歴史は繰り返す ~安田記念

昨年の安田記念は、ヴィクトリアMを4馬身差で快勝したアーモンドアイが、1.3倍の圧倒的1番人気で臨むものの、先に抜け出したグランアレグリアに2 1/2馬身差の2着に敗れました。
そして今年、そのグランアレグリアがヴィクトリアMを4馬身差で勝って、1.5倍の1番人気で安田記念連覇を狙って出走してきたのです。まさに昨年と同じ状況を、逆の立場で迎えることになりました。

個人的にもグランアレグリアを中心に考えていましたが、昨年のアーモンドアイと同じように2着に負けることは、かなりの確率で想定していました。その理由としては、やはりヴィクトリアMからの中2週というローテーションが大きかったのです。
アーモンドアイはレース後は熱中症のような症状を示すことが多く、かなり間隔をあけて使ってきて、それが昨年の安田記念で初めて中2週でレースに出走したのですが、同じくグランアレグリアも間隔をあけて使われてきていました。最短が桜花賞からNHKマイルCの中3週で、このときは4位入線で5着降着となっています。
古馬になって精神的に落ち着いてきたとはいえ、厳しいG1レースを中2週で使う負担は、精神的にも肉体的にも決して軽くはないと思うのです。しかもグランアレグリアは今年の初戦で重の大阪杯を激走し、4着に敗れています。その影響も危惧されました。

レースでは、グランアレグリアはスタートは5分で出たものの、ポジションを下げて3コーナーでは後ろから4番手の位置。ルメール騎手も促しているようですが、上がっていく気配は見えません。どうも行きっぷりが悪いと心配が募ります。
そのまま後方から4番手で直線に向きますが、前は馬群が密集しています。やや外目に出すものの、昨年や前走のような伸びはなく、これはダメかと思ったところ、残り200m手前からようやくエンジンがかかり進出開始。馬群の真ん中に突っ込んでいきます。前を行くトーラスジェミニとインディチャンプの間を突くと、残り100mを切って外のインディチャンプを交わして先頭。
これは連覇なったかと思われたところ、離れた外からダノンキングリーが同じような伸びを見せて並びかけてきます。最後は内外離れて同時にゴール。しかしスローで見るまでもなく、ダノンキングリーがアタマ差前に出ていました。

予感は当たって、グランアレグリアは惜しい2着となり、昨年のアーモンドアイと同じ結果となってしまいました。自身がやったことをやり返された形で、まさに歴史は繰り返すを地でいったという感じでしょうか。
しかし直線坂下までは大敗もあるかというような状況の中、馬群を割って伸びてきた脚は、さすがと思わせるものでした。負けて強しというのは、まさにこのようなことを言うのでしょう。

そして勝ったダノンキングリー。3歳時は皐月賞3着、ダービー2着と惜敗し、秋は毎日王冠を快勝して中距離ならG1も夢ではないと思われました。しかし天皇賞(秋)に向かうのかと思いきや、マイル路線を選択しマイルCSへ。2番人気に支持されるものの5着に敗れてしまいます。
4歳になって中山記念を勝ち、大阪杯では1番人気になるも逃げて3着。その後、安田記念7着、天皇賞(秋)12着と凡走を繰り返し、半ば忘れられた存在となっていました。

今回7か月ぶりの出走となったのですが、すでに過去の馬という感じで単勝47.6倍の8番人気。個人的にも予想に当たっては、さすがにないかと当初は外していました。しかし調教の良さとパドックの気配、さらに川田騎手への乗り替わりも気になり、3歳時に応援していたことも思い出して少し押さえたのですが、それがラッキーでした。

ダノンキングリーを軽視した理由として、近走の成績のほかに、ディープインパクト産駒の古馬になってからのG1での不振ということもありました。
ディープインパクト産駒のG1成績を見てみると、3歳時の活躍が圧倒的に多く、特に牡馬は古馬になってから頭打ちになる馬が多いのです。JRAの平地G1をディープインパクト産駒は、今日の安田記念を入れて64勝していますが、その内4歳以上の牡馬によるものは、わずかに10勝のみ。しかも複数勝っているのはフィエールマン(天皇賞(春)2019年、2020年)ただ1頭。牝馬ではジェンティルドンナやグランアレグリアなどが活躍していますが、それに比べると牡馬は残念な状況なのです。

ダノンキングリーは悲願のG1制覇となったわけですが、ディープインパクト産駒の古馬牡馬の尻すぼみの歴史を繰り返さないよう、フィエールマンに続く牡馬による古馬G1 2勝目を狙って、ぜひ秋に向けて頑張ってほしいものです。

【ダノンキングリー】気合乗りよく、力強い歩様は休み明けを感じさせません
【グランアレグリア】落ち着いていながら適度な気合で前走と変わらずよく見せました
【ダノンキングリー】川田騎手は初騎乗ながら良さを引き出し初G1制覇に導きました

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