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2017年05月29日

大一番での大胆な策が明暗を分けました ~日本ダービー

今年のダービーは混戦と言われていました。
そもそも皐月賞の1番人気が牝馬のファンディーナだったように、今年の3歳は牝馬はレベルが高いものの、牡馬は今一つというのが定説でした。また皐月賞の上位馬も、1着アルアインは毎日杯1着から、2着ペルシアンナイトはアーリントンC1着から、3着ダンビュライトは弥生賞3着からと、トライアル連対馬の名前はなく、特に1,2着馬はマイルでの好走が多いことから距離不安がささやかれて、ダービーの中心となるべき馬が見えなかったのです。
しかし皐月賞は昨年のディーマジェスティのレースレコードを0.1秒上回る1.57.8で決着しており、決してレベルが低いわけではないのです。ただダービー出走馬で重賞2勝馬がアルアインとカデナの2頭だけで、3勝以上した馬はいないことからもわかるように、抜けた存在がおらず、またそれぞれに不安もあって、そもそもどの馬が1番人気になるかさえも予想できないような混とんとした状況でした。

そんな中1番人気に支持されたのは、青葉賞を2.23.6の好タイムで2 1/2馬身差圧勝したアドミラブル。たしかにその勝ちっぷりは見事だったのですが、過去に青葉賞1着からも2400mを2勝した馬からもダービーを制した馬はなく、また過去10年で掲示板にすらのっていない8枠18番の大外枠。この10年で1枠1番が4勝しているように内枠有利なダービーでは、かなり不利な枠順でした。
また2番人気レイデオロ、3番人気スワーヴリチャードともに皐月賞で5,6着と負けており、東京で巻き返しは期待できるものの、必ずしも大きく信頼がおける存在でもありません。

レースは横山典騎手のマイスタイルが予想に反してハナに立ち、そのあとうまくスローに落とします。そのペースは1000m1.03.2の超スローペース。遅いことは各騎手もわかっていたのでしょうが、いったん隊列が落ち着いてしまうと、それを壊すのはかなり勇気がいることだと思います。
そんな中で唯一大きく動いたのは、レイデオロのルメール騎手でした。2コーナーを回って極端なスローペースとみると、向こう正面で後方5番手から外を通って一気に進出し、3コーナー手前では2番手まで上がります。よく掛かって行ってしまう馬はいて、そういう馬はだいたい抑える騎手に逆らって行くのですが、レイデオロは折り合いを欠いた素振りもなく、あくまでも騎手の指示に従って自然にポジションを上げていったのです。

これを見て思い出したのは、皐月賞のペルシアンナイト。皐月賞はスローではなかったのですが、開いている内を一気に後方から進出したペルシアンナイトは、好位から内を突いて伸び、アルアインには交わされたもののクビ差2着に入りました。内と外との違いはありますが、いずれも大胆な騎乗で、しかもそれが好成績につながったのですから、結果的にはすばらしい判断だったと言えます。
そのペルシアンナイトに乗っていたのがM.デムーロ騎手。ダービーでは1番人気のアドミラブルに乗って後方にいたのですが、ダービーではスローにもかかわらず後方のままで直線に賭けます。1番人気だったことや直線の長い東京だったこともあるでしょうが、そこで行かなかったことが結果的に明暗を分けたのではないでしょうか。

2番手を追走したレイデオロは、直線に入ると先週のオークスでのソウルスターリングとまさに同じように、馬場中央に持ち出すと早めに追い出して、最内で粘るマイスタイルと大きく離れて壮絶な追い比べ。残り200mでも並んだままで、さらに後ろからスワーヴリチャードもじりじりと迫ってきます。
しかし残り150mでマイスタイルを競り落とすと、3/4馬身差まで迫ったスワーヴリチャードにそれ以上差をつめさせず、力強い足取りで見事にダービーを制しました。

これでルメール騎手は、ヴィクトリアMのアドマイヤリード、オークスのソウルスターリングに続くG1 3連勝で、42年ぶりの同一年オークス、ダービー制覇の偉業を達成。藤沢和師も開業30年での初のダービー勝利で、かつルメール騎手と同じく同一年オークス&ダービー勝ちを成し遂げました。
それもこれも、向こう正面でのルメール騎手の、馬の力を信じた好判断がなければ、なかったかもしれません。後方集団にいたアドミラブルは、メンバー1の上り33.3で猛然と追い込むものの2馬身差の3着まで。レース自体の上りが33.8なので、今の東京の馬場ではこれを差し切るのは無理でしょう。

