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2016年05月29日

オーナーの運もあるような・・・ ~日本ダービー

今年の牡馬クラシックはレベルが高いと言われ、皐月賞まではサトノダイヤモンド、リオンディーズ、マカヒキの3強、その後ダービーに向けては皐月賞馬ディーマジェスティを加えた4強という状況でした。ダービーに向けて皐月賞の分析が重要でしたが、かなりのハイペースだったこともあり、その解釈はさまざまな可能性が考えられ、とても難しいというのが個人的な感想でした。逆に言えば、どの馬がダービー馬に輝くのか、とても楽しみな1戦でもあったのです。

予想をするうえで大きな要素になるのが、展開だったと思います。皐月賞で途中から逃げてハイペースを演出し5着に敗れたリオンディーズ。中団から差したものの休み明けもあって3着にとどまったサトノダイヤモンド。
それに対してハイペースを利して後方から差して優勝したディーマジェスティと、同じく1番の上りで追い込んで2着のマカヒキ。
東京の馬場は前日の土曜日からCコースとなり、前が止まらず外が伸びない馬場になったことで、特に末脚勝負のディーマジェスティとマカヒキの戦法が注目されました。

スタートすると、内のマカヒキは中団につけ、最内のディーマジェスティはいったん下げるものの、すぐに外からマカヒキをマークするように後ろにつけます。その2頭の前にサトノダイヤモンドがいて、リオンディーズは予想に反して抑えて後ろから3,4番手。そのままサトノダイヤモンド、マカヒキ、ディーマジェスティは固まって中団を進みます。
直線に入ると馬場中央をサトノダイヤモンドがじりじりと伸び、その内のマカヒキは前のエアスピネルの後ろに押し込まれて、進路がふさがった状況。出られるのかと思うと、サトノダイヤモンドがやや外によれて前が空き、そのすきをついてマカヒキが一気に進出します。
しかし立て直したサトノダイヤモンドが再度外から馬体を合わせ、そこからは2頭が並んで壮絶な叩き合い。最後は鼻づらをあわせて並んでゴール。1/2馬身差でディーマジェスティが3着。

写真判定になりましたが、結局ハナ差でマカヒキがサトノダイヤモンドを下して戴冠となりました。
この2頭、マカヒキは金子真人オーナー(名義は金子真人HD)、サトノダイヤモンドは里見治オーナーの持ち馬。ともにG1では常連の大オーナーですが、その成績はかなりの差があります。

金子オーナーは牡牝の3冠馬ディープインパクト、アパパネをはじめ、砂のディープインパクトと言われたカネヒキリなど多数のG1馬を所有。ダービーもキングカメハメハ、ディープインパクト、マカヒキと3勝目。JRAのG1はこれで26勝目。個人馬主としては、まさに驚異的な成績です。ちなみにまだ勝っていないJRAのG1は、高松宮記念、マイルCS、朝日杯FSの3戦のみ。

片や里見オーナーはサトノの冠名でおなじみですが、意外なことにJRAのG1は未勝利。しかも2着は2013年菊花賞(サトノノブレス)、2015年日本ダービー(サトノラーゼン)、2016年日本ダービー(サトノダイヤモンド)の3回。3着も2回あります。

昔からダービーは運がよい馬が勝つと言われますが、今年のダービーはオーナーの運が優ったように思えます。しかもサトノダイヤモンドは落鉄もしていたとか。競馬にタラレバは禁物ですが、無事ならとつい思ってしまうでしょう。
ただしよく見ると、サトノダイヤモンドは1回よれてマカヒキに前に出られながらも再度差を詰め、ゴール前のクビの上げ下げでは一瞬前に出る場面もありました。その勝負根性が、いつかG1の舞台で発揮されて、オーナー悲願のG1制覇をかなえることを祈りたいと思います。

2016年05月23日

着差以上の差? ~オークス

よくレース回顧の中で、「着差以上の差を感じさせる~」という表現があります。これは、1着馬と2着馬の着差はさほど開いていないけど、それ以上の力の差を感じさせるほど1着馬が強い印象を与えたときに、よく使われます。もちろんこれは書いている人の主観なので、必ずしもそうとは限りませんが。
オークスを見ていて、月並みではありますが、こんな表現がぴったりだなと思ったのです。

今年の3歳牝馬クラシック戦線は、桜花賞の時点では3強と言われていました。クイーンCを圧勝した昨年の最優秀2歳牝馬メジャーエンブレムと、チューリップ賞でハナ差の接戦を演じたシンハライトとジュエラーの3頭です。しかしオッズはメジャーエンブレム1.5倍に対して、シンハライト4.9倍、ジュエラー5.0倍と1強+2という感じ。

