今年の3月19日に、マイネルでおなじみのラフィアン前社長でビッグレッドファームグループ代表だった岡田繁幸氏が亡くなりました。その報に接したM.デムーロ騎手が、ユーバーレーベンでオークスを勝つところを岡田氏に見てほしかったとコメントしていたのですが、それが今日現実のものとなりました。
有言実行のM.デムーロ騎手はもちろん、その想いで一体となった陣営の努力の賜物と言えるでしょう。
2年前の夏に馬産地巡りをした際にビッグレッドファームも訪れているのですが、ほかのスタッドとは異なり、広い敷地に馬たちが放牧されているのが印象的でした。
繋養されている種牡馬の数は多くないのですが、その中の2頭がゴールドシップとロージズインメイでした。
ゴールドシップは、共同通信杯からうれしい思いや悔しい思いをいろいろさせてもらった印象深い馬ですが、やや難しい気性や、菊花賞や天皇賞(春)など長めの距離に良績があることから、正直種牡馬としてはどうなのかという想いがありました。血統的にもステイゴールド×メジロマックイーンと、スピードというよりもスタミナのイメージで、今のトレンドには合わない感じもあったのです。
しかし初年度産駒が札幌2歳Sでいきなりワン・ツーフィニッシュを飾るという幸先良い滑り出しで、良い意味で期待を裏切られたのです。
ところが産駒の重賞勝利は、その札幌2歳Sのブラックホールだけで、その後はあまり活躍馬も出ず、やはり厳しいかと思っていました。
そんな中で迎えた今年のオークス。ユーバーレーベンの馬柱を見て、父ゴールドシップ、母父ロージズインメイとまさにビッグレッドファームゆかりの血筋だということに気づきました。ロージズインメイはアメリカ産馬(2005年ドバイWC優勝)で現役時代のなじみはないのですが、まさに季節的にもオークスにぴったりの名前で、終わってみればなるほどと思わせます。
ユーバーレーベン自身は、重賞で好走は続けていたものの、2着1回、3着3回ともどかしい成績で未勝利。しかし今日は中団外から長く脚を使うと、アカイトリノムスメに1馬身差をつける強い勝ち方。初重賞勝利をG1で飾るとともに、父ゴールドシップにG1制覇の勲章を贈ることができました。
比較的長めの距離で実績を積んできたこともあり、桜花賞は見送ってオークスに賭けたのですが、その見立てが正しかったことが証明できました。今後も2000m以上で活躍が見込めると思いますし、先輩のオークス馬アーモンドアイやラブズオンリーユーに続く海外での重賞制覇も期待できるのではないでしょうか。
対して1.9倍の1番人気を裏切ってしまったのが、ここまで負けなしの5連勝で、白毛馬として初めてクラシックを勝って話題となったソダシ。いつもどおり先行して、直線に入って残り400mぐらいでは伸びるかと思わせたのですが、残り200mで外からユーバーレーベンに交わされるとずるずると後退。最後まで粘りは見せたものの、0.6秒差8着に終わりました。
スタート直後はやや行きたがるそぶりを見せ、2コーナーでは前をカットされる不利を受けながらも、向こう正面は吉田隼騎手が懸命に抑えて、なんとか我慢が出来ているように見えたのですが。
クロフネ産駒は2000m以上の平地重賞を勝っていないという事実が重くのしかかったのか、やはり敗因は距離が大きいように思えます。3歳春は距離適性よりも完成度とは言われるのですが、本質的な適性はごまかせなかった印象です。
ただし5連勝の内容はすばらしいものですし、何といっても最後に並びかけられても負けないという気持ちの強さは、称賛されるべきだと思います。今後は適距離のマイル前後で活躍してくれることを願いたいと思います。