2年前の菊花賞の際にも、「2冠馬の不思議」と題するコラムの中で、いかにダービーと菊花賞の2冠馬になることが難しいかということに触れました。実際に昨年までで牡馬クラシックの3冠馬7頭、皐月賞とダービーの2冠馬15頭、皐月賞と菊花賞の2冠馬8頭に対して、ダービーと菊花賞の2冠馬は実質タケホープただ1頭(ダービー、菊花賞、オークスを勝った変則3冠のクリフジは除く)のみとなっています。
その理由として考えられることは、ダービーで目一杯の仕上げをしたことの反動による故障や、近年は距離適性等を考えて別路線に向かう馬が増えていることなどが考えられますが、実際に2001年のジャングルポケットを最後に、ダービー1冠馬の菊花賞への出走自体がなかったのです。その理由を見てみましょう。
2002年 タニノギムレット:神戸新聞杯前に屈腱炎で引退
2004年 キングカメハメハ:神戸新聞杯1着後に、天皇賞(秋)を予定していたが屈腱炎で引退
2007年 ウオッカ:凱旋門賞出走を目指していたが故障により秋華賞に出走(3着)
2008年 ディープスカイ:神戸新聞杯1着から天皇賞(秋)に出走(3着)
2009年 ロジユニヴァース:JCを目指したが体調整わず秋は全休
2010年 エイシンフラッシュ:神戸新聞杯2着後菊花賞を目指すが病気で取りやめJCに出走(8着)
2012年 ディープブリランテ:夏にイギリス遠征後菊花賞を目指したが屈腱炎で引退
2013年 キズナ:ニエル賞1着から凱旋門賞に出走(4着)
(2003年ネオユニヴァース、2006年メイショウサムソンは皐月賞、ダービーの2冠馬でいずれも菊花賞に参戦するも、3着、4着に敗れた。2005年ディープインパクト、2011年オルフェーヴルは3冠馬)
こうしてみると、春の2冠馬が4頭とも順調なのに対して、ダービー1冠馬は8頭中6頭が何らかの故障を発症しており、やはりかなり無理して勝った反動が否めないのではないかと思います。
そして今年、13年ぶりにダービー1冠馬が無事菊花賞に、しかも神戸新聞杯を勝って1番人気で出走しました。神戸新聞杯は辛勝でやや不安を感じさせたものの、ダービーも神戸新聞杯も並んだら抜かせない勝負根性を見せており、ついに41年ぶりにジンクスを打ち破ることへの期待も、2.4倍という単勝人気に込められていたと思います。
レースはサングラスがやや早めの流れを作り、ワンアンドオンリーは外からの発走ということもあり前に壁を作れず、やや掛かったように中団の前を進みます。横山典騎手が懸命に抑えて最初の直線では落ち着いたように見えたものの、向こう正面ではまた掛かり気味に好位を追走。
4コーナー手前から追い出されるも、直線に入ってもいつもの伸びはなく馬群の中。神戸新聞杯で3,2着に下したトーホウジャッカル、サウンズオブアースが優勝争いを繰り広げる中、まったく見せ場なく1.2秒差の9着に終わりました。
これでまたもやジンクスの継続を許してしまったわけですが、ここまで来ると、もうこれを信じる方が馬券的には得だといえるでしょう。実際に過去には、スペシャルウィーク(菊花賞1番人気2着)やジャングルポケット(菊花賞1番人気4着)など古馬になってG1を勝つような名馬でも、このジンクスをくつがえすことはできなかったのです。
逆にこのジンクスに勝つような馬がいれば、真の名馬かもしれません。その登場は、ある意味楽しみでもあります。