ところが1強のメジャーエンブレムが桜花賞で4着に敗れて、矛先をオークスではなく得意なマイルのNHKマイルCに変えて見事に優勝。さらに桜花賞馬ジュエラーが怪我でリタイヤし、桜花賞をハナ差で敗れたシンハライトが1強とガラッと勢力図が変わってしまいました。
ただしそう簡単に終わるわけもなく、フローラSをレコードタイムで3馬身差圧勝のチェッキーノが新たに名乗りを上げて、オークスでは1番人気シンハライト(2.0倍)、2番人気チェッキーノ(4.0倍)、3番人気以下は10倍以上と、新たな2強状態となったのです。

レースは最低人気のダンツペンダントが果敢に逃げ、フラワーCを逃げ切り1着の3番人気エンジェルフェイスや、忘れな草賞を逃げて1着の7番人気ロッテンマイヤーが続き、1000mが59.8と速めの厳しい流れ。これは逃げ先行馬が軒並み2桁着順に終わったことからもわかります。

そんな中、シンハライトとチェッキーノは後方から4,5番手とかなり後ろの同じような位置で追走。ところが4コーナーでチェッキーノは馬群の外へ、シンハライトは馬場中央の馬群の中へと進路が大きく分かれます。
チェッキーノは直線入り口で外にはじかれるものの、その後はスムーズに外から追い込んできます。しかしシンハライトはなかなか前が開かず、進路を見つけられない状況。残り200mで無理やり外に出そうとして、横にいたデンコウアンジュの進路を妨害してしまいます(池添騎手はこれで2日間の騎乗停止)。

しかし前が開いたシンハライトは、そこから見事な末脚を発揮して、先に内から抜け出していたビッシュ、外からじりじり伸びているチェッキーノを並ぶ間もなく交わすと、2着チェッキーノにはクビ差、3着ビッシュには1馬身差で、桜花賞では2cm差で逃したG1タイトルをついに手に入れました。

そのシンハライトの、進路が開いてからの伸び脚は見事でした。レース評論の中には、馬群をついた池添騎手の勇気をたたえるものもありましたが、あのまま前が開かなければ脚を余す危険も大いにあったわけで、個人的にはシンハライトの馬群を割る勝負根性と、一瞬の見事な瞬発力を賞賛したいと思います。
シンハライトの上り3ハロンは、チェッキーノと同じ33.5でメンバー1位タイなのですが、ゴール前100mの伸び脚は明らかに違っていて、まさに着差以上の差を感じさせました。

これでディープインパクト産駒のオークス制覇はジェンティルドンナ、ミッキークイーンに続く3頭目で、5年連続連対を継続中。この条件でのディープインパクト産駒の強さを改めて感じさせられるとともに、来週の日本ダービーの有力なヒントになるかもしれません。

2016年05月15日

昨年の悔しさをバネにG1連覇 ~ヴィクトリアM

ヴィクトリアMは、7歳馬ストレイトガールが昨年を上回る鮮やかな末脚で一気に抜け出し、レースレコードで連覇を達成しました。7歳牝馬のG1制覇は初とのことですが、それをスピードが必要なマイル戦で、しかもレースレコードで制するとは・・・。その強さに唖然とするしかありませんでした。

ストレイトガールは、昨年ヴィクトリアMとスプリンターズSとG1を2勝したのですが、JRA賞の部門賞に選ばれないという不運に泣かされました。
最優秀4歳以上牝馬か最優秀短距離馬のどちらかを受賞する権利は十分にあったのですが、前者はジャパンカップを勝ったショウナンパンドラ、そして後者は安田記念、マイルCS、香港マイルを勝って年度代表馬にもなったモーリスが獲得。中央のG1(J・G1含む)を複数勝った馬はストレイトガールを含めて6頭いましたが、その中で唯一無冠に終わったのです。その無念たるや相当なものだったでしょう。

そして今日のレースでは、昨年の最優秀3歳牝馬ミッキークイーンと最優秀4歳以上牝馬ショウナンパンドラを2馬身半という差をつけて破り、無念を晴らしました。

しかし、昨年の優勝馬にもかかわらず単勝17.7倍の7番人気という低評価は、終わってみれば不思議な気もします。とはいえ、7歳という年齢と、香港遠征と帰国初戦でともに9着に敗れたことを見れば、仕方ないでしょう。
でも思い返してみると、実は同じような復活劇を、何回か経験したような気がします。

