要と思われます。1か月半後にどのような結果を目にすることになるでしょうか。

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