強い馬は不良馬場でも強い ~天皇賞(秋)

今年の10月は週末ごとに天気が悪い印象ですが、先週末に続いて季節外れの台風の襲来により、天皇賞(秋)もまたもや不良馬場でのG1レースとなりました。今日は東京競馬場で観戦したのですが、朝から雨が降り続き、ダートに続いて2Rから芝も不良になりました。その後も強まったり弱まったりを繰り返しながらも、突然向こう正面が煙るほどの激しい雨になることもあり、人馬ともに大変な1日だったと思います。

今年の天皇賞(秋)の大きな話題と言えば、タマモクロス(1988年)、スペシャルウィーク(1999年)、テイエムオペラオー(2000年)、メイショウサムソン(2007年)に続く5頭目の天皇賞春秋制覇を、キタサンブラックが成し遂げられるかということでした。

思い返せば、キタサンブラックは菊花賞を制するまでは母父サクラバクシンオーということもあり、距離伸びてどうかと言われていました。しかし菊花賞から昨年の天皇賞(春)、さらにJCを勝つと、宝塚記念で差されて負けたこともあり、逆に中距離での上り勝負への不安がささやかれたりしました。ところが今年の大阪杯で芝2000mを完勝し天皇賞(春)を連覇すると、すでに敵なしの状態となり、芝G1の最多勝記録である7勝を超えるのも時間の問題ではないかという雰囲気になったのです。

ところが圧倒的1番人気の宝塚記念で、先行しながら直線ではずるずると後退し、9着と自身ダービー10着以来の2回目となる大敗を喫すると、その敗因が明確でないこともあり、にわかに前途に暗雲が立ち込めてきました。

そしてその宝塚記念以来の休み明けで天皇賞(秋)に臨むキタサンブラックの、春秋制覇への不安材料としては、まず宝塚記念大敗の影響がないのかということがあげられます。巷間で敗因として最も多くささやかれたのが、レコードで勝った天皇賞(春)の反動ではないかということでした。その影響はもうないのか、あるいはまだあるのか、気になるところです。
次に重馬場の影響でした。秋雨前線と台風の影響で馬場悪化は間違いないのですが、キタサンブラックは重・不良でのレース経験はありません。やや重は3戦して、新馬は快勝したものの2016年の宝塚記念はマリアライトとドゥラメンテに差されて3着、そして9着に敗れた今年の宝塚記念もやや重で、意外と重馬場は得意ではないのではとも思われたのです。

そんな不安もあってか、キタサンブラックは1番人気に支持されたものの、そのオッズは3.1倍と大阪杯(2.4倍)、天皇賞(春)(2.2倍)、宝塚記念(1.4倍)に比べると少し上がっていたのです。
7番ゲートから発走したキタサンブラックは、いつもよりスタートが良くなく、本来は先行するのに後方。しかし武騎手はあわてずに内に誘導。各馬が馬場の悪い内をあけて進むこともあり、難なく内から当面の目標である2番人気のサトノクラウンのすぐ後ろ着つけます。そのまま中団後ろで向こう正面を進み、3コーナー手前から上がっていくサトノクラウンのあとを追って徐々にポジションを上げます。そして気づくと4コーナーでは先頭のグレーターロンドンのすぐ後ろで、サトノクラウンと並んで2番手につけ、4コーナーを回ります。
直線に入って馬場の外目に出して追い出すと、一気に後続を突き放して先頭。唯一追いすがってきたサトノクラウンがじりじりと差を詰めてきて、最後は内から並びかけるも、クビ差抑えて1着。強い内容で5頭目の天皇賞春秋制覇を成し遂げました。

直線に入って一気に後続を突き放すレースぶりは、強いキタサンブラックの復活を印象付けるもので、やはり強い馬は馬場の良不良は関係ないということを、改めて感じさせられました。
ちなみに天皇賞(秋)が不良馬場で行われたのは、1991年以来とのこと。その年は武騎手の乗ったメジロマックイーンが1.9倍の圧倒的な1番人気に支持され、6馬身差で1位入線して天皇賞春秋制覇を成し遂げたと思われたのもつかの間、18着に降着になるという衝撃的な結果に終わったのでした。当然武騎手にも思うところはあったでしょう。
その記憶を完全に払拭とは言えないでしょうが、新たな記憶を上書きするぐらいのインパクトがある勝利だったと思います。

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