その1頭は2012年の勝ち馬ホエールキャプチャ。
その年は4番人気で比較的順当でしたが、そこから調子を落として2桁着順が続きます。2013年の初戦阪神牝Sも14着に終わり、もう終わったと思われヴィクトリアMでは12番人気。しかし中団から脚を伸ばし、勝ったヴィルシーナにハナ差の2着と鮮やかに復活しました。

そしてもう1頭はその2013年の勝ち馬ヴィルシーナ。
その年は1番人気に応えて、ジェンティルドンナの前に涙をのみ続けたG1をようやく勝ったのですが、そこから長いトンネルに入ります。翌2014年も東京新聞杯、阪神牝Sともに11着の惨敗。さすがにないだろうと思われた11番人気の2014年ヴィクトリアMで、見事に復活のV。

こうやって振り返ってみると、ストレイトガールの連覇も十分に考えられるのですが・・・。
まあこれを糧に、次こそは復活Vをぜひとも捉えたいと思います。

2016年05月09日

自分の型にはまった時の強さ ~NHKマイルC

今年のNHKマイルCの大きな焦点は展開、それもメジャーエンブレムがマイペースで逃げられるかということだったと思います。それは単勝1.5倍と圧倒的な支持を受けた桜花賞で、なぜか得意な逃げという戦法をとらずに中団からレースをして、結果として4着と期待を裏切ってしまったことが、大きく影響しているとも言えるでしょう。

クイーンCで34.4と速めのペースで逃げながら、上りを34.7でまとめて、3歳春の時点で1.32.5で5馬身差の圧勝は衝撃的ともいえる内容でした。それが桜花賞での圧倒的な人気につながったのは仕方のないことでしょう。
しかしその桜花賞でメジャーエンブレムに乗ったルメール騎手は、それほど悪くないスタートを切りながらも抑えて、デビュー以来初めて4コーナーまで中団で進めるというレースをします。そのためペースは落ち着き、瞬発力勝負となって切れで勝る馬の後塵を拝してしまったのです。
その結果に対するルメール騎手への風当たりは相当なものだったでしょう。私などは、とても耐えられる自信はありません。そしてその汚名を返上するためには、次のレースで勝つしかなかったのです。

桜花賞を勝てなかったことで2冠を狙う必要はなくなったこともあり、陣営は次のターゲットを2400mのオークスではなく、NHKマイルCに定めてきました。もちろん強い勝ち方をしたクイーンCと同じ東京マイルが舞台ということもあったと思いますが、逆に言うと言い訳が効かない舞台とも言え、また重賞実績のある牡馬たちを相手にすることになり、そのプレッシャーは桜花賞以上だったかもしれません。そのせいか、レース前のルメール騎手の表情は、今まで見たことがないほど鬼気迫る感じに見えました。

レースは、好スタートを切ったメジャーエンブレムをルメール騎手が無理なく先頭に立たせ、競うかとも思われたシゲルノコギリザメは2番手に控えます。先行が予想されたシュウジは3番手で抑えて折り合いに専念し、ティソーナは出遅れて後方から。それほど速くは見えないものの、3ハロンは34.3とクイーンCを0.1上回るペースで進みます。
直線に入ると余裕たっぷりに後続各馬を突き放し、逆に先行した馬たちはどんどん後退。外から後方の馬たちがじりじりと迫ってきます。しかし内ピッタリを走るメジャーエンブレムはルメール騎手の叱咤激励に応えて懸命に伸び、馬群を抜け出してきたロードクエスト、レインボーラインが迫るも、それぞれ3/4馬身とそこからクビ差をつけて逃げ切り、G1 2勝目を飾りました。

勝ちタイムは1.32.8とクイーンCを0.3下回るも、近年同じ逃げ切り勝ちをおさめたカレンブラックヒルやミッキーアイルのタイムを上回る堂々とした時計。
しかも先行したシゲルノコギリザメ、シュウジ、アーバンキッドなどはすべて2桁着順に沈み、2,3着馬は4コーナー10番手以降から追い込んできた馬と、明らかに前崩れの追い込み有利の展開。それを逃げ切ったのだから、相当な力の持ち主と言えるでしょう。

そしてルメール騎手は、これが今年のG1初勝利。今年のG1 6戦でなんとルメール騎手は4回目の1番人気だったのですが、これまでは2,4,3着と期待を裏切り続け、ようやく4戦目にして応えることができました。
対する池添騎手は、これが今年3回目のG1 2着。前の2回が2cm、4cm差だったことを思えば、まだ救われるものの、悔しいことに変わりはないでしょう。

