史上3頭目の無敗の3冠牡馬誕生 ~菊花賞

今年の菊花賞は、2週連続の無敗の3冠馬が誕生するか、大きな関心を呼びました。昨晩のNHK7時のニュースでも取り上げられ、世間的な関心も高かったと思います。

その主役コントレイルが神戸新聞杯を楽勝したときは、ほぼ3冠は決まりだろうと思いましたし、今日のパドックでの落ち着いた姿を見て大丈夫だろうと安心しました。
しかし結果は思わぬ辛勝で、3冠レースの中では一番厳しい戦いだったのではないでしょうか。戻って来た時の福永騎手の疲れ切ったような表情が、それをよく表していたと思います。それでも勝ちきったのはコントレイルの底力でしょう。関係者の皆さんもさぞかしほっとしていると思います。おめでとうございます。

菊花賞を予想するにあたって、コントレイルの中心は揺るがないものの、万一負けるとしたら、展開か距離だと思いました。

展開としては、逃げ先行馬が思わぬ粘りを見せ、コントレイルが脚を余してしまうケース。今年のメンバーではバビットがその候補になります。
バビットはラジオNIKKEI賞を5馬身差で逃げ切ると、セントライト記念も逃げてサトノフラッグ、ガロアクリークという春の実績馬を寄せ付けずに連勝。マイペースで逃げたときのしぶとさが印象に残りました。
その父はオルフェーブルやゴールドシップと同じステイゴールド産駒のナカヤマフェスタ。母系はスピード系とはいえ、距離は持つ可能性があります。
しかしコントレイルと同じノースヒルズ生産のキメラヴェリテが逃げ宣言をしたことで一人旅の可能性が低くなり、こちらはあまり心配する必要がないように思えました。

距離とは、思わぬ長距離適性のある馬にやられるケース。
コントレイルは母系がスピード色が強く、矢作師も本質はマイラーと言っていたように、決して距離が伸びてよいタイプではなさそうです。それでもダービーは能力の違いで楽勝したものの、3000mという未知の距離では足元をすくわれる可能性もゼロではありません。

その場合血統的にはヴェルトライゼンデ、ヴァルコスやアリストテレスあたりが候補に上がります。
ヴェルトライゼンデは去年の菊花賞馬ワールドプレミアムの半弟。父がディープインパクトからステイゴールド産駒のドリームジャーニーに変わったことで、より長距離への適性が高くなったとも思われます。また成績的にもダービー3着、神戸新聞杯2着と安定しており、打倒コントレイルの1番手として2番人気に支持されます。
ヴァルコスはヨーロッパの中長距離で活躍したノヴェリスト産駒で、母はディープインパクトの半妹でその父は多くの長距離馬を生み出したダンスインザダーク。
アリストテレスは父が菊花賞馬エピファネイアで、母父も菊花賞を含む3冠馬ディープインパクト。母母はフサイチコンコルドの半妹で中長距離で活躍したグレースアドマイヤと、こちらも長距離適性は高そうです。
そして予感は当たり、そのアリストテレスに思わぬ苦戦を強いられることになります。

パドックに出てきたコントレイルはとても落ち着いていて、青鹿毛の馬体はすばらしい毛づやで好調そう。さらにトモの踏み込みも深く、見た感じは非の打ちどころがなさそうです。唯一春からほとんど馬体重が変わらず成長がどうかという懸念はありましたが、長距離を走るためには、あまり馬体が増えない方がいいとも言えます。

そしてレースが始まると、好スタートを切ったコントレイルは無理せずポジションを下げて中団内につけます。最初は折り合いに問題なかったのですが、最初の1コーナーを回って直線に入ると、福永騎手が懸命に抑えて馬の後ろで折り合わせようとしているように見えます。
父のディープインパクトが、菊花賞の1週目の1コーナーを回ってゴールが近いと勘違いして行きたがったのは有名な話ですが、コントレイルも同じように思ってしまったのでしょうか。
そのコントレイルの外にぴったりつけていたのがルメール騎手騎乗のアリストテレス。当然ルメール騎手はそのコントレイルの様子を冷静に見ていたのでしょう。まるで影のように半馬身ほど後ろの外をついて行きます。

福永騎手がレース後のインタビューで、プレッシャーを掛けられて馬がエキサイトしたというようなことを言っていましたが、それはおそらくアリストテレスのことだと思います。コントレイルの唯一の不安である距離を考えると、道中で掛かってしまうと末脚を失いかねません。
コントレイルに勝つための数少ない方法の一つとして、ルメール騎手がコントレイルに折り合いを失わせるような乗り方をしたのだとすれば、すばらしい戦法であり、またそこまで勝負に徹するという意味では、ある意味恐ろしいなあと思います。

スローで流れたこともあり、向こう正面でもコントレイルは福永騎手が抑え気味に走っています。そして4コーナーでは、先頭に立ったバビットに3馬身差までつめ、この時点で逃げ切られる心配はなくなったと感じました。
コントレイルは直線に入って中央に持ち出すと、いったん離したアリストテレスがまた外からぴったりと馬体を合わせてきます。そのまま合わせ馬のようになり、残り300mで内の馬を交わして先頭。
ここからいつものように引き離して独走状態に入るかと思ったのですが、アリストテレスもしぶとく、残り200mで2頭はほぼ並びます。そこからコントレイルが再び半馬身ほど前に出るも、アリストテレスも懸命に食い下がります。そのまま100m以上びっしりと叩き合いが続き、結局コントレイルがアリストテレスをクビ差抑えて1着でゴールに飛び込みました。

ゴール後も、福永騎手は先週の松山騎手のようなガッツポーズをするわけでもなく、ただ淡々と馬を止めます。叩き合いをしたルメール騎手からぽんと背中をたたかれても、反応する余裕もない様子。まさに精根尽き果たしたのでしょう。
それだけの偉業であり、そのプレッシャーたるや、我々の想像をはるかに超えるものだったと思います。

これだけ厳しい戦いを勝ち抜いて獲得した無敗の3冠馬の称号ですが、同時に今まで見せたことがなかったコントレイル自身の弱点も、垣間見せたように思います。
1つはやはり距離でしょう。父のディープインパクトは菊花賞は2馬身差で勝ち、天皇賞(春)も3 1/2馬身差で圧勝しているように、距離不安はありませんでした。しかし今日のレースぶりを見ると、コントレイルは父ほど距離に融通が利かないかもしれません。
次に折り合いでしょうか。これは距離と表裏一体ではありますが、道中かなり折り合いを欠く場面があったように思います。今後歴戦の古馬相手に中長距離で戦っていくためには、克服しなければならない課題だと思います。

とはいえ今日勝ったのは底力と精神力の賜物ともいえ、シンボリルドルフ、父ディープインパクトに続く無敗の3冠を達成したのは、その2頭と同様にそれらが並大抵のレベルではないことの証明だと思います。
今後もコントレイルには無敗の3冠馬の名に恥じないレースを見せてほしいと思います。

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