無敗の3冠牝馬誕生 ~秋華賞

今年の秋のG1は、いくつかの偉業達成なるかということが大きな関心事ではありますが、その第1弾ともいえる史上初の無敗の牝馬3冠を、デアリングタクトが達成しました。松山騎手や杉山晴師をはじめとする関係者は、さぞかしほっとしていることでしょう。おめでとうございます。

JRAでは3冠を達成した牝馬は、デアリングタクトの前に5頭います。3冠を達成するだけあって5頭ともあまり負けていないのですが、さすがに無敗では初めて。
そもそも無敗の2冠ですら、3冠レースが整備される前の1957年ミスオンワード以来2頭目だったのですから、そのすごさは大きく賞賛されるべきでしょう。

デアリングタクトの春の2冠は、桜花賞が重馬場を届かないような後方から差し切るという派手な勝ち方から始まり、オークスは内で包まれて前が開かず、内に外にと何度も進路を切り替えながら、最後は驚異の末脚でギリギリ差し切るという、傍から見ると冷や汗ものの勝ちでした。
しかしそれらから導き出されるのは、同世代牝馬では力が違うということだったと思います。アーモンドアイが2冠を勝った時にも感じたのですが、無事に行けば3冠の可能性は高いと思われました。

そして秋のトライアルでは、紫苑Sがチューリップ賞を勝ちながら桜花賞、オークスと大敗したマルターズディオサ、ローズSは阪神JF1番人気と期待されながら結局無冠に終わったリアアメリアが勝ちます。
これで、春の勢力図が維持されて、いわゆる夏の上り馬は不在という構図が固まり、ますますデアリングタクトの3冠の可能性は上がったように感じられました。
当のデアリングタクトは早々にオークスからの直行を決めていましたが、新馬から2戦目のエルフィンSが3か月ぶりと久々は苦にせず、また近2年アーモンドアイ、クロノジェネシスとオークスから直行した馬が連勝していることも、そのローテーションを後押ししたと思います。

そして今日、いよいよパドックに姿を現したのですが、そこで少し不安を感じることになります。もともとテンションが高めではあるのですが、最初は少し小脚を使うぐらいだったのが、周回を重ねるうちにちゃかちゃかと引手を引っ張るようになり、かなり汗もかいています。
前走のパドックとの比較映像も流れたのですが、オークスよりも明らかにちゃかつきがひどく見えます。久々が影響して入れ込んでしまうと、発走前に体力を消耗する危険もあり、大丈夫だろうかと心配になりました。
しかし返し馬では落ち着いて走っており、掛かるようなことはないだろうと少し安心しました。

レースではデアリングタクトは伸びあがるようにスタートを切ると、やや抑え気味に後方につけます。マルターズディオサが作るペースは1000m59.4と、やや重を考えても例年よりは落ち着いたペース。それを向こう正面では外を通って少しずつ押し上げていきます。3コーナーから4コーナーでは中団から外を回して徐々に前へ。これは前が詰まったオークスの教訓から、松山騎手が不利を受けないよう考えた結果でしょう。
そして4コーナーで2番人気リアアメリアを交わすと、直線は馬場の中央に持ち出し、残り200mでラチ沿いのマルターズディオサを交わして先頭。すぐ内から合わせてきたマジックキャッスル、外から脚を伸ばすパラスアテナ、ソフトフルートが迫りますが寄せ付けず、結局2着マジックキャッスルに1 1/4馬身差をつけて1着でゴール。心配も杞憂に終わりました。

終わってみれば完勝に見えるのですが、実はいくつかの幸運もあったと思います。
その第1はレイパパレが抽選で除外になったことでしょう。
レイパパレはディープインパクト産駒で、2014年にG2だったホープフルSを勝ったシャイニングレイの全妹。前走新潟芝1800m2勝Cの糸魚川特別を2馬身差で勝ち、3戦3勝という成績で秋華賞に登録していましたが、賞金1500万の6頭中4頭が出走できるという抽選に外れて除外。秋華賞の1つ前の大原S(芝1800m)に出走しました。
52kgの軽ハンデもあり1.9倍の1番人気に支持されていましたが、スタート今一つながら逃げると、直線では後続を寄せ付けず、古馬相手に2馬身差の圧勝。はたして秋華賞に出走していたらどうだったのかと思わせるほど、インパクトのある勝利でした。

第2は有力馬の多くが先行したこと。デアリングタクトの末脚を考えると、勝つためにはその前にいる必要があると、ライバル陣営は考えたと思います。
それもあって内枠を引いたマルターズディオサ(4番人気)、リアアメリア(2番人気)、ミヤマザクラ(6番人気)、さらに外枠のウインマリリン(5番人気)が先行。それほどペースが上がったとは思いませんが、先行争いが厳しかったのか、いずれも直線は抵抗すらできずに後退。掲示板にも乗れませんでした。
また先行馬がほとんど内枠だったのに対して、デアリングタクトはその影響を受けない外枠だったのも、幸いしたと思います。

第3は昨日の雨の影響で、馬場がやや重までしか回復しなかったこと。デアリングタクトは重馬場の桜花賞で最速の上りで勝ったように、重い馬場でも堅実な末脚を繰り出せます。
最後の直線で馬場の良い外から差してきたパラスアテナ、ソフトフルートの勢いが良く、一瞬差されるのではと思いましたが、そこからまた伸びたのはデアリングタクトの重適性ゆえだったのではと思います。

無敗の3冠牝馬となったことで、次の戦いの場は古馬相手のG1となるでしょう。それがJCなのか有馬記念か、あるいは来年になるのかわかりませんが、先輩3冠牝馬のジェンティルドンナ、アーモンドアイがともに3歳でJCを制しているように、出ればかなり有力であることは間違いありません。
もし来週の菊花賞でコントレイルが無敗の3冠馬になり、さらにアーモンドアイが天皇賞(秋)でG1 8勝目を飾り、この3頭がJCで激突したらと考えると、かなり盛り上がるでしょう。
そんな夢のようなレースを、ぜひ見てみたいものです。

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