マイルを速い流れで逃げたときはかなり強いという、ユニークな特徴を見せたメジャーエンブレムですが、これからどのレースで、どんなパフォーマンスを見せてくれるでしょう。大きな勉強になったと思われるルメール騎手ともども、今後がとても楽しみです。

2016年05月01日

最も固いG1から最も荒れるG1へ ~天皇賞(春)

今年の天皇賞(春)は、直線で2番人気のキタサンブラックと13番人気のカレンミロティックの叩き合いとなり、いったんカレンミロティックがアタマ差ほど前に出ましたが、最後にもう一度キタサンブラックが内から差し返し、数cm差での戴冠となりました。
これで菊花賞に続くG1 2勝目となったわけですが、3000mを超えるG1を両方制したことで、ようやく母父サクラバクシンオーからくる距離不安説も影を潜めることでしょう。馬主の北島三郎さんも再び「まつり」を歌って喜ばれたとのことで、おめでとうございます。

それに対して、1番人気のゴールドアクターは道中掛かったことが影響したのか、4コーナー2番手から後退して0.8秒差の12着大敗となりました。掲示板を外したのは新馬戦7着以来2回目ということで、堅実な成績からここまでの大敗は、正直驚かされました。
そしてこれにより、天皇賞(春)では10回連続で1番人気が連対できなかったことになり、まさに最も荒れるG1と言えると思います。しかも3着に入ったのも、2008年のアサクサキングスが最後。つまり過去8回連続で1番人気が着外に敗れているのです。

しかし私が競馬初心者だったころは、確か最も固いG1と言われていたはずです。いつからこんなに荒れるようになってしまったのでしょうか。
ちょっと調べてみると、2003年の第127回から傾向が変わったようです。それまでももちろんたまに荒れることもあったのですが、例えば1999年から2002年まで4回連続で1~3番人気の馬が3着以内を占めていますし、1990年代で1,2番人気が揃って連対を外したのは、1995年の1回だけ。その年の馬連が4,090円で、他に1998年に2番人気-10番人気で決まって4,770円というのがありますが、その2回を除けば平穏に収まっていたのです。
しかし2003年に1着ヒシミラクル(7番人気) 2着サンライズジェガー(8番人気)で馬連16,490円と荒れると、2004年は1着イングランディーレ(10番人気) 2着ゼンノロブロイ(4番人気)で馬連36,680円。そしてついに2005年には1着スズカマンボ(13番人気) 2着ビッグゴールド(12番人気)で馬連169,320円の大荒れに。今から思えば、これで今の傾向が決まったような気がします。

その後、2006年こそディープインパクト-リンカーンの1,2番人気で決まって馬連380円で収まったものの、2007年からの10回で馬連3桁は1度もなく、5桁(万馬券)は3回。さらに3連単は10万円超えが10回中9回で、まさに荒れるG1という感じです。

その理由は、いろいろあるのでしょうが、個人的には長距離レースの価値の低下があるのではという気がします。昨年の2冠馬ドゥラメンテはダービー後に怪我が発覚して秋は全休しましたが、無事なら菊花賞で3冠は狙わず凱旋門賞に挑戦するつもりだったといいます。他にもダービー3着馬サトノクラウンは菊花賞ではなく天皇賞(秋)を選択しました。
このように競馬サークル全体として、配合の段階から調教まで長距離レースを意識しない傾向が強くなっているのではないでしょうか。そのため。中距離では強いのに意外と距離がもたなかったり、距離に自信がない馬ばかりで全体にペースが遅くなってしまい、スローペースの経験が少ない有力馬が掛かって末を失ったり、逆に直線の瞬発力勝負になって短い距離に適性があるはずの馬が上位に来たりと、さまざまな要因で荒れることが多くなっているのかもしれません。

しかし一方、昔、天皇賞(春)で強い勝ち方をした、メジロマックイーン、サクラローレル、マヤノトップガン、スペシャルウィーク、テイエムオペラオー、そしてディープインパクトなどは、中距離でも活躍しました。ところが最近天皇賞(春)を勝った馬は、他ではあまり活躍できず、このレース限定のような傾向も見えます。そういう意味では、天皇賞(春)を勝つのは新たなステイヤーと言えるのかもしれません。

今年優勝したキタサンブラックは、現状ではG1勝ちは菊花賞と天皇賞(春)の長距離G1のみとなっています。しかし2000mの産経大阪杯で好勝負するなど中距離でも実績を残しており、逆に母父サクラバクシンオーのスピードがうまく生かされているのかもしれません。まだ底を見せていない感もあり、中長距離でまんべんなく活躍できるようなスターホースへの道を歩んでいくことを期待したいと思います。