完全に傾向が変わったと言えるでしょう ~桜花賞

かつての桜花賞といえば、とりあえず前哨戦のチューリップ賞を分析して、そこから一番強いと思われる馬を中心に予想を組み立てるというのが定石でした。しかしその傾向は完全に変わったと言えるでしょう。

きっかけは、やはり3年前のアーモンドアイ。それまでの常識だったトライアルを使わず、1月のシンザン記念からのぶっつけというローテーションで、チューリップ賞を制して1番人気だったラッキーライラックに完勝しました。
翌2019年は朝日杯FS4着からグランアレグリアが勝ち、昨年はエルフィンSからの2戦2勝でデアリングタクトが制しました。
過去10年でチューリップ賞組は5勝しているものの、桜花賞を勝ったのは2016年のジュエラーが最後。それでもこの4年、2着は前走チューリップ賞の馬が入り、なんとかトライアルの面目は保っていたのですが、今年は1頭も掲示板に乗らないという結果に終わりました。

今年桜花賞を制したのは、前走阪神JFを勝ち、デビュー4連勝で臨んだ白毛馬の2番人気ソダシ。阪神JFの時は白毛馬初のJRA G1制覇と騒がれましたが、今回は白毛馬初のクラシック制覇となりました。しかも従来のグランアレグリアのレコードを1.6秒も更新する1.31.1という驚異的なタイムでの優勝。意外と言ってはG1馬に失礼ですが、スピードや速い上りを使うイメージがなかったこともあり、あらためてその強さに驚かされました。
レースでは、1000m34.1と近年ではかなり早めのペースをラチ沿いで先行し、直線は外目に持ち出して残り200m手前で先頭に立つと、一気に後続を突き放します。ファインルージュ、アカイトリノムスメがじりじりと差を詰め、最後は大外から1番人気のサトノレイナスが鋭い末脚で差してくるも、クビ差抑えての戴冠となりました。

ソダシは前日からずっと1番人気に支持されました。戦績を見ると、デビューから4連勝で、札幌3歳S、アルテミスS、阪神JFと一気にG1まで制する文句ない成績。普通に考えると圧倒的な1番人気に支持されてもおかしくないのですが、レース直前に3.6倍の2番人気に落ちてしまいます。
代わって1番人気になったのは、阪神JF2着から臨んだサトノレイナス。実は個人的にもこちらを中心に考えていました。その理由は次のようなものがあったと思います。

1.阪神JFの2頭を見ると逆転が濃厚ではと思える
阪神JFでは先に抜け出したソダシに、内からサトノレイナスが差してくるという、内外は違うものの、桜花賞と同じようなゴール前でした。しかしソダシの上り34.2に対してサトノレイナスの上りは33.9。いったんサトノレイナスが前に出るシーンもあり、最後はソダシがハナ差で勝ったものの、ペースが上がる今回はサトノレイナスの差しが決まる可能性が高いと思えます。

2.桜花賞はディープインパクト産駒が圧倒的に強い
過去10年でディープインパクト産駒は5勝と他を圧倒。その代表格であるサトノレイナスは末脚もよく、桜花賞に合致しているイメージです。対するソダシの父クロフネの産駒は、ホエールキャプチャの2着が最高と桜花賞は未勝利。ダートや芝短距離に強いイメージで、血統的にもサトノレイナスに軍配が上がる感じです。

3.ルメール騎手がサトノレイナスを選んだ
ルメール騎手は今年のリーディングを独走しており、桜花賞もアーモンドアイ、グランアレグリアと2年連続で勝っています。そのルメール騎手が、前走で勝ったファインルージュ(フェアリーS)やソングライン(紅梅S)ではなく、阪神JF2着のサトノレイナスを選んだということは、かなり期待が持てると見ているのでしょう。また追い切り後のコメントからも、今回は勝てるという、かなりの自信が伝わってきました。
対するソダシの吉田隼騎手は、現在関東のリーディング1位とはいえ、先週時点でルメール騎手とは30勝近い差があり、クラシックも未勝利。そのあたりも影響したでしょう。

これらの不利と思われるさまざまな要素を跳ね返し、ソダシは桜花賞馬になったのですが、次のオークスはまた頭を悩ませることになりそうです。
ソダシの上り33.8に対して、サトノレイナスの上りは32.9と1秒近く早く、次の直線の長い東京ではサトノレイナスの方があきらかに適性が高そうです。またサトノレイナスはスタート一息で後方から進めたこともあり、直線で行き場をなくして外に持ち出すシーンがありました。スムーズならもっと差は縮まったでしょう。
しかしソダシも東京ではアルテミスSを勝っており、馬場適性は決して負けていません。

果たしてソダシが昨年のデアリングタクトに続いて無敗の2冠馬になるのか、それともサトノレイナスや、桜花賞で好走したファインルージュ、アカイトリノムスメなど、ほかの馬たちが雪辱を果たすのか。また興味深い戦いが続きます。

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