2強の評価と勝因、敗因 ~宝塚記念

今年の宝塚記念は、大阪杯のメンバーに天皇賞(春)上位組と海外帰りのクロノジェネシスとラヴズオンリーユーが加われば、かなり豪華メンバーになるのではと思われていましたが、デアリングタクトは怪我で、コントレイルは体調が整わず、いずれも回避となり、結局13頭という少しさみしいメンバー構成となってしまいました。
そんな中で人気になったのが、クロノジェネシス、レイパパレ、カレンブーケドールの牝馬3頭。ここ数年続く牝馬の時代を象徴するような状況でした。

1番人気になったのが、昨年の宝塚記念を6馬身差で圧勝し、有馬記念も勝って、宝塚記念連覇とグランプリ3連覇を狙って出走してきたクロノジェネシス。前走ドバイシーマクラシックはクビ差2着と惜敗しましたが、それ以来3か月ぶりのレースでした。

個人的にはクロノジェネシスは2歳時から追いかけていることもあり、今回も中心になると考えていましたが、メディアやインターネットではいくつかの不安要素があげられていました。それはまとめてみるとこんなことだったと思います。
・ドバイ遠征帰りの馬が勝っていない
・ルメール騎手は宝塚記念で一度も3着以内に来たことがない
・クロノジェネシスは気性的に難しくテン乗りで乗りこなせるか
・良馬場ではスピードや切れに勝る馬たちに勝てない

確かに前走ドバイからのローテーションでは、2013年ジェンティルドンナが1番人気3着、2016年ドゥラメンテが1番人気2着、2019年スワーヴリチャードが6番人気3着と、いずれも勝てていません。
またルメール騎手も過去6回騎乗してすべて4着以下。しかも2018年サトノダイヤモンド:1番人気6着、2020年サートゥルナーリア:1番人気4着など、6回中4回が1,2番人気であったにも関わらずです。さらに阪神芝2200mの成績を見ても、過去5年で勝率15.0%、連対率25.0%と、川田騎手の勝率32.4%、連対率41.2%に比べるとかなり落ちるイメージ。
ただしドバイ帰りの馬たちは、勝てないまでも好走はしています。ルメール騎手の過去の騎乗馬もやや人気過剰だった気はしますし、この条件が苦手という積極的な理由も思い当たりません。またルメール騎手ほどの実績があれば、テン乗りの心配もないでしょう。
さらにクロノジェネシスといえば血統面や昨年の宝塚記念のイメージから、重馬場など時計のかかる馬場でこそと思われていますが、昨年の天皇賞(秋)では1.57.9の好タイムでアーモンドアイの3/4差3着に好走していますし、この時の上りがフィエールマンに0.1秒劣るものの、32.8で堂々の2位。展開のあやでフィエールマンにはクビ差負けましたが、これを見る限り、良馬場がマイナスとはとても思えないのです。

対するレイパパレは、デビューから負けなしで底を見せていないとはいえ、大阪杯までは半信半疑という感じもありました。そのため大阪杯では4番人気という評価だったのですが、コントレイルやグランアレグリア、デアリングタクト相手に4馬身差で逃げ切るという強い競馬を見せて、一躍スターダムにのし上がったのです。しかも重馬場でのパフォーマンスということもあり、時計のかかる馬場となることが多い宝塚記念は、舞台的に合うと思われました。
しかし個人的にはいくつか不安もあると思っていました。
・前向きな気性ゆえに未経験の2200mという距離がどうか
・過去ディープインパクト産駒は1・2・3・23と苦戦している

特に距離については、川田騎手もインタビューでチャレンジだと話していましたが、200mとはいえ意外と馬鹿にできないのです。またディープインパクト産駒は本質的にスピードと切れで勝負するイメージで、それが時計がかかる馬場になることが多い宝塚記念での不振の一因とも思われます。レイパパレ自身も重で勝っているとはいえ、良馬場の方が力を出せると思われたのです。

レースでは、レイパパレが逃げると思っていたのですが、川田騎手はスタート後に抑えて、内のユニコーンライオンを行かせようとします。しかもユニコーンライオンとは意図的に馬体を離すようにしており、折り合いにかなり気を使っていることが伺えました。
結局ユニコーンライオンがスローで逃げて、レイパパレは慎重にやや離れた2番手を追走。クロノジェネシスは最初は3番手につけますが、外からキセキが来ると行かせて、4,5番手でレイパパレを2馬身差でマークする位置につけます。
直線に入り、懸命に逃げ込みを図るユニコーンライオンに外からレイパパレが並びかけ、残り200m手前でいったんアタマ差ほど前に出ますが、そこから伸びがなく、内のユニコーンライオンと並んでたたき合いに。そこに馬場の3分どころで脚を伸ばしてきたクロノジェネシスが迫り、残り100mで内の2頭をまとめて交わして先頭に立つと、あとは一気に差を広げて2 1/2馬身差で1着。一方のレイパパレはゴール直前でユニコーンライオンに差し返されて、クビ差及ばず3着。

クロノジェネシスは、重馬場だった昨年ほどの差はつけられませんでしたが、良馬場で2 1/2馬身差は完勝と言えるでしょう。上りもメンバー最速の34.4で差し切り、結局良馬場でも期待通りの強さを見せてくれました。タイムもオルフェーヴルやリスグラシューと遜色なく、現役ではトップクラスと言えるでしょう。
これでG1は4勝目となり、獲得賞金も10億円を突破。これは牝馬ではウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイに次ぐもので、名馬の仲間入りと言えます。
また秋は凱旋門賞を目指すという話もあり、距離も馬場も問わず、遠征も問題ないという精神的な強さも持っており、かなり期待できるのではないかと思います。

一方レイパパレは、終始川田騎手が折り合いに気を使っており、やはり前向きな気性から距離不安が大きかったのでしょう。2000mで抜け出しを図るものの、そこから伸び一息で、最後はユニコーンライオンに差し返されてしまいました。あのレースぶりを見る限り、やはり適距離は1800~2000mだと思われます。また持ちタイムも上りも、まだまだというのが実態。
ただし鉄砲実績あるとはいえ、今回3か月の休み明けで、また馬体重も+10kgとまだ成長中というイメージ。夏を超えて気性的にも肉体的にも成長すれば、もっとやれる可能性は高いと思います。
無敗でG1を制した実績は、今回の敗戦で色あせるものではなく、秋以降の好走を期待したいと思います。

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