個人的な予想が当たったということもありますが、強い馬と才能ある騎手の好騎乗によるすばらしいレースを見ることができて、まさにダービーを堪能できた1日でした。そして改めてダービーというのは、みんなが勝ちたい特別なレースなんだと実感できました。
そして早くも来週から、来年のダービーを目指して2歳戦が始まります。どんな馬たちがどんなレースを見せてくれるのか、とても楽しみです。

2017年05月21日

距離延長をどう評価するかが永遠のテーマ ~オークス

牝馬クラシック第2弾となるオークスは、毎回桜花賞組を中心にするか、あるいはフローラSや忘れな草賞などの長めの距離から来る別路線の馬を中心にするか、毎回悩みます。それは特に距離が桜花賞の芝1600mから、1.5倍の芝2400mに伸びることが大きいと思います。

桜花賞の場合、阪神JFとチューリップ賞というまったく同じ舞台(阪神芝1600m)で行われる前哨戦があり、しかも多くの有力馬がそこを使ってくるため、ある程度力関係がわかりやすいということがあります。しかしオークスの場合、そもそも芝2400mを経験した馬がほとんどいないため、距離伸びての力関係がわかりにくく、必然的に血統に頼ったりします。
しかし個人的な経験に則してみると、血統から距離適性を判断するのは、この時期の牝馬にはあまり意味がないように思えます。そもそも長距離レースの経験がほとんどない馬同士の戦いなので、距離適性よりもその時点の完成度の高さの方が、より結果に影響するように思えるのです。

それを強く感じさせたのは、2007年のオークス馬ローブデコルテの戦績でした。ローブデコルテは芝1800mの新馬を勝ったものの、その後マイルの500万も阪神JFも勝てず、2勝目は芝1400mOPの紅梅Sでした。そしてチューリップ賞5着、桜花賞4着とウオッカ、ダイワスカーレットの後塵を拝したこともあり、距離延長はマイナス
と思われ当日は5番人気でしたが、両馬が不在のオークスを中団から差して勝ち、G1馬となったのです。
ところが秋は秋華賞、エリザベス女王杯と大敗し、その後はマイル路線に転じます。結局勝つことはできなかったものの、古馬になって好走したのは芝1400mの阪急杯3着など。父コジーン、母父シーキングザゴールドと血統的にもマイル前後に距離適性があったと思われます。
ローブデコルテがオークスを勝てたのは、距離適性ではなく、その時の完成度というか他の馬との力の差が大きかったのでしょう。

今年のオークスでも人気の中心は桜花賞組でしたが、その中でもどの馬が距離伸びてよいかの判断が、微妙に人気に影響したように思えます。桜花賞とオークスの上位3頭の顔ぶれと人気順は変わらなかったのですが、1番人気ソウルスターリングは1.4倍から2.4倍に倍率を落とし、2番人気アドマイヤミヤビは5.1倍から4.8倍とほとんど変わらず、3番人気リスグラシューは14.5倍から5.9倍と大きく上げました。
ソウルスターリングは3着に敗れたことが大きいと思いますが、父フランケルがマイルを中心に活躍していたことも影響したのではないでしょうか。逆に桜花賞で大敗したアドマイヤミヤビも、2着に差してきたリスグラシューも、父ハーツクライから距離伸びてよいと思われたことが、人気を後押ししたのではないでしょうか。

結果は、1番人気のソウルスターリングが、先行して押し切る強い競馬で1着となり、桜花賞の悔しさを晴らすとともに、藤沢和師に初のオークスタイトルをもたらしました。
そして2着はフローラS1着から臨んだ6番人気のモズカッチャン。後方からメンバー1位タイの末脚で追い込んだ2番人気のアドマイヤミヤビが、ゴール直前で9番人気ディアドラをアタマ差交わして3着に入りました。
3番人気のリスグラシューは末脚今一つで5着。距離延長が心配された桜花賞馬レーヌミノルは、桜花賞の8番人気から4番人気に評価を上げたものの、中位退で13着と見せ場なく大敗しました。

