ジャングルポケットの訃報

ジャングルポケットが、3/2に繋養されていたブリーダーズスタリオンステーションで亡くなりました。享年23歳でした。
2年前の夏にブリーダーズSSを訪れた時は元気で、隣の馬房のシンボリクリスエスともども、まだまだ長生きするだろうと思っていたのに、2頭とも逝ってしまうとは・・・。

ジャングルポケットを初めて競馬場で見たのは、2000年9月23日の札幌3歳Sでした。馬産地巡りの途中に、初めて札幌競馬場に行ったのです。旧スタンドはかなり古いつくりで、建物を裏から見ると学校のような感じだったのが強く印象に残っています。
そのレースで千田騎手鞍上のジャングルポケットは、新馬を勝っただけということもあり5番人気。しかし力強く抜け出すと、1 1/2馬身差で勝って2戦目で重賞初制覇となりました。

当時の札幌3歳Sは、それほどクラシックにつながるイメージはなかったものの、この中から翌年のクラシックの勝ち馬が出るといいなと思い、上位馬には注目していました。
そして結果的に、このレースの上位3頭は、すばらしい成績を収めることになったのです。

2着のタガノテイオーは次走の東スポ杯3歳Sを勝った後、朝日杯3歳Sで2着に入ります。しかしそこで骨折してしまい予後不良の診断。残念ながらクラシックには出られませんでしたが、もし生きていれば大きなところを取れたでしょう。
3着のテイエムオーシャンは、阪神3歳牝S、チューリップ賞、桜花賞と3連勝。距離の長いオークスこそ3着に敗れましたが、秋華賞も勝ってG1 3勝馬に。日本におけるダンシングブレーヴの代表産駒になりました。

そして1着のジャングルポケット。札幌3歳Sの次走は、角田騎手鞍上で暮れのラジオたんぱ杯に出走します。当時からクラシックへの登竜門とされていたレースで、新馬、500万と連勝してきた話題の外国産馬クロフネ、新馬を圧勝してきた、ダービー馬アグネスフライトの全弟アグネスタキオンに次ぐ3番人気となりました。
今から思うとすごいメンバーのこのレースで、圧勝したのはアグネスタキオン。クラシックはこの馬で仕方ないかと思わせるレースぶりでしたが、ジャングルポケットは休み明けながら2 1/2馬身差の2着に入ってクロフネには先着し、力のあるところを見せたのです。これでクラシックへの夢はつながったと思えました。

その後、共同通信杯を勝ったジャングルポケットは、アグネスタキオンに次ぐ2番人気で皐月賞に出走しましたが、スタートで大きくつまずいてしまい後方。道中は外を回って追い上げるも、好位から抜けたアグネスタキオンの3着までと、悔しい敗戦を喫します。

ところがアグネスタキオンは、その後屈腱炎を発症してダービーを回避。東京得意のトニービン産駒のジャングルポケットは、ダービーで1番人気に支持されます。
最内の皐月賞とは反対に、大外18番からスタートしたジャングルポケットは、道中中団後ろを追走。向こう正面ではどんどんポジションを落として大丈夫かと心配しますが、直線大外に持ち出すと、持ち前の末脚を発揮してつぎつぎと前の馬たちを競り落とし、追いすがるダンツフレームに1 1/2馬身差をつけて1着。
初G1制覇を果たすとともに、渡辺調教師と角田騎手の師弟にダービー制覇をプレゼントしたのです。

その後、札幌記念は3着、1番人気の菊花賞は伸び一息でマンハッタンカフェの4着に敗れ、得意の東京で行われるJCに出走します。
ここで1番人気は、前年に古馬中長距離G1完全制覇を成し遂げ、JRA新記録となる芝G1 8勝目を目指すテイエムオペラオー。ジャングルポケットはやや離れた2番人気でした。
道中は好位を進むテイエムオペラオーに対して、ペリエ騎手鞍上のジャングルポケットは後方につけます。そして直線、早めに追い出したテイエムオペラオーが大きく抜け出し、誰もが勝ったと思ったのもつかの間、大外からジャングルポケットが差を詰めてきて、あっという間にテイエムオペラオーを交わして優勝。
この時は、もちろんジャングルポケットも応援していたものの、テイエムオペラオーの芝G1 8勝も期待していたので、複雑な感情を抱きました。

ダービーに続いて、古馬G1も制したということで、ジャングルポケットは2001年の年度代表馬に選ばれています。

翌2002年、5歳(現4歳)になったジャングルポケットは、天皇賞(春)でマンハッタンカフェの2着など好走するも勝つことはできず、その年の有馬記念7着の後に怪我をしたこともあり、引退が決まりました。

種牡馬としては、トニービンの後継として、ジャガーメイル、オウケンブルースリ、トールポピー、トーセンジョーダン、アウォーディーなど、芝・ダート問わず多くのG1馬を生み出しました。派手さはないものの、堅実という印象の馬が多かった印象です。
ジャングルポケットといえば、レース後に雄たけびをあげるようにクビを大きく振り上げるシーンが印象的でしたが、レースでは掛かることもなく、激しさと冷静さを併せ持った馬というイメージがあります。

昨年行ったブリーダーズSSは、各馬がそれぞれの馬房にいて、ドアのU字型のフェンスから顔を出したタイミングで、見学者たちが写真を撮るという感じだったのですが、ジャングルポケットはなかなか顔を出してくれません。
そういう時は、スタッフの方がニンジンを持って来て誘い出してくれるのですが、なぜかジャングルポケットはフェンスの外には顔を出さないそうなのです。その日も、結局ジャングルポケットは顔を出しませんでした。
そしてこれは、同じくブリーダーズSSで繋養されている息子のトーセンジョーダンも同じだそうで、こんなことも遺伝するんですかねと、スタッフの方も笑っていたのが印象的でした。

最後に、そんなジャングルポケットの写真を紹介して、ご冥福を祈りたいと思います。

札幌3歳S 2000年9月23日 札幌競馬場
1着ジャングルポケット(千田) 2着タガノテイオー(藤田) 3着テイエムオーシャン(本田)
ブリーダーズSSにて 2019年8月25日
ニンジンで誘っても、ここまでしか顔を出してくれません
ブリーダーズSSにて 2019年8月25日

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