馬の適距離とは ~安田記念

今年の安田記念の焦点は、「スワーヴリチャードがマイルで勝てるのか」ということだったと思います。

スワーヴリチャードは4月の大阪杯を早め先頭から押し切り、悲願のG1制覇を達成しました。その後は宝塚記念を目指すと思われていたのですが、安田記念に出走してきました。
その理由として庄野調教師は、「スワーヴリチャードの持っている能力や可能性など、いろいろなものを開花させてあげたい」と言っています。

3歳はクラシック、特にダービーを目指して中距離を使い、その中でダービー2着という実績から、引き続き中距離を使ってきたものの、種牡馬としての価値を考えた時に、マイルのスピードにも対応できることをアピールしたいということもあったのでしょう。また得意の東京で行われる古馬G1が春は安田記念しかないことや、宝塚記念が時期的に馬場が悪くなる可能性が高く、末脚で勝負するスワーヴリチャードにとってどうかということもあったのではないかと思います。
しかしマイルの流れに対応できるかは、やってみないとわからないと調教師自身も言っており、予想する方としても、そのあたりが一番気になるところでした。

予想記事では、今年の大阪杯と安田記念の平均的なラップを比べて、スワーヴリチャードは前半は置かれたとしても、後半4ハロンのラップタイムを見れば十分に対応可能という内容もありました。しかし一方で、最近の安田記念は良馬場なら1分32秒を切る勝ちタイムになることが多く、スワーヴリチャードの1800mや2000mの持ちタイムから逆算すると、対応は難しいという論調もありました。

また過去10年の成績を見てみると、3着以内に入った馬は前走はマイル前後の距離を使っていることが圧倒的に多く、前走2000mのレースだったのは、2009年2着のディープスカイと2013年2着、2014年3着のショウナンマイティの2頭(3回)のみでした。いずれも勝つことはできなかったのです。

予想に置いて、馬の適距離というのは、どうしても考えざるを得ません。これは短距離でも長距離でも、あるいはマイルや中距離でもおなじだと思います。その時に気になるのが、はたしてどれぐらい距離に対する柔軟性というか適応力を馬は持っているのかということです。

個人的には、適距離というのはあくまで人間が主観的に決めたものであり、馬にとってはあまり関係ないのではと思うのです。
レース体系が整っておらず、馬の距離適性という考えもなかった昔は、それこそスプリンターズSと3200mの天皇賞を両方走って勝つ馬もいたようですが、さすがに最近はそこまで極端な例はありません。
しかし例えばカミノクレッセは、1992年に天皇賞(春)から安田記念、宝塚記念というローテーションをとり、その3レースでいずれも2着に好走しました。また翌年イクノディクタスは牝馬にもかかわらず同じローテーションをとり、天皇賞(春)こそ9着に負けましたが、安田記念と宝塚記念はともに2着となっています。そしてナリタブライアンは1996年に天皇賞(春)で2着となったあと、芝1200mの高松宮杯(今の高松宮記念で当時は5月に実施)に出走し、4着に入りました。

いずれも90年代と少し前のことですが、能力の高い馬にとって、距離の違いはあまり気にする必要はないのではないかと思うのです。調教師や馬主は、実績のある距離のレースを使い続けたいと、どうしても思うのでしょうが、勇気をもって違う路線を歩んでみると、意外と良い結果が得られることもあると思いますし、新たな可能性に挑戦するということは、その馬の価値を高めることにもなるでしょう。もちろん勇気がいることではありますが。

今日のレースで、2.8倍の1番人気に支持されたスワーヴリチャードは、マイルのペースにとまどうこともなく、しっかりと好位の内につけます。
直線はうまく馬場中央に持ち出すと、先に抜け出したアエロリットにじりじりと迫ります。一瞬差し切るかとも思いましたが、最後は後ろからモズアスコットに交わされ、アエロリットにも届かずに3着に終わりました。

モズアスコットに差され、アエロリットを差せなかったことを、距離適性の違いと表現することは簡単ですが、少なくとも勝ち馬と1馬身差の勝負をしている以上は、距離適性という表現は正しくないと思います。どちらかというと瞬発力と脚の使いどころの違いという感じでしょうか。慣れないペースの中、よく対応したというのが、個人的な感想です。
少なくとも、庄野調教師の言う可能性を見せることはできたのではないでしょうか。

今後スワーヴリチャードがどこを目指すのかはわかりませんが、チャレンジし続けることを期待したいと思います。

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