本当に価値のある勝利でした ~宝塚記念

宝塚記念といえば上半期最後で疲れが残っている馬も多く、梅雨時期で馬場状態も不安定ということで、なかなか一筋縄ではいかない印象があります。
そんな宝塚記念を今年制したのは、天皇賞(春)を7馬身差で勝った2番人気のタイトルホルダーでした。

タイトルホルダーの強さはわかっていましたが、個人的には本命にできませんでした。それはやはり前走で天皇賞(春)を勝った馬の成績が良くないということが大きかったのです。
1番記憶に残っているのは、2017年のキタサンブラックでした。この年、キタサンブラックは大阪杯、天皇賞(春)と中長距離両方のG1を連勝して宝塚記念に臨み、その単勝オッズは1.4倍の圧倒的な1番人気。ここまでダービー以外は4着以下になったことがないという安定した成績もあり、まず負けないだろうと思っていました。ところが2番手で直線に向くと、いつもの伸びがなくずるずると後退していき、生涯2度目にして最後の着外となる9着。
天皇賞(春)を勝つことが、いかに大変で、そのあとにダメージを残すかを、思い知らされました。

過去10年で天皇賞(春)の勝ち馬は5頭が宝塚記念に出走していますが、2016年キタサンブラックの3着が最高であとは着外。1984年のグレード制導入以降、天皇賞(春)と宝塚記念を連勝した馬は6頭いますが、最後は2006年のディープインパクト。逆にそれぐらい強い馬でないと、連勝はできないということなのでしょう。

ところが、タイトルホルダーは好スタートを切ると、押していったんはハナに立つものの、パンサラッサが来ると行かせて、やや離れた2番手を追走します。周りに馬がおらず、実質逃げているような状況でリラックスした走りを見せると、4コーナー手前からパンサラッサに詰め寄っていき、直線に入ると交わして先頭。
そのまま後続を突き放し、最後は1番の上りで差してきたヒシイグアスに2馬身差をつける勝利。昨年の菊花賞とあわせて、3つ目のG1獲得となりました。鞍上の横山和騎手も、冷静な騎乗で天皇賞(春)に続く2つ目のG1勝利となり、祖父横山富雄元騎手、父横山典弘騎手に続く史上初の親子3代制覇となったのです。

実はこの勝利は、タイトルホルダーにとって、とても価値のあるものでした。その理由は下記です。
1.中距離G1をレコードタイムで制した
2.天皇賞(春)から連勝
3.逃げなくてもG1を勝てることを示した
4.先行しながら上りは最速馬と0.2秒差

1.中距離G1をレコードタイムで制した
タイトルホルダーと言えば、弥生賞を勝ち、皐月賞で2着に入るなど、昨年春のクラシック路線でも活躍しましたが、G1勝利が菊花賞、天皇賞(春)ということで、長距離が得意というイメージが強かったのも事実です。しかし今回2200mのG1を、しかもレコードタイムで勝ったことで、中距離に対応できる一流のスピードを持っていることを証明できたのです。

2.天皇賞(春)から連勝
これは先ほど紹介したように、グレード制導入以後、わずか6頭しか達成していません。それはタマモクロス(1988年)、イナリワン(1989年)、ビワハヤヒデ(1994年)、テイエムオペラオー(2000年)、ヒシミラクル(2003年)、ディープインパクト(2006年)。
これらの名馬に並ぶ成績を上げただけでなく、メジロマックイーン、ゴールドシップやキタサンブラックなどの実力馬が成し遂げられなかったことを実現できたのです。

3.逃げなくてもG1を勝てることを示した
G1 2勝をともに逃げて勝っているタイトルホルダーの今回の注目点は、速いスピードで逃げるパンサラッサとの兼ね合いでした。そのスピードに付き合ってしまうと、共倒れの懸念もあったのです。しかし2番手で折り合うと、距離不安のあるパンサラッサを早々と交わして完勝。展開面に不安がないことを証明しました。

4.先行しながら上りは最速馬と0.2秒差
逃げ先行馬は、前に行ってどこまで粘れるかというレースづくりが多いのですが、今回2番手から進めたタイトルホルダーの上り36.1は、中団から最速の上りで差してきたヒシイグアスの35.9とわずか0.2秒差。テンも上りも速いという、まさにサラブレッドの理想を体現するようなレースをG1で見せたのですから、その価値はかなり大きいと言えるでしょう。

タイトルホルダーは、秋は凱旋門賞に挑戦するという話もあります。
先行脚質で重馬場も苦にせず、長距離をこなすスタミナと、中距離をこなすスピードを持っていることも証明されたので、意外とおもしろいのではないかと個人的には思います。秋のさらなる飛躍を期待したいところです。

ところで、これで上半期のG1はすべて終了しましたが、ついに1番人気が1勝もできませんでした。これはグレード制導入後の新記録とのこと。いつまでこの記録は続くのでしょう。
そして今日の1番人気はエフフォーリア。1週前追いきりでは不調が伝えられたこともあり、予想オッズではタイトルホルダーが1番人気ではとも言われていたのですが、最終追いきりでブリンカーをつけて気迫あふれる動きを見せたこともあり、大阪杯の大敗にもかかわらず人気も復活しました。

しかし道中は中団後方を追走すると、4コーナー手前から横山武騎手の手が激しく動くものの伸び一息。それでも最後は伸びてきて、5着マイネルファンロンとはハナ差の6着に入りました。大阪杯ほどの負け方ではないものの、去年の活躍を考えると、まだまだ本調子とは言えない状況。
ぜひ秋以降の復活を期待したいと思います。

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