着差以上の差? ~オークス

よくレース回顧の中で、「着差以上の差を感じさせる~」という表現があります。これは、1着馬と2着馬の着差はさほど開いていないけど、それ以上の力の差を感じさせるほど1着馬が強い印象を与えたときに、よく使われます。もちろんこれは書いている人の主観なので、必ずしもそうとは限りませんが。
オークスを見ていて、月並みではありますが、こんな表現がぴったりだなと思ったのです。

今年の3歳牝馬クラシック戦線は、桜花賞の時点では3強と言われていました。クイーンCを圧勝した昨年の最優秀2歳牝馬メジャーエンブレムと、チューリップ賞でハナ差の接戦を演じたシンハライトとジュエラーの3頭です。しかしオッズはメジャーエンブレム1.5倍に対して、シンハライト4.9倍、ジュエラー5.0倍と1強+2という感じ。

ところが1強のメジャーエンブレムが桜花賞で4着に敗れて、矛先をオークスではなく得意なマイルのNHKマイルCに変えて見事に優勝。さらに桜花賞馬ジュエラーが怪我でリタイヤし、桜花賞をハナ差で敗れたシンハライトが1強とガラッと勢力図が変わってしまいました。
ただしそう簡単に終わるわけもなく、フローラSをレコードタイムで3馬身差圧勝のチェッキーノが新たに名乗りを上げて、オークスでは1番人気シンハライト(2.0倍)、2番人気チェッキーノ(4.0倍)、3番人気以下は10倍以上と、新たな2強状態となったのです。

レースは最低人気のダンツペンダントが果敢に逃げ、フラワーCを逃げ切り1着の3番人気エンジェルフェイスや、忘れな草賞を逃げて1着の7番人気ロッテンマイヤーが続き、1000mが59.8と速めの厳しい流れ。これは逃げ先行馬が軒並み2桁着順に終わったことからもわかります。

そんな中、シンハライトとチェッキーノは後方から4,5番手とかなり後ろの同じような位置で追走。ところが4コーナーでチェッキーノは馬群の外へ、シンハライトは馬場中央の馬群の中へと進路が大きく分かれます。
チェッキーノは直線入り口で外にはじかれるものの、その後はスムーズに外から追い込んできます。しかしシンハライトはなかなか前が開かず、進路を見つけられない状況。残り200mで無理やり外に出そうとして、横にいたデンコウアンジュの進路を妨害してしまいます(池添騎手はこれで2日間の騎乗停止)。

しかし前が開いたシンハライトは、そこから見事な末脚を発揮して、先に内から抜け出していたビッシュ、外からじりじり伸びているチェッキーノを並ぶ間もなく交わすと、2着チェッキーノにはクビ差、3着ビッシュには1馬身差で、桜花賞では2cm差で逃したG1タイトルをついに手に入れました。

そのシンハライトの、進路が開いてからの伸び脚は見事でした。レース評論の中には、馬群をついた池添騎手の勇気をたたえるものもありましたが、あのまま前が開かなければ脚を余す危険も大いにあったわけで、個人的にはシンハライトの馬群を割る勝負根性と、一瞬の見事な瞬発力を賞賛したいと思います。
シンハライトの上り3ハロンは、チェッキーノと同じ33.5でメンバー1位タイなのですが、ゴール前100mの伸び脚は明らかに違っていて、まさに着差以上の差を感じさせました。

これでディープインパクト産駒のオークス制覇はジェンティルドンナ、ミッキークイーンに続く3頭目で、5年連続連対を継続中。この条件でのディープインパクト産駒の強さを改めて感じさせられるとともに、来週の日本ダービーの有力なヒントになるかもしれません。

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