またダービー馬が亡くなりました ~ネオユニヴァース

先日ジャングルポケットの訃報を聞いたばかりなのに、また1頭ダービー馬が旅立ちました。2003年の皐月賞、ダービーの2冠馬ネオユニヴァースです。今年で21歳でしたが、まだまだ元気だった様子なのに。
3/8に今年最初の種付で、牝馬が暴れた際に転倒して骨折し、安楽死処分になったとのこと。人工授精が認められていないサラブレッドでは、まれに起こる事故ですが、とても残念です。

サンデーサイレンス産駒として5頭目のダービー馬になったネオユニヴァースは、初年度産駒でダービーを勝ったタヤスツヨシから8年後の誕生。同世代にはスティルインラブ、アドマイヤグルーヴ、ゼンノロブロイ、オレハマッテルゼ、ヘヴンリーロマンスなどのG1馬がいて、まさにサンデーサイレンス産駒の最盛期を代表する1頭と言えるでしょう。

ネオユニヴァースがデビューしたのは、2歳の2002年11月9日京都芝1400m新馬戦。福永騎手を鞍上に、2番手から抜け出すと、1 1/2馬身差で危なげなく初勝利をあげます。
2戦目の中京2歳Sこそ3着に敗れますが、そこから500万下、きさらぎ賞、スプリングSと重賞2勝を含む3連勝。一躍クラシックの有力候補になります。
そして1番人気で臨んだ皐月賞。スプリングSからコンビを組むM.デムーロ騎手は1999年の初来日以来毎年のように日本で騎乗するようになっていましたが、この時点ではG1勝ちは無し。人気馬への騎乗ということで、心中期すものがあったでしょう。
レースはスローな流れの中、中団の内でじっくりと構えると、直線はやや外に出して馬群の狭いところを一気に抜けます。そして外から差してきた2番人気サクラプレジデントと馬体を合わせて壮絶な追い比べ。最後はアタマ差抜け出してG1初制覇を飾ります。ゴール後、興奮したM.デムーロ騎手は何度もガッツポーズを繰り返すと、並走していたサクラプレジデントの田中勝騎手の頭を叩きます。思わず周りからも笑いが起きました。
田中勝騎手にしてみれば、負けてがっくりしているところに追い打ちなのでたまらないでしょうが、その明るいキャラクターゆえに許されるのではないでしょうか。ユーモラスなシーンとして、今も印象に強く残っています。

そして続くダービーでも1番人気に支持されたネオユニヴァース。重馬場の中、外の7枠13番から好スタートを決めると、下げて後方の内を追走。3コーナー過ぎから、荒れた内を避けて外を回る各馬をしり目に、内からするするとポジションを上げると、直線では馬場の中央から一気に伸びます。最後は、追いすがるゼンノロブロイ、ザッツザプレンティを抑えて2冠達成。M.デムーロ騎手は、日本ダービーを勝った初めての外国人騎手となりました。

しかし3冠を目指すネオユニヴァースに、大きな問題が持ち上がります。当時短期免許による外国人騎手の騎乗が認められるのは、1年のうち3か月まで。しかしM.デムーロ騎手は春だけで3か月を使い切ってしまっていたのです。本来であれば秋は騎乗できないのですが、ここでJRAが粋な計らいを行います。ルールを変更して、短期免許の騎手がその年に同一馬でG1を2勝以上している場合、その馬がその年に出走するG1の日に騎乗できるようにしたのです。
このルールは、2019年の有馬記念でリスグラシューにレーン騎手が騎乗する際にも適用されましたが、いずれも大きな話題となり、競馬を盛り上げる役に立っていると思います。

その後、宝塚記念4着、神戸新聞杯3着とやや精彩を欠く成績ながら、菊花賞では1番人気に推され、3冠制覇を期待されました。17枠から出走したネオユニヴァースは、スローながら縦長の展開の中、後方を追走。向こう正面でポジションを上げていき、4コーナーでは先に抜け出したザッツザプレンティに外から馬なりで並びかけます。直線に入ると、2頭の追い比べとなり、直線半ばではネオユニヴァースが交わすかという勢いでしたが、残り200mを切ってからは逆にザッツザプレンティに突き放されます。最後は後方から追い込んできたリンカーンにも交わされて3着。3冠は夢に終わりました。

その後、重馬場のJCはタップダンスシチーから離された4着に終わり、翌2004年に4歳初戦の産経大阪杯(当時G2)は勝ったものの、2番人気の天皇賞(春)は距離が長かったためか10着に大敗。宝塚記念を目指したものの、屈腱炎と骨折が判明して、4歳半ばという早い時期での引退となりました。

しかし引退後に種牡馬として大活躍します。2009年に初年度産駒のアンライヴァルドが皐月賞、ロジユニヴァースがダービーといきなりクラシック2冠を制覇。翌2010年にヴィクトワールピサが皐月賞と有馬記念を勝ち、さらに2011年には震災直後のドバイワールドカップをM.デムーロ騎乗のヴィクトワールピサが勝って、日本中に勇気を与えてくれました。
その後は、やや尻すぼみな感じもありましたが、母父としてルヴァンスレーヴを出すなど、存在感は見せてくれていました。

2年前にレックススタッドを訪れた時に会っているのですが、馬房のドアには「”危険” 近寄らないでください」という表示があり、前には鎖が張ってあって近寄れないようになっていました。年をとっても気性はそこそこ荒いようでした。
そんな気性がうかがえるような写真を載せて、冥福を祈りたいと思います。

レックススタッドにて 2019年8月22日
レックススタッドにて 2019年8月22日
レックススタッドにて 2019年8月22日

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