戦法を変える勇気 ~日本ダービー

今年の日本ダービーは、3番人気のワンアンドオンリーが早めに抜け出して、食い下がる1番人気イスラボニータを3/4馬身差で抑えて優勝しました。
騎乗した横山典騎手は2009年に続く2勝目で、管理する橋口調教師は出走20頭目でついに悲願のダービー制覇となりました。特に橋口師は過去4回の2着があり、まさに悲願という言葉がぴったりだと思います。
その中には、勝ったと思ったダンスインザダークがフサイチコンコルドにゴール直前で差された1996年や、横山典騎手が騎乗したワンアンドオンリーの父ハーツクライが、後方から追い込んだもののキングカメハメハに届かなかった2004年の各ダービーもありました。定年まで今年を含めてあと2回しかチャンスがない中で、その喜びたるや、どれだけのものだったでしょう。

そのワンアンドオンリーですが、戦績を見ると必ずしも順調にダービーに至ったわけではありません。
OP2着から初めて重賞に挑戦した東スポ杯では、中団から伸びずにイスラボニータに2 1/2馬身差の6着。7番人気のラジオNIKKEI杯を中団から差して制し、一躍クラシック有力候補の1頭になったものの、弥生賞はハナ差届かず2着。
皐月賞は後方から目の覚めるような追い込みを見せたものの1 3/4馬身差の4着まで。
直線が長い東京ではその末脚が生きると思われましたが、逃げると思われたウインフルブルームの取り消しによりスロー必至となり、そのためか3番人気という微妙な評価になりました。

個人的にも、横山典騎手がどう乗るのか、とても興味がありました。横山典騎手といえば、よく最後方から決め打ちするような乗り方をするイメージがあり、特に枠順が内の2番に決まって、外に出すためには最後方に下げることも考えられました。
今開催の東京は、NHKマイルCとヴィクトリアマイルがともに逃げ切りで決まったように、先行有利の印象があります。開催が進んで差しも決まるようになってきましたが、先週のオークスであのハープスターも追い込み届かなかったように、ワンアンドオンリーも脚を余す危険があると思われました。

しかしレースでは、予想に反して横山典騎手はワンアンドオンリーをイスラボニータの直後の5番手につけて進めます。これまでもワンアンドオンリーは追い込み一手ではありませんでしたが、ほぼすべてのレースで真ん中よりも後ろから進めてきました。
そういう意味では、大一番で脚質を変えるという賭けに出たわけです。

脚質について理論的には、遅い流れなら前につけて行き、早い流れなら後ろから行くのが得ですが、馬の特質や慣れもあり、もちろんそう簡単に変えることはできません。特に追い込み脚質の場合、無理に前に行くと馬の気分を損ねたり、前半に脚を使って末を失ったりと、良さを出せない危険もあります。
そのため、スローとわかっていても、あえて後ろから行く場面を見る方が多い印象があります。その方が、失敗したときの言い訳もしやすいでしょう。逆に脚質を変えて失敗したら、その批判は騎手が一手に受けることになり、どうしても躊躇してしまうのは、ある意味仕方ないでしょう。

脚質転換といって個人的にまず思い浮かぶのは、ワンアンドオンリーの父ハーツクライが勝った2005年の有馬記念です。
それまで追い込みで戦ってきたハーツクライの主戦がルメール騎手になったのは、2005年の天皇賞(秋)でした。そのレースは休み明けもあり中団から6着。続くJCは後方から追い込んだものの届かず2着。そして臨んだ有馬記念は、無敗で3冠を制したディープインパクトが圧倒的な1番人気に支持されていました。
そのレースで好スタートをきったハーツクライに、ルメール騎手は新馬戦以来の先行という戦法をとらせます。その意外性にも驚かされたのですが、真の驚きはそのままディープインパクトに初の黒星をつけることでもたらされました。
あの時はルメール騎手の機転をたたえる声が多かったのを覚えていますが、もしあれで負けていたら批判はルメール騎手に集まっていたでしょうから、その勇気こそたたえられるべきだったでしょう。

今回の横山典騎手の戦法も大いにたたえられるべきと思いますが、個人的には長くよい脚を使うというワンアンドオンリーの新たな面を見せたということに驚きを感じました。もしかしてわかってやっていたのでしょうか。
しかし冷静に振り返ってみると、ちょっと前によく似たシーンを見たことを思い出しました。そう、先週のオークスでのヌーヴォレコルトとそっくりなレースぶりだったのです。この2頭の共通点と言えば、父ハーツクライ。もしそれを見越してやっていたとしたら、本当にすごいことですね。

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