ソウルスターリングの距離適性は、今後のレースぶりで見えてくると思いますが、現状ではやはり完成度の高さが今日の結果につながったと思います。
そしてこの考え方は、来週の日本ダービーの予想にも使えるのではないかと思うのですが。

2017年04月16日

牝馬には牡馬の”圧”が厳しかった? ~皐月賞

今年の皐月賞は、牝馬のファンディーナの参戦で、69年ぶりの牝馬による快挙なるかが大きな話題となりました。デビュー3連勝がいずれも先行して楽勝で、特に前走のフラワーCは直線で突き放して5馬身差の圧勝。今年の3歳牡馬は弱いという評価もあって、そのファンディーナは最終的に2.4倍の圧倒的な1番人気に支持されたのです。

牝馬による牡馬クラシック勝利といえば、2007年のウオッカによるダービー制覇が思い浮かびますが、逆に言うと近年ではそれしかないわけで、だからこそ快挙だったのです。そのウオッカは前走の桜花賞で2着に負けていたこともあり、当日の評価は10.5倍の3番人気。牝馬の牡馬クラシックでの1番人気は、1995年菊花賞でダンスパートナー(レースではマヤノトップガンの4着)が支持されましたが、それ以外は記憶にありません。

そのファンディーナの評価ですが、個人的には上位の可能性はあるものの、勝つまでは難しいのではと思っていました。その根拠として、年明け3戦の厳しいローテーションや、先行しての楽勝ばかりでもまれた経験がないこと、3戦全勝馬の成績が振るわないことなどもありますが、やはり牡馬の迫力というか圧力のようなものが、かなり影響するのではと思ったのです。
それはダンスパートナーの菊花賞の時にも感じたのですが、3歳牝馬にとって牡馬の圧力は想像以上に大きいのではないかと思うのです。

いわゆる女傑と呼ばれる牡馬まさりの牝馬は過去にも何頭かいました。エアグルーヴ、ヒシアマゾン、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナなど、牡馬を相手にG1で好勝負を演じた牝馬が何頭も思い浮かびますが、3歳で牡馬相手にG1を勝ったのはウオッカだけで、その多くが古馬になってから勝っているのです。
これは競走能力だけではなく、牡馬相手に勝つだけの精神力も必要なのではないでしょうか。それを3歳春の時点で求めるのは、かなりハードルが高いのではないかと思うのです。
しかし予想のプロであっても、ファンディーナを高く評価する人はかなりいて、中には負けるシーンが想像できないというような表現もあって、ちょっと驚きました。

レースでは、ファンディーナは横一線のスタートから前に行くものの、人気ゆえのマークもあり、どんどんポジションを下げてしまいます。4コーナー手前から押して出していき、直線に入って一瞬先頭に立つものの、内から1着になるアルアインが追い出し、外から3着になるダンビュライトが迫ってくると、その迫力に押されるように下がってしまいます。そこから懸命に前を追うものの、結局0.5秒差の7着に終わりました。
ファンディーナは牝馬としては馬格があり、今日の馬体重は504kgありましたが、やはり牡馬の”圧”に押されたように見えました。

勝ったのは9番人気のアルアインで、2着は4番人気のペルシアンナイト。連対した2頭の前走は毎日杯1着とアーリントンC1着。ともに過去10年の連対馬にはない臨戦過程で、トライアル組では唯一弥生賞3着のダンビュライトが3着に入るだけと、過去の傾向とは大幅に異なる結果になりました。
昨年までの5年で4勝を挙げていた前走共同通信杯組は、スワーヴリチャードが6着と敗退。思えば2012年にゴールドシップが共同通信杯からの直行で勝ってから傾向が変わり、共同通信杯が主要な前哨戦となったのですが、今年の結果を受けてまた傾向が変わるかもしれません。来年以降に注目です。

しかしこれでダービーがわからなくなりました。過去10年で6番人気以下の人気薄の馬が皐月賞を勝ったのは3回ありますが、そのうち2回は皐月賞不出走馬がダービーを勝ち、昨年は皐月賞2着馬(3番人気)がダービーを勝ちました。
これを当てはめると、今年は皐月賞不出走馬かペルシアンナイトがダービーを勝つことになりそうです。個人的には、ダービーはぜひ誰もが納得するような強く実績がある馬に勝ってほしいと思います。