乗り替わりの利点とは ~エリザベス女王杯

名馬の場合、ミスターシービーと吉永騎手、シンボリルドルフと岡部騎手、ディープインパクトと武豊騎手など、生涯1人の騎手しか乗らないことがあります。 おそらく長くコンビを組んできた方が、癖がわかったり意思の疎通が図りやすいということがあるでしょうし、強い馬は騎手も離したくないでしょう。
逆に乗り替わりというと、騎手がミスをして勝てるレースを落として次のレースは降ろされたとか、大きなレースでは経験のあるベテラン騎手がいいと替えられたとか、同じレースでお手馬が重なった場合に力のない方は騎手から選ばれないとか、 一般的にマイナスのイメージで語られることが多いと思います。
特にG1レースの場合、乗り替わりは不利とも言われ、今年のダービーでも乗り替わりのサートゥルナーリアが、まったくのテン乗りとしては65年ぶりに勝てるのかということが、大きな話題となりました。結局勝てず、乗り替わりは勝てないというジンクスは継続となりましたが。

なぜこんなことを考えたかというと、今日のエリザベス女王杯の連対馬2頭が、いずれも乗り替わりだったからです。
ラッキーライラックはデビュー以来、秋華賞の1回を除いて石橋騎手とコンビを組んできましたが、今回短期免許で来日しているスミヨン騎手に替わりました。その理由はわかりませんが、おそらくチューリップ賞以来勝ちきれないレースが続いているので、騎手を変えて新たな面を引き出せないかと考えたのではないでしょうか。

乗り替わりは必ずしもマイナスな面だけでなく、プラスな面もあると思います。その顕著な例は、2002年JCダートのイーグルカフェでしょう。
イーグルカフェはNHKマイルCを勝ったものの、その後はずっと勝てず、5歳(当時の表記は6歳)になってG3七夕賞を勝っただけ。芝でもダートでも時々好走はするものの、G1 2勝目はとても無理だろうという感じでした。しかしJCのために来日したL.デットーリ騎手が騎乗したイーグルカフェは、それまでのイメージを覆すような、しっかりした末脚でインから差し切って勝ったのです。まさに馬が変わった印象で、マジックという感じでした。
また2005年の有馬記念のハーツクライも、ルメール騎手が乗り替わって3戦目でしたが、それまでの追い込み一辺倒から意表を突く先行策に出て、圧倒的な人気だったディープインパクトを抑えて優勝しました。

このように、一流騎手が乗ることによって、新たな視点から、その馬の隠れていたポテンシャルを引き出すことができると思うのです。スミヨン騎手も世界的な名手であり、2014年のJCでのエピファネイアの騎乗(当然乗り替わりでのテン乗り)でも、こんなに強い馬だったのかと驚かされましたが、今日も同じような感想を抱かされました。

ラッキーライラックといえば、先行して抜け出すイメージが強く、チューリップ賞はそれで勝ちましたし、桜花賞でもアーモンドアイには差されましたが、しっかり2着をキープしました。
しかしその後は、先行あるいは好位から伸びきれないレースが続き、前走府中牝Sでもいったん先頭に立ったものの、後続に差されて3着に敗れていました。

そのラッキーライラックを、スミヨン騎手は中団からレースをさせます。そして4コーナー手前から追い出すと、前が開いた内を突いて一気に進出。ただ1頭32秒台の上り(32.8)を使って、絶妙の逃げを打ったクロコスミアを内から交わし、阪神JF以来となるG1 2勝目を飾ったのです。
最近のラッキーライラックは切れる脚を使うイメージがなかったのですが、スミヨン騎手が新たな面を引き出したと言えるでしょう。

そして実は2着のクロコスミアも乗り替わりでした。本来は春からコンビを組んでいる戸崎騎手が乗るはずだったのですが、先週のJBCレディスCで落馬負傷し、藤岡佑騎手に乗り替わりとなりました。
クロコスミアはこれで3年連続エリザベス女王杯2着という、なんとも悔しい記録を作ったのですが、ある意味とても偉大な記録とも言えます。しかもこの3戦がすべて異なる騎手というのも、すごいと思います。
こちらは新たな視点というよりも、毎年愚直に逃げる(2年前は2番手からですが)作戦が功を奏しています。しかもクロコスミアはこの2年間、G1以外では馬券圏内に入れておらず、G1の雰囲気やペースが合っているのかもしれませんが、なんとも不思議な馬だと思います。

毎年エリザベス女王杯は悩まされるのですが、乗り替わりは不利になるどころか、逆に有利かもしれないという要素を、予想に際しては考慮する必要があるかもしれません。

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